昨日、つまり、2014年(平成26年)10月18日の話。
このところ、遠出はおろか、近場の山すら登れない日々を過ごしていましたが、昨日はわずかに時間が空いたため、どこかの山へ向かうことに。
先日、コメントを下さった方が、「ツイン21ビルや京橋辺りのビル(の名称を写真に表示して欲しい)」とおっしゃっていたことを思い出し、京都府下から京橋方面を望む適地でもある山崎の天王山へ。
十方山や小倉山ではなく、天王山のみを目的として大山崎町を訪れるのは久々。
おそらく、10年は経っていないと思いますが……、観音寺さん(山崎聖天さん)の花祭りに合わせて登って以来でしょうか。
あの日は山崎聖天さんから登りましたが、昨日は宝積寺さん(大黒天宝寺さん)から登ることにしました。
目次
宝積寺の三重塔
宝積寺さん(大黒天宝寺さん)の三重塔。今年は京都の紅葉も早まりそうです。
山腹の宝積寺さんで撮影した写真も1枚だけ。
宝積寺さんは、山崎の合戦に際し、羽柴秀吉(豊臣秀吉)が本陣を置いたお寺さんとしても知られています。
奈良時代の伝説的な高僧、行基により創建されたと伝わりますが、今夏も参拝した、島本町は若山神社さんの境内……、山中でお祀りされている小烏神社さんも、元は行基により創建されたと聞きました。
行基伝説は各地で見られますが、このあたりとも縁があるお坊さんだったのですね。
天王山の夕景と展望 大山崎町
天王山は丹波高地の南東端に所在し、広義の北摂山系でも、いわゆる京都西山(老ノ坂山地)に属します。
大山崎町の公式サイトでは、「天王山山頂 山崎城跡」の記事 で、「天王山は丹波山地の南東端」としています。
天王山が広大な丹波高地の南東端にあたることは、地勢的に重要なポイントと言えるでしょう。
記事には「大阪平野から京都盆地に入る関門を成す」とも見えます。
平安時代末期に編纂された『掌中歴』で、平安京の四方の境(四堺)を「相坂関門。大枝龍花。」としており、この「関門」は山崎を指すと考えられています。
相坂は東の逢坂山(逢坂越)、大枝は西の大枝山(老ノ坂)、龍花は北の龍華越(途中峠)ですね。
天王山は昔は「山崎山」とも呼ばれており、古い絵図では「山崎山」に類する表記が目立ちます。
青木葉谷展望広場から「あべのハルカス」を遠望
天王山「青木葉谷展望広場」から「あべのハルカス」、大阪城、OBPビル群を遠望する。大山崎町。
主な山、建築物 | 距離 | 標高 (地上高) | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
あべのハルカス | 31.8km | (300m) | 大阪府大阪市阿倍野区 | |
大阪城 | 27.3km | (55m) | 大阪府大阪市中央区 | |
雲山峰 | 77.7km | 489.9m | 和歌山県和歌山市 | 紀泉アルプス最高峰 |
晴れてはいるものの、霞んで遠くは見えにくい日でしたが、超高層ビル「あべのハルカス」や、目当てとしていた京橋のビル群は見えていました。
上の写真では分かりにくいですが、クリスタルタワーと「TWIN21 OBPパナソニックタワー」との「隙間」に大阪城の天守閣(復興天守)を遠望できます。
逆に、大阪城に入館し、OBP方面を眺めれば、クリスタルタワーとOBPパナソニックタワーとの「隙間」に天王山や、空気が澄んでいれば、さらにその後方に比良山地の蓬莱山まで見通すことができます。
これは余談ですが、私にとっては馴染みがある大文字山や比叡山(四明岳)からは、(現在は)大阪城を望むことができません。
大文字山の火床、大文字山の山頂(三角点)、四明岳のビューポイント、どこから眺めてもOBPパナソニックタワーに遮られてしまいます。
京都東山側からであれば、瓜生山の展望地から大阪城を見通せます。
こちらも分かりにくいですが、OBPキャッスルタワーの手前(北北東)には、OBPキャッスルタワーと重なるように大阪東京海上日動ビルディングが写っており、その間に、建築中の「KDDI大阪第2ビル」の上部、クレーンが写っています。
クレーンの位置から見て、すでに結構な高さまで鉄骨が上げられているようですが、恐ろしく急ピッチで作業が進められていますね。
参考程度に山名を示しておきましたが、雲山峰は肉眼ではほぼ見えていません。
地元の方であれば、紀泉アルプス(紀泉高原)や和泉山脈の連なりをくっきり望む機会もあるでしょう。
旗立松展望台から大山崎ジャンクション周辺を望む
天王山「旗立松展望台」から醍醐山地、大山崎ジャンクション周辺を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
音羽山 | 17.9km | 593.1m | 京都府京都市山科区 滋賀県大津市 |
西千頭岳 (千頭岳三角点峰) | 17.6km | 601.8m | 京都府京都市伏見区 |
本宮ノ峰 (奥醍醐山) | 15.7km | 476.0m | 京都府京都市伏見区 |
喜撰山 | 15.3km | 415.9m | 京都府宇治市 |
太神山 | 27.8km | 599.6m | 滋賀県大津市 |
眼下に大山崎ジャンクション、喜撰山との間に久御山ジャンクションが写っています。
京滋バイパスの陰となるため、桂川に架かる天王山大橋は見えないようです。
一般的に、天王山は天下分け目の山として知られていますが、それだけではなく、山城国と摂津国を分ける山でもあり、その山域や、「山崎」の地名は、京都府乙訓郡大山崎町(山城国乙訓郡)のみならず、大阪府三島郡島本町(摂津国島上郡)にも跨っています。
旗立松展望台からは、淀川の三川合流付近、八幡市の向こうに、河内国側にあたる枚方市の国見山や交野市の交野山方面も開けており、国会議事堂のように見える大阪工業大学さんの枚方キャンパスも遠望できますが、奈良方面の見え方が今ひとつだったため、昨日は写真を撮影していません。
旗立松展望台から伏見桃山城を遠望
天王山「旗立松展望台」から伏見桃山城、大岩山、音羽山を望む。
撮影地点から伏見桃山城(模擬天守)(京都市伏見区)まで9.9km。
旗立松展望台の標高はせいぜい190m程度にすぎず、たとえ、どれほど好条件の日であったとしても、音羽山を越えた山の向こうは見えません。
しかしながら、この構図の左手にあたる逢坂山と音羽山の合い間に、鈴鹿山脈最北端部の霊仙山をピンポイントで見通せる可能性があります。
これは八幡の男山展望台から伊吹山が見える のと同様です。
興味がある方は冬場の好条件の日に……。
青木葉谷展望広場から三川合流後の淀川を望む
天王山「青木葉谷展望広場」から和泉山脈、大阪平野、大阪のビル街、三川合流後の淀川を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
岩湧山 | 59.3km | 897.1m | 大阪府河内長野市 |
三国山 (一乗ヶ岳) | 62.0km | 885m | 大阪府和泉市 和歌山県伊都郡かつらぎ町 (大阪府河内長野市) |
葛城山 (和泉葛城山) | 65.0km | 858m | 和歌山県紀の川市 大阪府岸和田市 大阪府貝塚市 |
和泉山脈の連なりは見えていたものの、やはり、霞んだ印象がぬぐえない夕景となりました。
上の写真を撮影した展望地は、一般的には「青木葉谷展望台」と紹介されているようですが、現地での表記は「青木葉谷展望広場」となっているため、本記事でもそれにしたがっておきます。
広場には、あべのハルカス、大阪城を撮影したお写真が掲示されていました。
とくによく目立つハルカスさんはともかくとして、双眼鏡などを利用して大阪城を見付ける際には大きな手助けとなるでしょう。
春に撮影されたらしく、より遠くの山々までは写っていませんが、何を撮影したいかが伝わる良いお写真でした。
どちらにでも展望愛好家さんはいらっしゃるのでしょう。
青木葉谷展望広場からハルカス、大阪城、新幹線を望む
天王山「青木葉谷展望広場」からハルカス、大阪城、飛行機、東海道新幹線を望む。
示し忘れていますが、右端に「The Kitahama」(北浜タワー)までを収めています。
高槻の三菱自動車さんとの位置関係から見て、右下に写っているのは東海道新幹線で合っていると思いますが、気になる方はご自身で調べてみてください。
私は鉄道についてもろくな知識は持ち合わせていないため、車両を見ても今ひとつよく分かりません。
この日は見えなかった、写真にも写らなかったものの、新幹線の遥か遠方に「りんくうゲートタワービル」(→SiSりんくうタワー)が見える可能性があります。
あべのハルカス、大阪城、新幹線などを1枚の写真に収めることができる点でも、天王山からの眺めは素晴らしいものがあります。
よい息抜きとなりました。
つい先日、ポンポン山や釈迦岳を登った話は上の記事で。
追記
「禁門の変」から150年目の天王山
そうとは気付かずに天王山を訪れましたが、今年(2014年)は元治元年(1864年)7月に起きた「禁門の変」(蛤御門の変)から150年目、つまり、天王山に眠る真木和泉(保臣)らの没後150年目にあたる年でした。
節目にあたる年の、節目にあたる招魂祭(10月21日)の直前に、導かれるように「十七烈士之墓」にお参りしたことも何かの縁かもしれません。
もちろん、人並み程度には幕末から明治維新にかけての歴史も学んでいますが、それでも、私がこの年この日に天王山を訪れたのは偶然なのです。
天王山でもクマが目撃される
2016年(平成28年)10月4日、追記。
2016年10月3日に天王山の山麓、JR山崎駅付近でクマ3頭が目撃されたとの報道がありました。
年々、京都西山(や北摂山系)ではツキノワグマの行動範囲が南下しており、京都の東西でともに同じような動きをしているのが興味深いです。
小塩山の山中でクマが撮影される
上記の件で、2020年(令和2年)8月、追記。
小塩山に自然保護団体さんが設置していたカメラがツキノワグマの姿をとらえたとの報道がありました。
京都市の山にクマ!偶然、動画で撮影 仕掛けに驚き獣道疾走|京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/323731(リンク切れ)
以前よりポンポン山の周辺や高槻市の山麓域でツキノワグマの目撃例がありましたが、これほど明確に姿をとらえた映像は初めて見ました。
これにより、生息している事実は疑いようがなくなりましたので、今後、西山でハイキングなさる方々は最低限の心構えのようなものが求められるでしょう。
2023年晩秋以降、西山の山麓域や山間域でツキノワグマが頻繁に目撃されるようになりました。
ご用心ください。
サントリー山 京都の酉年の山の候補地
以前より、京都府の山の市町村別最高峰の記事 でも取り上げているように、大山崎町の高峰として、天王山の奥に所在する小倉山(標高点305m)や十方山(三角点304.3m)があります。
現地を訪れた他の方々から教えていただいて知りましたが、おそらく2020年頃から、その小倉山や十方山と天王山の間に所在する小ピークの付近を「サントリー山」(3トリ山)(現地表記では標高295m)と称するようになり、周辺の整備も進んでいるとのこと。
これはもちろん山麓にサントリーさんの山崎蒸溜所や関連施設が所在することに由来するのでしょう。
山崎蒸溜所~椎尾神社さん~サントリー山のハイキングコースを「サントリーロード」と呼んでいるようですが、命名の詳しい経緯をご存じの方いらっしゃったらご教示ください。
山崎蒸溜所や椎尾神社さんは(大阪府)島本町側ですが、現状、サントリー山の山頂扱いされている地点は(京都府)大山崎町側です。
きょうと西山 | 21の森のこと | サントリー天然水の森 | サントリー
https://www.suntory.co.jp/eco/forest/activity/kyotonishiyama/
長岡京市西山(サントリーホールディングス株式会社) – 公益社団法人 京都モデルフォレスト協会:公益社団法人 京都モデルフォレスト協会
https://www.kyoto-modelforest.jp/works/works-266/works-330/
天王山(サントリーホールディングス株式会社) – 公益社団法人 京都モデルフォレスト協会:公益社団法人 京都モデルフォレスト協会
https://www.kyoto-modelforest.jp/works/works-266/works-335/
このあたりの取り組みとの関係でしょうか。
それとも、こういった取り組みにあやかって、ハイカーが勝手に呼んでるだけ?
少なくとも、サントリーさんの「きょうと西山」事業は長岡京市側ですので、サントリー山は範囲から外れてるようにも思えますね。
「サントリー」の社名は、前身である寿屋の人気商品であった赤玉ポートワインの「赤玉」が意味する「サン(太陽)」+創業者である鳥井信治郎の「トリー(鳥井)」に由来するとされます。
企業名や人名に由来する山名ではあるものの、このまま定着するようであれば、サントリー山は京都(や大阪)における「酉年の山」(鳥の山)の候補地となるでしょう。
ハイカーによる無断の命名であれば、(とくに企業名の採用は)問題視される可能性もありますので、今後の経緯を見ながら判断したいと考えています。
大阪財界人の鳥井信治郎は豊臣秀吉の熱心な崇拝者でもあり、秀吉さんが葬られた阿弥陀ヶ峰豊国廟や、天王山など、豊公ゆかりの地を重視していました。
豊国廟と鳥井信治郎の話は上の記事に。
実は、島本町には他にも「酉年の山」があった、という話は上の記事に。
天王山(地理院 標準地図)
「天王山(テンノウザン)(てんのうざん)」
標高270m
京都府乙訓郡大山崎町(山体は大阪府三島郡島本町に跨る)
「宝積寺(ホウシャクジ)(ほうしゃくじ)」(大黒天 宝寺)
京都府乙訓郡大山崎町字大山崎 付近
最近のコメント