船岡山の展望 甘南備山、生駒山、金剛山、大峰山を遠望 京都

今月の上旬、つまり、2015年(平成27年)10月の上旬は空気が澄んで遠くまで見えやすい日が続いていました。
とくに10月3日は京都側から紀伊山地の高峰が明瞭に見えており、9月の下旬、上賀茂から大峰山脈を遠望した日より好条件と言える日でした。

旅する蝶アサギマダラとベニバナボロギク 京都市北区 神宮寺山 2015年9月

京都 大田の小径から奈良の大峰山が見える? アサギマダラ

2015.09.30

10月3日は京都タワーの塔体がピンク色にライトアップされる日で、この気象条件であれば、船岡山からピンク色のタワーと、その後方に浮かび上がる大峰山脈の稜線を併せて撮影できるのではないかと考えます。
しかしながら、草木が伸びた影響で、近年、船岡山公園の山頂(三角点広場)の展望環境は今ひとつ。
木々の合間に京都タワーや伏見桃山城が見えることは分かっていますが、大峯の高峰を広く見通せるかどうかあやしく。
そこで、現状確認のため、建勲神社さんにお参りがてら、昼間のうちに訪れてみることに。
すると、展望地のベンチの前を遮っていた枝が大きく払われており、すっかり見晴らしが良くなっていました。
8月の下旬、遠くで打ち上げられた花火を撮影するために船岡山を登った夜は相変わらずでしたので、その後に伐採されたのでしょう。
爽やかな秋晴れの下、眼前の街並みから遠くの山並みにまで広がりを見せる景色を楽しみます。

船岡山から大峰山脈(大峯・大峰山)、近畿地方最高峰の八経ヶ岳を遠望 京都市
船岡山から京都の向こうに大峰山脈(大峯・大峰山)、近畿地方最高峰の八経ヶ岳を遠望する。

主な山距離標高山頂所在地備考
白屋岳79.6km1177.0m奈良県吉野郡川上村
阿弥陀ヶ森90.7km1680m奈良県吉野郡天川村
奈良県吉野郡川上村
大普賢岳92.2km1780.1m奈良県吉野郡天川村
奈良県吉野郡川上村
奈良県吉野郡上北山村
竜ヶ岳90.3km1725m奈良県吉野郡天川村
山上ヶ岳89.2km1719.4m奈良県吉野郡天川村
稲村ヶ岳90.5km1726.1m奈良県吉野郡天川村
バリゴヤノ頭91.9km1580m奈良県吉野郡天川村
弥山96.5km1895m奈良県吉野郡天川村
八経ヶ岳
(八剣山)
(仏教ヶ岳)
97.2km1915.2m奈良県吉野郡天川村
奈良県吉野郡上北山村
近畿地方最高峰
奈良県最高峰
大峰山脈最高峰
明星ヶ岳97.5km1894m奈良県吉野郡天川村
奈良県吉野郡上北山村
奈良県五條市
頂仙岳95.2km1717.7m奈良県吉野郡天川村

上賀茂「大田の小径」から遠望するより大峰山脈までの距離は短くなるものの、さらなる低所から京都タワーや伏見桃山城と同じ構図に収めることができる点が魅力的です。
上の写真に限って焦点距離200mmのレンズ(+35mmフルサイズのデジタルカメラ)で撮影していますが、これは一般的な便利ズームでカバーできる範囲でしょう。
とくに焦点距離の長い望遠レンズは持ち合せていない、という方でも十分に撮影できるでしょうから、遠景や遠望に興味が湧いた方は船岡山から撮影してみてください。
ただし、京都側から大峰山脈の稜線が浮かび上がるように見える日は限られており、いつでも明瞭に見えるというものではありません。

視点を右へ。

船岡山から大峰山脈西部、西吉野の山々、甘南備山、東寺五重塔を遠望 京都市 2015年10月
船岡山から大峰山脈西部、西吉野の山々、甘南備山、東寺さんの五重塔、京セラ本社ビルを遠望する。

主な山距離標高山頂所在地備考
標高点1287m峰94.7km1287m奈良県五條市
奈良県吉野郡天川村
天和山の東1.2km
天和山94.9km1284.8m奈良県五條市
奈良県吉野郡天川村
下辻山99.9km1306.1m奈良県五條市
奈良県吉野郡十津川村
高城山89.4km1111.2m奈良県吉野郡天川村
奈良県五條市
白石山92.0km1119.9m奈良県吉野郡天川村
白六山97.1km1189.4m奈良県五條市
唐笠山94.0km1118.2m奈良県吉野郡天川村
奈良県五條市
甘南備山
(甘南備山 雄山)
25.5km221m京都府京田辺市

京都側からだと大峰山脈の中核部より西部の山々のほうが見えにくく、色薄く曖昧に感じるのは相変わらずです。
遠目には一本の稜線のようにも感じますが、そう単純なつくりではなく、西吉野村、大塔村、天川村、さらに十津川村あたりの山々が複雑に入り組んで見えています。
とくに下辻山の周辺は船岡山から見える最遠の地だと思われますが、より厳密に調べれば別の結果が出るかもしれません。
いずれにせよ、京都盆地の標高100mそこそこの低所から、遥か遠く十津川村の山が見えているのは驚くべきことでしょう。
なお、下辻山の展望地は「京都五山送り火」の超遠望スポットでもあります(「舟形」の火床まで約103km)。

下辻山の左手前には京セラ本社ビルが見えており、やや分かりにくいですが、さらに左手前には東寺さんの五重塔の姿も。
京セラ本社ビルの右には遠くからでも目立つNTTドコモ京都ビルとNTTコミュニケーションズ京都南ビル(赤白の塔)が並んで見えています。
一般的に、京都市には地上高100mを超える高層建築物が京都タワーと日本電産本社ビルしか存在しないと思われていますが、京セラ本社ビルの地上高が95mであることを踏まえると、ビル上部の電波塔込みであれば、NTTドコモ京都ビルとNTTコミュニケーションズ京都南ビルも地上高100mを超えていると推測できます。
もちろん、ビルそのものの軒高は100m未満です。

余談ながら、室町時代に建立された相国寺さんの七重大塔は36丈(約109m)の高さを誇ったとされますが、この塔は落雷による火災で消失しています。
もし現存していれば、七重塔は東寺さんの五重塔を上回る日本一高い木造の層塔(仏塔)であり、近く遠くの山の上から目立って見える京都のランドマークとして親しまれていたでしょう。
同じ時代、足利義満は鹿苑寺さんにも金閣舎利殿の他に七重塔(北山大塔)を建てようとしたとも伝わりますが、史料が少なく、実際に建ったのか、計画倒れだったのかも明らかではありません。
また、平安時代に建立された白河法勝寺の九重塔(八角九重塔)は、相次ぐ戦乱で寺院ごと廃れてしまい、現在、その跡地は岡崎の市立動物園となっています。
平安時代末期に成立した『今鏡』には「白河の御寺も勝れて大きに、やおもてこゝのこしの塔など建てさせ給ひ」と見え、九重塔の様式を「やおもてここのこし」、つまり、「八面九層塔」としています。
現存していれば、平安神宮さんの近代的な大鳥居と並び、こちらも多くの山の上から目立って見えたでしょう。

船岡山から見て京田辺市の甘南備山はおおむね真南にあたります。
平安京の造営にあたり、船岡山を北の基点、甘南備山を南の基点とし、その両者を結ぶ線を都の南北の基線たる朱雀大路(千本通)とした、とする説があります。
裏付けとなる一次史料が見当たらないため、「甘南備山を南の基点とした」という話じたいは「そういう説もある」の域を出ることはありませんが、とくに遮るものがないことから、平安京が選定された時代にも船岡のあたりから甘南備山まで見えていたのは確かでしょう。
ただし、船岡山も甘南備山もなだらかな丘陵であり、とくに、甘南備山から船岡山を見ると後方に所在する京都北山に紛れてしまいます。
辻褄合わせのため、さまざまな説が唱えられましたが、いずれも結論ありきで附会した説に過ぎません。

さらに視点を右へ。

京都・船岡山から金剛山、生駒山、交野山を遠望 京都市北区 2015年10月
京都・船岡山から金剛山、生駒山、交野山を遠望する。

主な山距離標高山頂所在地備考
湧出岳69.3km1111.9m奈良県御所市
金剛山
(葛木岳)
69.0km1125m奈良県御所市金剛山地最高峰
生駒山40.4km642.0m奈良県生駒市
(大阪府東大阪市)
生駒山地最高峰
交野山28.2km341m大阪府交野市河内富士

ピントが合っていないのか、撮影時にぶれたか、太陽の光の差し方か、大気の揺らぎの影響か、何が原因が定かではありませんが、生駒山が妙にぼやけています。
生駒山の右下には国会議事堂(のように見える大阪工業大学さんの枚方キャンパス)が写っていますね。
上の写真の右手には八幡市の鳩ヶ峰(男山)、その遠方には和泉山脈の一部が見えますが、船岡山から大阪の高層ビル群は見えません。

クリスマスカラーの京都タワー、伏見桃山城を船岡山から望む 京都市北区 2014年12月

船岡山からクリスマスカラーの京都タワーを望む 2014年12月

2014.12.25

船岡山から男山、生駒山を撮影した分かりやすい写真は上の記事に……、

船岡山からティール&ホワイトの京都タワー、伏見桃山城のライトアップを遠望 2015年10月

船岡山公園の夜景と朝景 青緑&白 2色の京都タワー 2015年

2015.11.01

後日、再訪した際、和泉山脈を撮影した分かりやすい写真は上の記事に掲載していますので、展望に興味がある方は合わせてどうぞ。

見晴らしが良い船岡山の風景、展望、眺望 秋晴れの空 京都市北区 2015年10月
見晴らしが回復した船岡山の山頂(京都市北区)から南向きの眺め。
京都の風景、街並み、京都タワー、大峰山脈、甘南備山、金剛山、生駒山を見渡します。

手前との兼ね合いで明るく撮影しているため、空が白んで見えますが、実際には澄んだ青空が広がっていました。
見える街並みは京都でも北西部から南部寄りの地域です。
船岡山から南向きを広角的な視野で見ると、甘南備山よりも、その右の小高い山(河内国と山城国を分ける高ヶ峰)のほうが目立ち、さらに申し上げれば生駒山のほうがより目立ちます。
古人がどのように考えていたかまでは分かりかねますが、甘南備山が真南で目立って見える、とは感じません。

京都市南部クリーンセンターの紅白の煙突はどちらかといえば遠くからでも目立つので、京都タワーや京セラ本社ビルと合わせて場所を示しておきます。

追記。
2019年(令和元年)9月30日に新しい南部クリーンセンター(第二工場)が竣工しました。
その後、2021年(令和3年)4月1日に従来の南部クリーンセンター(第一工場)が稼働終了し、今後は第二工場が南部クリーンセンターとして扱われます。
したがって、本記事に掲載する写真で「南部クリーンセンター」とする建築物は、現在の「南部クリーンセンター」ではありません。
分かりにくいですが、悪しからずご了承ください。
追記終わり。

船岡山から京都タワー、伏見桃山城、奈良若草山方面、音羽三山、大峯・山上ヶ岳を遠望
船岡山から京都タワー、伏見桃山城、奈良若草山方面、音羽三山、その向こうに大峯・山上ヶ岳を遠望する。

主な山、建築物距離標高
(地上高)
山頂所在地備考
三角点1166.7m峰89.6km1166.7m奈良県吉野郡川上村点名「杓子谷」
伯母谷覗の北東1.8km
熊ヶ岳64.9km904m奈良県宇陀市
奈良県桜井市
音羽三山
京都タワー5.9km(131m)京都府京都市下京区

山上ヶ岳の左手前で目立つ山影は竜門山地の山々で、とくに音羽三山(熊ヶ岳、経ヶ塚山、音羽山)が重なるように見えています。
奈良の若草山から京都方面も見えるため、こちらから向こうも見えるはずですが、これがなかなか分かりにくく。
三角点1166.7m峰(点名「杓子谷」)の手前、南山城・笠置山地の山々に紛れていますが、よくよく見ると若草山のあたりが開けています。
まず分からないでしょうから、上の写真では位置を示していませんが、参考程度に。

記事の冒頭でも述べたように、この日は京都タワーのライトアップを撮影しようと考えていましたが、冬場であればともかく、10月の上旬に大峰山脈の稜線が明瞭に見える日は珍しく、少し悩んでしまいます。
大文字山から大峯を撮影しつつ、京都タワーも撮影しようかとも思いましたが、何を血迷ったのか、この後、「個人的な宿題」を年内に片付けるべく、とある場所へと向かいました。
そちらからも美しく浮かび上がる大峯の夕景を撮影できましたが、残念ながら京都タワーは見えない山の上。
何をやってるのと言われそうですが、その話は機会があれば……。

追記。

彩都なないろ公園から金剛山、葛城山、開業を間近に控えたエキスポシティを遠望

彩都なないろ公園 エキスポシティと八経ヶ岳、金剛山を遠望

2015.11.20

この日、船岡山の後に訪れた地で撮影した写真は上の記事などに掲載しています。
夕暮れ時もなかなかの好条件でした。

船岡山(地理院 標準地図)

クリック(タップ)で「船岡山」周辺の地図を表示
「船岡山(フナオカヤマ)(ふなおかやま)」
標高111.6m(111.7mから改定)(三等三角点「船岡山」)
京都府京都市北区

ABOUTこの記事をかいた人

Maro@きょうのまなざし

京都市出身、京都市在住。山で寝転がりながら本を読むか妄想に耽る日々。風景、遠望、夕日、夜景などの写真を交えつつ、大文字山など近畿周辺(関西周辺)の山からの山岳展望・山座同定の話、ハイキングや夜間登山の話、山野草や花、野鳥の話、京都の桜や桃の話、歴史や文化、地理や地図、地誌や郷土史、神社仏閣の話などを語っています。リンク自由。山行記録はごく一部だけ公開!