すでに4ヶ月以上前となりましたが、今年、2015年(平成27年)2月の話。
この日は滋賀県大津市と京都市山科区の府県境に所在する音羽山をAさんとハイキング。
大津市の鶴の里・池の内公園から関電巡視路を登り、見晴らしが良い送電鉄塔(鉄塔番号「膳所支線 一八番」)の展望地から、広く琵琶湖や近江盆地を一望しました。
展望地の話は前回の記事に。
目次
音羽山 鶴の里・池の里コース 関電巡視路の展望地
地形図ではこのあたりで 、標高では約330~335m地点に所在する展望地からは、白山(加賀白山)や伊吹山地、鈴鹿山脈も明瞭に見えており、どちらかと言えば遠くまで見えやすい好条件の日だったと言えるでしょう。
この日の気象条件であれば音羽山から白山が見えるであろうことは事前に予測できましたが、私の目当ては別にあり……。
鈴鹿山脈や近江富士、近江大橋を一望
音羽山の鶴の里・池の里コース、送電鉄塔の展望地から鈴鹿山脈、近江富士、近江大橋を一望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
鈴ヶ岳 | 53.4km | 1130m | 滋賀県東近江市 滋賀県犬上郡多賀町 | |
御池岳 (御池岳 丸山) | 54.2km | 1247m | 滋賀県東近江市 | 鈴鹿山脈最高峰 |
天狗岩 (藤原岳 天狗岩) | 56.2km | 1171m | 滋賀県東近江市 三重県いなべ市 | |
藤原岳 | 56.6km | 1140m | 滋賀県東近江市 三重県いなべ市 | 標高の値は 10mDEMによる |
日本コバ | 45.1km | 934.2m | 滋賀県東近江市 | |
竜ヶ岳 | 54.7km | 1099.3m | 三重県いなべ市 (滋賀県東近江市) | |
割山 (ミズキノ) | 50.5km | 928m | 滋賀県東近江市 | 標高の値は 10mDEMによる |
黒尾山最高点 | 47.0km | 971m | 滋賀県東近江市 | |
銚子ヶ口 | 48.0km | 1076.8m | 滋賀県東近江市 | |
大峠ノ頭 (深谷山) | 47.5km | 1087m | 滋賀県東近江市 | |
イブネ | 47.9km | 1160m | 滋賀県東近江市 | |
雨乞岳 | 47.3km | 1237.7m | 滋賀県東近江市 滋賀県甲賀市 | |
綿向山 | 43.4km | 1110m | 滋賀県甲賀市 滋賀県蒲生郡日野町 | |
鎌ヶ岳 | 50.6km | 1161m | 三重県三重郡菰野町 滋賀県甲賀市 | |
宮越山 (水沢岳) | 50.1km | 1029.3m | 三重県四日市市 滋賀県甲賀市 | |
三上山 | 17.0km | 432m | 滋賀県野洲市 | 近江富士 |
菩提寺山 (竜王山)(桜山) | 17.4km | 353.2m | 滋賀県湖南市 滋賀県野洲市 | 甲西富士 |
木々に遮られるため、音羽山の山頂からは東向きの展望が期待できません。
先だっての記事で写真を掲載した金勝アルプスや湖南アルプス同様、鈴鹿山脈も山頂まで登ってしまうと明確には見えなくなるため、送電鉄塔の展望地から撮影しておきます。
もっとも、「鈴鹿を一望」とは申し上げても、北端付近の霊仙山は見切れています。
これは次の話……、今回の本題の話へと繋げるため、故意に見切った構図で撮影したものです。
近江大橋の後方には矢橋帰帆島に架かる帰帆南橋やイオンモール草津さんなどが写っています。
琵琶湖の対岸、「近江富士」三上山との間にJR草津駅周辺が、その右にはJR南草津駅周辺が見えており、いずれもビルやマンションの姿が目立ちます。
30年前や50年前の景色とも比較してみたいものです。
後の話を読んだ後で、再度、上の写真を見てみると、竜ヶ岳と割山(ミズキノ)の「隙間」の向こうに遠くの山が見えるのではないかとお考えになるかもしれません。
この方角には伊勢湾を越えて名古屋市が所在し、さらに遠くには南アルプスの山々が連なりますが、音羽山から望むことはできません。
余談ながら、近江富士やJR草津駅方面を向けば、上の記事に掲載している写真のような、面白い構図の写真も撮影できます。
残雪の鎌ヶ岳や鎌尾根を遠望
音羽山の鶴の里・池の里コースから残雪の鎌ヶ岳、鎌尾根を遠望する。
過去に何度も撮影していますが、如意ヶ岳(大文字山)や音羽山から望む鎌尾根の姿は美しく。
鈴鹿山脈で2番目に高い山でもある雨乞岳の陰となるため、如意ヶ岳や音羽山からは御在所岳(御在所山)が見えません。
視点を御池岳から左へ。
伊吹山や霊仙山を望む
音羽山の鶴の里・池の里コースから伊吹山、霊仙山、琵琶湖を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
伊吹山 | 68.4km | 1377.3m | 滋賀県米原市 | 滋賀県最高峰 |
大禿山 | 72.3km | 1083m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県米原市 | |
国見岳 | 72.7km | 1126m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県米原市 | |
虎子山 | 72.5km | 1183.2m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 (滋賀県米原市) | |
阿弥陀岳 (阿弥陀ヶ峰) | 58.2km | 876m | 滋賀県米原市 | |
霊仙山 | 56.8km | 1094m | 滋賀県犬上郡多賀町 | |
ソノド (霧ヶ峰) | 58.7km | 925.8m | 岐阜県大垣市 | |
津田山 (奥島山) | 27.3km | 424.5m | 滋賀県近江八幡市 | 現地道標では「姨綺耶山」 |
繖山 (観音寺山) | 32.0km | 432.6m | 滋賀県東近江市 滋賀県近江八幡市 | 最高点は約440m |
今回の音羽山登山の核心とも言える構図です。
この日は伊吹山や湖北方面に対する遠望の条件、大気の状態がきわめてよく、前回、掲載した白山を撮影した写真もそうですが、間の平野部が妙にクリアかつシャープに見える写真となりました。
鈴鹿方面を撮影した写真がわずかに揺らいで見えるのとは異なります。
上の写真で伊吹山と霊仙山の「隙間」に注目してください。
この「隙間」、標高が下がった地点の遠方に、実は、北アルプス(飛騨山脈)の乗鞍岳が遠望できます。
「京滋府県境の、しかも標高350mに満たない低所から北アなんて見えるわけがない」、そう思われるのも無理はありません。
たとえば、御嶽山などが見える比叡山、あるいは恵那山などが見える愛宕山であっても、さすがに北アルプスに属する山まで望むことはできません。
なのに、比叡山や愛宕山といった、京都盆地の外縁を代表する高峰から見えない乗鞍岳が、それより標高が低い音羽山の中腹から見えるなんて……、にわかには信じがたい話でしょう。
音羽山から北アルプスが見える?
出典「基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュ」(国土地理院)
音羽山でも大津市側にあたる琵琶湖展望地(送電鉄塔「膳所支線 一八番」)から北アルプス乗鞍岳に対する見通し。
「見える」「見えない」を機械的に判定すれば、「見えます」。
音羽山から乗鞍岳が見えることじたいは昔から気付いており、いつかは撮影したいものだと機会を窺っていましたが、この日の伊吹山や霊仙山の見え方、それに白山の見え方……、ついにその機会が訪れたようです。
霊仙山や安土山を遠望
音羽山の鶴の里・池の里コースから霊仙山、安土山、繖山を望む。
霊仙山の右手前には繖山(観音寺山)、その左に重なるように安土山……、六角や織田ゆかりの山々ですね。
手前の安土や近江八幡、守山の街並みも恐ろしいまでにクリアな見え方です。
上の写真の構図の左が、伊吹山の南端部と鈴鹿山脈の北西端部の合い間となります。
伊吹南端や鈴鹿北西端方面の展望予想図と実景
音羽山(送電鉄塔 鉄塔番号「膳所支線 一八番」)から伊吹南端、鈴鹿北西端方面の展望図。
音羽山の鶴の里・池の里コース、送電鉄塔の展望地から伊吹南端部、鈴鹿北西端部を遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
川戸山 | 68.9km | 905.5m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 (滋賀県米原市) | 点名「藤川」 |
池田山 | 77.5km | 923.7m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 岐阜県揖斐郡池田町 | |
八葉山 | 54.0km | 601m | 滋賀県米原市 滋賀県彦根市 | |
向山 (武奈山) | 52.7km | 659.9m | 滋賀県米原市 | |
男鬼山 | 52.6km | 683m | 滋賀県彦根市 | |
鶴翼山 (八幡山) | 26.1km | 271.7m | 滋賀県近江八幡市 | 最高点は約280m |
池田山と八葉山の「隙間」の遥か遠方、ぼんやりとした白い山影が写っていることがお分かりでしょうか。
きわめてピンポイントですが、それが乗鞍岳です。
カシバードによる展望図と比較して、鶴翼山(八幡山)だけ指し示している地点が異なる、と思われるかもしれません。
展望図では鶴翼山(八幡山)の三角点(北の丸跡)を、写真では最高点(本丸跡)を示しているためです。
よくよく目を凝らして写真を眺めていただければお分かりいただけると思いますが、本丸跡に建つ「村雲御所」瑞龍寺門跡さんも写っています。
川戸山は伊吹山の南尾根、「播隆上人修行屋敷跡」の石碑が建つピークの南の三角点905.5m峰。
如意ヶ岳の展望地から向山(武奈山)の向こうに御嶽山(木曽御嶽)が見えることもあり、男鬼山やイワスなど、鈴鹿山脈北西端部の山域には親しみを感じています。
…上の写真だけでは乗鞍岳だと分からない?
乗鞍岳の展望予想図と実景
音羽山(送電鉄塔 鉄塔番号「膳所支線 一八番」)から北アルプス乗鞍岳方面の展望図。
これは標準的な気差の設定で計算していますが、冬の冷たい空気の日は、遠く離れた高峰が少し浮き上がって見えます。
追記。
上の図は、国土地理院が提供するベクトルデータ「基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュ」(DEM10B)を元に作成しましたが、その後、乗鞍岳周辺も「基盤地図情報(数値標高モデル)5mメッシュ」(DEM5A)の対象となりました。
DEM10Bでは大日岳周辺の最高標高は約3010mでしたが、現状、より精度が高いと考えられるDEM5Bでは約3014mとなり、DEM5Bを基準とすると、上の図より約4mほど高くなります。
DEM10Bの標高精度は5m以内、DEM5Aの標高精度0.3m以内。
音羽山の鶴の里・池の里コース、送電鉄塔(鉄塔番号「膳所支線 一八番」)の琵琶湖展望地から北アルプス乗鞍岳を遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
剣ヶ峰 | 196.8km | 3025.7m | 岐阜県高山市 (長野県松本市) | 乗鞍岳最高峰 |
大日岳 (奥の院) | 196.6km | 3014m | 岐阜県高山市 | 標高の値は 5mDEMによる |
あまり変わらない気もしますが、これなら少しは「白い山影」が分かりやすいでしょうか。
残念ながら、私のカメラとレンズ程度では、このあたりが限界です。
音羽山から乗鞍岳が見えるとは申し上げても、剣ヶ峰と大日岳の山頂部がわずかに覗くのみ。
それでも、滋賀県の南西端寄りの低所、かつ、遠望において有利とは言えない方角を向いて乗鞍岳の山影を撮影できたことに満足します。
余談ながら、近年は「低低遠望」というお遊びに凝っていて、「標高500m未満の山から、海を越えず、どれだけ遠く離れた山まで遠望できるか」といったことを調べています。
その話を聞いた友人は、それなら「低みの見物」が語呂が良いのでは、と申していました。
このお遊びにおいては「海を越えない」ということが肝要で、海を越えて良ければ距離を伸ばすのは容易です。
視点を高く上げてもよいのであれば、極論を言えば、宇宙や空中から望めばよいわけですので、低所からピンポイントに見通せる場所のほうが限定されます。
撮影地点と乗鞍岳の間、日本電気硝子さんの能登川事業場の煙突が写っています。
日本電気硝子さんの保養所(硝友クラブ)の上の山から能登川の事業所が見えるなんて、日本電気硝子の方も考えてもいらっしゃらないでしょう。
また、この能登川事業場は、大津を舞台としたテレビアニメーション『中二病でも恋がしたい!』のエンディングアニメーションの背景舞台ではないかと言われています。
実のところ、この記事を書くまで、そのこと(事業場がアニメに出てくること)を知らなかったのですが、多くの点と点が私の視線で結ばれる結果となりました。
なお、北アルプスでも乗鞍岳より北に所在する山々は伊吹山に遮られる、中央アルプス以南の山々は霊仙山に遮られるため、(山頂を含め、)音羽山から望むことはできません。
あくまでも乗鞍岳(の山頂域)のみ見えます。
この撮影地点はアプローチも容易で、とくに大津にお住まいの方であれば訪れやすいでしょう。
もし、この記事を読んで興味が湧かれた方や、私が適当なことを言ってるのではないかとお疑いになられた方は、本当に乗鞍岳が見えるかどうか、空気が澄んだ冬の日にでも双眼鏡などでご確認ください。
遠景を眺め続けてきた経験から、以下の見解を述べておきます。
- 伊吹山や霊仙山がかろうじて見えている程度の日に乗鞍岳を望むことはほぼできません
- 乗鞍岳に積雪していない季節の日中に望むことはほぼできません
雲と区別するため、「白い影は大きく動いていないか」「剣ヶ峰と大日岳、2つのピークが見えるか」に注視しましょう。
京都市から乗鞍岳が見える?
音羽山でも京都市側にあたる山頂(三角点)から北アルプス乗鞍岳に対する見通し。
計算上、音羽山の山頂(三角点)から乗鞍岳が見えます。
音羽山の山頂と見なせる地点は滋賀県大津市からわずかに外れ、全域が京都市山科区に所在します。
もし、音羽山の山頂から乗鞍岳が見えれば、「京都盆地の外縁、かつ、全域が京都市にあたる地点から乗鞍岳が見える」貴重な地点となります。
しかしながら、現状、眼前の木立に遮られるため、伊吹山はかろうじて見えるものの、霊仙山が見えず、山頂から乗鞍岳を望むことはできません。
展望のために木々を払って欲しいとは思いませんが、将来的には京都市から北アルプスを遠望する日が訪れるかもしれません。
この条件を満たすのは他に西千頭岳(千頭岳三角点峰)などがありますが、やはり伊吹山方面の展望は期待できません。
音羽山の山頂の北北東0.85km地点、東海自然歩道のコース上にも琵琶湖方面の展望地があります。
この地点から乗鞍岳が見えますが、惜しいことに、ぎりぎり大津市側にあたります(追記しておきますと、音羽山の山頂の東側も同様です)。
また、この展望地周辺のコース上は冬場になると地面が泥濘で沈みやすく、三脚を立てて写真を撮影するには適していません。
同様に、音羽山の山頂の南、牛尾観音さん(牛尾山)の上のパノラマ台からも伊吹山や霊仙山が見えるため、この地点から乗鞍岳まで見える可能性があります。
山頂付近やパノラマ台からであれば、今回の記事の撮影地点と異なり、高さの面ではかなり余裕が生じます。
計算上では千頭岳(東千頭岳)からも乗鞍岳が見えますが、現状、千頭岳の山頂は展望が期待できません。
音羽山と異なり、計算上、千頭岳の山頂からは御嶽山の山頂域も望むことができます。
軽く追記。
1924年(大正13年)の『近畿の登山』では標高点546m峰を「牛尾山」としていますが、牛尾山は俗に「牛尾観音」と呼ばれる法嚴寺(法厳寺)さんの山号に過ぎず、本来は音羽山と同義ではないかとする見解もあります。
この標高点546m峰の北に「パノラマ台」があり、そのすぐ北の小ピークに「牛尾山」とする山名標も設置されましたが、これには疑問が残るところです。
その付近の「牛尾峠」 と混同されたのでは?
パノラマ台から乗鞍岳を見通せる(撮影できる)のは確認済。
追記終わり。
私が見落としているだけで、より良い撮影適地がある可能性もあります。
興味がある方は音羽山と千頭岳の周辺から伊吹山と霊仙山が見える地点を探してみてください。
あまり離れてしまう、たとえば東海道を越えて逢坂山まで北上してしまったり、醍醐山地でも大平山まで南下してしまうと、乗鞍岳が見える範囲(可視エリア)から外れてしまいます。
整理の都合で記事を分けます。
続きは上の記事に。
関連記事 大津市・京都市 音羽山から展望ハイク
すべて同日の山行記録です。併せてご覧ください。
- 音羽山 鶴の里・池の内公園から琵琶湖展望ハイキング 大津
- 京都市や大津市の音羽山から北アルプスの乗鞍岳まで見える?
- 音羽山から白山を琵琶湖越しに遠望 / 比叡山ホテルの話
- 音羽山の夜景と夕景 台高山脈や大峰山脈を遠望 京都・大津
音羽山(地理院 標準地図)
「音羽山(オトワヤマ)(おとわやま)」標高593.1m(593.2mから改定)(三等三角点「小山」)
京都府京都市山科区、滋賀県大津市
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