強い低気圧と寒波の影響を受け、京都市でも雪が降った2015年(平成27年)3月10日の話。
夕暮れ時に少しだけ時間が空いたため、どこか近場の山を歩こうと思い立ったものの、大文字山の火床すら日没までに間に合いそうもなく。
ですが、地下鉄を利用すれば松ヶ崎(松ケ崎)の東山くらいは登れそうです。
京都盆地側では雪は止んでいたものの、松ヶ崎の山々の向こうにあたる地下鉄の国際会館駅を出ると、外は雪が舞っており、やはり岩倉盆地側は比叡山や京都北山が近いことを実感します。
「宝が池」(宝ヶ池)や「東山」の表記について
国立京都国際会館の付近から宝が池公園「北園」「子どもの楽園」側へ向かいます。
古い地図では「寶池」と表記される「たからがいけ」、特別な事情が無いかぎり、当ウェブサイトでは「宝が池」の表記を採用していますが、これは地理院地図の表記に従ったものです。
助詞「が」の使い分けはさまざまで、市の広域公園は「宝が池公園」の表記ですが、「宝ヶ池」や「宝ケ池」の表記も珍しくはなく、たとえば叡山電鉄さんでは「宝ケ池」駅の表記です。
この件で追記。
当池は明治時代頃から「宝が池」と呼ばれるようになったと考えられています。
1889年(明治22年)測量の仮製二万分一地形図「京都」では池の名前が示されませんが、1909年(明治42年)測図、1912年(大正元年)発行の正式二万分一地形図「京都北部」では「寶池」と表示されます。
上の記事でも取り上げていますが、「宝池」が、いわゆる「宝の池」に由来するかは分かりません。
由来は諸説あるようですが、それらはいずれも後世の附会に見えます。
追記終わり。
京都五山送り火「妙法」の「法」の山として知られる「松ヶ崎東山」(大黒天山)については、地理院地図では「東山」と表記しているものの、いわゆる「東山三十六峰」や「東山山頂公園」との混同を避けるため、当サイトでは「松ヶ崎東山」としています。
ただし、「松ヶ崎東山」は昔から私が勝手に申し上げている呼称に過ぎず、「法」の山名としては、あくまでも「東山」のみの表記がより正しいと考えられます。
以前は山頂に「東山」と記された山名標がありましたが、いつの間にやら失われてしまいました。
東山(松ヶ崎東山)
地形図に見える「東山」の北尾根の先(北端)から適当に取り付き(北西にあたる「北園」側からでも、東にあたる「子どもの楽園」側からでも取り付けます)、あとは北尾根や山頂を経て、せいぜい10分程度の軽いハイキングで展望地に至ります。
かつては「法」の火床への立入も黙認されていたふしがあり、つい10年ほど前までは多くの方を見掛けたものですが、現在では明確に「立入禁止」となっています。
昔は一般コースだった松ヶ崎大黒天さん境内から火床に至る石段道も「立入禁止」になりました。
「法」の火床は見晴らしが良い展望地で、立入禁止は惜しいものがありますが、法の火床の最上段から東に約0.15km、あるいは山頂から南東に約0.1kmのあたりに岩場があり、この上もぼちぼち眺めが良く。
大雑把に申し上げて、火床と松ヶ崎城跡の中間点にあたりますが、よほど詳しい方しかご存じないであろう、きわめてマイナな展望地です。
この展望地の東の小ピークは俗に「城山」(松ヶ崎城山)と呼ばれており、この山域の東端(南東端)にあたります。
松ヶ崎城山の展望
松ヶ崎東山(松ヶ崎城山)の岩場の展望地からの眺望。京都市左京区。
遠くに生駒山と鳩ヶ峰(男山)が見えています。
岩場が写るように引いて撮影しているため、写真では左右が樹に遮られていますが、岩の上に立てば視界は開けます。
しかしながら、広い視界を誇る「法」の火床からの眺めには及びません。
山頂より少しだけ下がり、火床の最上段の外側ぎりぎりまで寄り、合間から京都の街並みや遠くを眺めることにします。
ちょうど日没時でしたが、雲が多く、雪も降ったり止んだりで、夕日や夕焼けを期待できる空ではありません。
以下の写真は火床の外(立入禁止の外)から撮影しています。
表中の「距離」は立脚点(撮影地点)からの直線距離を示しており、火床からの直線距離ではありません。
「法」(松ヶ崎東山)の展望
松ヶ崎東山(「法」)から京都南部、あべのハルカス、大観覧車スカイウォーカーを望む。
主な山、建築物 | 距離 | 標高 (地上高) | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
三峯山 | 89.3km | 576.2m | 和歌山県紀の川市 大阪府泉佐野市 |
あべのハルカス | 51.8km | (300m) | 大阪府大阪市阿倍野区 |
天王山の肩越しに「あべのハルカス」が見えますが、それより右(北西)にあたる大阪の高層ビル群を見通すことはできません。
また、いわゆる紀泉アルプス(紀泉高原)の中央部や和泉山脈西端部の山々、大阪湾などを望むこともできません。
京都西山に遮られるため、上に見える範囲が松ヶ崎東山から見て南西向き遠望の限界です。
やや曖昧な写真ですが、松ヶ崎東山から「あべのハルカス」が見えることに気付く方は少ないでしょうから、こちらに掲載しておきます。
ひらかたパークさんの大観覧車スカイウォーカー、大文字山からでは場所が分かりにくいですが、やや西にずれた松ヶ崎東山からであれば分かりやすく、少し空気が澄んだ日であれば双眼鏡で容易に確認できるでしょう。
時期によっては週末にライトアップされるので、そういった日であれば、より見付けやすくなります。
視点を左へ。
松ヶ崎東山(「法」)から生駒山と京都タワー、遠くに和泉山脈を望む。
主な山、建築物 | 距離 | 標高 (地上高) | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
岩湧山 | 78.6km | 897.1m | 大阪府河内長野市 | |
南葛城山 (嵯峨谷ノ峰) | 80.7km | 922m | 大阪府河内長野市 和歌山県橋本市 | 和泉山脈最高峰 標高の値は10mDEMによる |
神野山 | 82.3km | 869m | 大阪府河内長野市 (和歌山県伊都郡かつらぎ町) | |
生駒山 | 42.9km | 642.0m | 奈良県生駒市 大阪府東大阪市 | 生駒山地最高峰 |
飯盛山 (河内飯盛山) | 38.4km | 314m | 大阪府大東市 (大阪府四條畷市) | |
京都タワー | 7.9km | (131m) | 京都府京都市下京区 |
和泉山脈の見え方はきわめてうっすらしたものですが、参考程度に。
雪雲が出ているのか、岩湧山の山頂が分かりにくく。
その左右のピーク、右の南葛城山、左の三角点909.3m峰(点名「滝畑」)は見えています。
生駒山の手前は交野山ですが、旗振山と重なっているため、山名は示していません。
視点を左へ。
松ヶ崎東山(「法」)から平安神宮さんの大鳥居、知恩院さん、祇園閣、八坂の塔、遠くに金剛山を望む。
撮影地点から金剛山葛木岳(奈良県御所市)まで71.3km。
とくに示していませんが、左端に知恩院さん、その右手前に平安神宮さんの大鳥居。
分かりにくいですが、祇園閣(大雲院さん)、八坂の塔(法観寺さん)は直線上に並んで見えます。
「京都・東山花灯路」に伴い、祇園閣や八坂の塔もライトアップされるはずですが、なぜだか18時を過ぎても点灯する気配がありません。
悪天候に伴い、この夜はライトアップの開始が遅れたのでしょうか。
そうこうしているうちに、山の上は雪が降り始め、遠くは見えにくくなり、カメラやレンズにも雪が積もります。
このあたりで諦めることにし、片付けの準備をしていたら、一時的に雪が止み、空気が澄んだ感じに。
最後に夜景を撮影しておきましょう。
妙法の夜景
松ヶ崎東山(五山送り火「法」の山)から京都の夜景を一望する。
生駒山、あべのハルカス、ライトアップされた京都タワーなど。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
清水山 | 6.9km | 242.2m | 京都府京都市東山区 |
鳩ヶ峰 | 21.0km | 142.4m | 京都府八幡市 |
天王山 | 19.7km | 270m | 京都府乙訓郡大山崎町 |
向谷山 (大沢山) | 20.6km | 478.2m | 大阪府三島郡島本町 |
広角レンズで撮影した写真だと、ハルカスさんはもちろん、京都タワーも分かりにくいですね。
清水山など東山の連なりの手前、間に吉田山を挟み、その北側が異様に明るく照らされているのは京都大学さんの農学部グラウンドの夜間照明です。
雪が止んでいたのはわずかな時間のみ。急いで下山します。
普段は山頂から西に抜け、ドンドコ山? と呼ばれる山域を通り、松ヶ崎の七面宮さん(七面大天女宮)~松ヶ崎小学校側へ下山することが多いのですが、この日は少し悩んだあげく、登りと同じ道をたどって国際会館駅まで戻りました。
七面宮さんへの下山路は滑りやすい道のりで、夜の闇の中、雪が降っていると足を取られる可能性があるからです。
雪が降っているのは岩倉盆地側だけかと思いきや、京都盆地側に戻っても激しく吹雪いていましたが、明けて翌日は遠くまで見えやすい好条件の日となりました。
私もどこぞの山から遠くまで見渡すことができましたが、11日の話は長くなりそうなので、そちらは機会があれば。
以上、2015年3月の話。
過去に松ヶ崎東山の火床の最上段付近から夜景を撮影した話は上の記事に。
この当時は上(山頂側)から火床へ入る分には禁止とまでは書かれてなかったものの、今は「立入禁止」と明示されています。
翌年、東山や林山の西に位置する狐子坂から遠くの花火を撮影した話は上の記事に。
松ヶ崎界隈から気兼ねなく景色を眺めたいのでしたら、今はこちらから。
この付近の山域を総称して「虎ノ背山」(虎の背山)と呼び、京都市では貴重な「寅年の干支の山」であるという話は上の記事に。
松ヶ崎東山(地理院 標準地図)
「東山(ヒガシヤマ)(ひがしやま)」標高186m
京都府京都市左京区
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