神戸市 六甲 菊水山から明石海峡大橋と四国の剣山、三嶺を遠望

昨年、2013年(平成25年)12月の話。この日は六甲山系に属する菊水山をハイキング。
空気が澄んだ好条件の日、素晴らしい展望を誇る菊水山の山頂からは、遠く愛媛県は石鎚山脈の向こうに沈む夕日の姿を眺めることができました。

六甲・菊水山から愛媛・石鎚山脈に沈む夕日を望む 神戸市 2013年12月

六甲 神戸の菊水山から四国の石鎚山脈、法皇山脈と夕日を望む

2014.01.18

菊水山から法皇山脈の高峰を撮影した話は前回の記事に。

法皇山脈の左手前には讃岐山脈(阿讃山脈)の高峰が連なっていましたが、その讃岐山脈の左後方、あるいは淡路島の向こうに剣山地の連なりも見えています。
すでに黄昏時、最後に剣山地や明石海峡、紀淡海峡、紀伊水道を撮影しておきましょう。

六甲山系 菊水山の展望・遠景

四国の剣山地を遠望

神戸市 菊水山から四国の剣山や三嶺、淡路島北部、明石海峡大橋を観望 2013年12月
神戸の菊水山から徳島の剣山や高知の三嶺、淡路島北部、明石海峡大橋を観望する。

主な山距離標高山頂所在地備考
風呂塔137.8km1401.5m徳島県三好市
徳島県三好郡東みよし町
烏帽子山142.2km1669.9m徳島県三好市
石堂山138.6km1636m徳島県美馬郡つるぎ町
徳島県三好市
矢筈山139.0km1848.7m徳島県美馬郡つるぎ町
徳島県三好市
祖谷山系最高峰
黒笠山137.4km1703m徳島県美馬郡つるぎ町
徳島県三好市
三嶺144.3km1893.4m徳島県三好市
高知県香美市
高知県最高峰
塔丸138.7km1713.0m徳島県三好市
白髪山146.1km1769.7m高知県香美市土佐富士
韮生富士
丸笹山134.7km1711.9m徳島県美馬市
徳島県三好市
徳島県美馬郡つるぎ町
剣山136.0km1954.7m徳島県三好市
徳島県那賀郡那賀町
(徳島県美馬市)
徳島県最高峰
剣山地最高峰
一ノ森135.1km1879.6m徳島県那賀郡那賀町
(徳島県美馬市)
天神丸129.8km1631.9m徳島県那賀郡那賀町
徳島県美馬市

傾吹山(傾き山)の向こうに沈む夕日の姿も私の胸を打ちましたが、剣山や三嶺といった剣山地を代表する高峰と明石海峡大橋の構図も、また違った理由で私の心を大きく揺さぶるものがありました。
近畿地方(関西)から剣山が見える山は多々あれど、このような構図で見渡せる山は限られているでしょう。
神戸市のわずか460m足らずの山の上から四国4県すべての山を望むことができる、素晴らしいとしか言いようがありません。

四国には同名の山が数多く所在しますが、上の写真に写るのは剣山の北西に所在する阿波矢筈山です。
近畿地方の多くの山の上から遠望できるだけでなく、剣山以上に印象に残る山容も相まって、私にとっての矢筈山といえば、やはりこの山をおいて他にはありません。

淡路風力発電所や大阪湾海上交通センターも写っていますが、すでに暗いため、上の写真では分かりにくいでしょう。

視点を左に。

神戸市 菊水山から剣山地東部、淡路島、六甲山系南西端を望む 2013年12月
菊水山から四国の剣山地東部、淡路島の観音像、六甲山系南西端を遠望する。兵庫県神戸市北区から。

主な山、建築物距離標高
(地上高)
山頂所在地備考
高城山123.6km1632m徳島県那賀郡那賀町
(徳島県美馬市)
平家平131.0km1603.3m徳島県那賀郡那賀町
雲早山119.1km1495.9m徳島県那賀郡那賀町
(徳島県名西郡神山町)
高丸山118.8km1438.8m徳島県勝浦郡上勝町
徳島県那賀郡那賀町
竜西峰
(ジュッカショ山)
(栩栗谷山)
120.6km1172m徳島県那賀郡那賀町
徳島県勝浦郡上勝町
竜峠の西
東尾
(龍山)
120.1km1159.4m徳島県勝浦郡上勝町
徳島県那賀郡那賀町
竜峠の東
中津峰山101.8km773.0m徳島県勝浦郡勝浦町
徳島県徳島市
三角点839.9m峰112.4km839.9m徳島県勝浦郡勝浦町
徳島県勝浦郡上勝町
点名「狸谷」
竜王山113.2km732.1m徳島県那賀郡那賀町
淡路SA大観覧車18.7km135m兵庫県淡路市
世界平和大観音像28.0km(100m)兵庫県淡路市
妙見山
(淡路妙見山)
30.3km522m兵庫県淡路市津名山地最高峰
先山48.5km448m兵庫県洲本市淡路富士
横尾山6.3km312.1m兵庫県神戸市須磨区
栂尾山6.7km274m兵庫県神戸市須磨区
旗振山9.0km252.6m兵庫県神戸市須磨区
兵庫県神戸市垂水区
鉢伏山9.1km246m兵庫県神戸市須磨区

剣山地東部、このあたりの山域は和泉山脈西部側から望む機会が多い山々ですが、高城山や高丸山といった勝浦三山は、遠く離れた京都市の大文字山から京都西山越しに見通すことができます。
中津峰山は徳島市の最高峰で、計算上、四国から「あべのハルカス」を遠望できる山です。
他の剣山地の高峰と比較すると、「あべのハルカス」までの距離も約120kmに過ぎず、いずれ剣山地から撮影例が出るとすれば、この山からではないかと見ています。

淡路島の観音さん(世界平和観音像)の向こうには「淡路ワールドパークONOKORO」の観覧車も写っていますが、ライトアップされないこともあり、その場所が分かりにくいです。
その点、淡路サービスエリア(淡路SA)の観覧車は場所が分かりやすいです。

視点を左に。

淡路島の諭鶴羽山地を遠望

神戸市 菊水山から淡路島南部、諭鶴羽山地の山々を遠望 六甲山系 2013年12月
神戸の菊水山から大阪湾を越えて淡路島南部の諭鶴羽山地を遠望する。

主な山距離標高山頂所在地備考
諭鶴羽山61.1km607.9m兵庫県南あわじ市淡路島最高峰
柏原山52.7km568.9m兵庫県洲本市

普段であれば、六甲山系から諭鶴羽山が浮かび上がるように見えるだけでも嬉しいものですが、この日は四国まで見えていたこともあり、それほどの感動はありません。
ですが、遠く離れた大文字山や比叡山、比良の蓬莱山などから見える山ということもあり、諭鶴羽山を含む山岳展望の構図には特別な思い入れがあります。
よく見ると島の明かりも写っていますね。

視点を左に。

四国東端の伊島や紀淡海峡の友ヶ島を遠望

六甲山系 菊水山から成ヶ島、友ヶ島灯台、浮島現象を起こした伊島を遠望 2013年12月
神戸の菊水山から成ヶ島、友ヶ島灯台と浮島現象を起こした四国の伊島を遠望する。

主な山、灯台距離標高
(灯高)
所在地備考
高埼灯台51.2km(28m)兵庫県洲本市成ヶ島南端
三角点107.6m峰100.7km107.6m徳島県阿南市点名「伊島」
友ヶ島灯台49.5km(60m)和歌山県和歌山市沖ノ島西端

神戸市の山の上から、大阪湾、そして由良瀬戸(紀淡海峡)、さらには紀伊水道を越え、遠く四国最東端の島である伊島を望みます。
よく見ると、伊島は浮島現象(浮景、下位蜃気楼) を起こしており、まるで海上に浮かんでいるかのようです。
もっとも、この時期、浮島現象そのものはとくに珍しいものではありません。

成ヶ島の高埼灯台、沖ノ島の友ヶ島灯台が点灯していることは確認できましたが、残念ながら、伊島灯台は確認できずじまいでした。
上の写真だと三角点107.6m峰の左のピーク付近に灯台が所在するはずですが、灯台そのものが写っていないことから、そもそも菊水山からは見えないようです。
過去に和泉山脈からは撮影に成功しており、本州本土から見えない(撮影できない)わけではありません。

なお、淡路島の南東端に遮られるため、四国本土の東端にあたる蒲生田岬(かもだみさき、がもうだみさき)の周辺は菊水山から見えません。
同じ六甲山系に属する摩耶山からであれば、由良瀬戸(紀淡海峡・由良海峡)の向こうに蒲生田岬まで遠望できます。

日没後の摩耶山から眼下に神戸港方面の夕景、遠くに友ヶ島、四国東端まで一望する

摩耶山から神戸港の先に友ヶ島、紀淡海峡、伊島、四国を遠望

2014.11.10

詳しくは上の記事に。
同じ六甲山系に属する山、かつ、どちらかと言えば西部寄りの山域でも、微妙に見える風景が異なるのが面白いです。

神戸市 菊水山から友ヶ島、紀淡海峡、加太の灯台を遠望 六甲山系 2013年12月
神戸の菊水山から紀淡海峡、友ヶ島、加太の灯台を遠望する。

主な山、灯台距離標高
(灯高)
所在地備考
コウノ巣山49.4km119.7m和歌山県和歌山市友ヶ島最高峰
田倉埼灯台49.9km(49m)和歌山県和歌山市

淡路島と本州本土の間、紀淡海峡に浮かぶ友ヶ島を望みます。
手を伸ばせば届くのではないかと錯覚させる近さ、空気が澄んだ日の友ヶ島の見え方にはなにか異様なものを感じます。

よく見ると、地ノ島の向こう、紀伊水道の海上に船影が写っていますが、撮影地点から水平線に達するまでの距離は約79kmです。
分かりにくいですが、和歌山県本土側には加太の田倉埼灯台も写っています。
加太ノ瀬戸(紀淡海峡)の間を抜け、ぎりぎり望むことができます。

京都に戻る時間の都合もあり、そろそろ菊水山ともお別れです。
最後に遠くの山々、遠くの海峡、遠くの島嶼、それに、ライトアップされた明石海峡大橋……、この美しい景色をしっかり目に焼き付けましょう。

明石海峡大橋と四国の夜景

改めて眺めてみると、剣山方面になにやら謎の光が……。

菊水山から剣山地の高峰と明石海峡の夜景を望む 神戸から四国山地を遠望 2013年12月
菊水山から三嶺や矢筈山など剣山地の高峰と明石海峡の夜景を望む。神戸から四国山地を遠望。

主な山距離標高山頂所在地
中津山148.6km1446.6m徳島県三好市
大麻山83.4km538m徳島県鳴門市

四国側に焦点を合わせて撮影しており、眼下の神戸側はボケた写真です。
浮かび上がる剣山地や、明石海峡大橋のイルミネーションに目を奪われますが、よく見ると、剣山の手前の山がなにやら明るい光を放っていることに気付きます。
帰宅後、慎重に調べてみたところ、この山は徳島県鳴門市に所在する大麻山(おおあさやま)だと分かりました。

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から四国、紀伊水道、淡路島と夕日を望む 海南市

雨の森展望台の夕日 紀伊水道の夕景 海南から四国遠望 夕陽百選

2013.05.06

大麻山は過去に和歌山県海南市の山の上から撮影しています。

大麻山の常夜燈(謎の光)

この山は鳴門市の最高峰で、山頂には大麻比古神社さん の奥宮がお祀りされていますが、はたして、謎の光の正体はなんでしょうか。
地形図では、大麻山 に灯台を表す地図記号が見られますが、これは海上保安庁さんが管理する一般的な灯台ではなく、実は神社さんが建てた常夜燈(常夜灯)が放つ光なのだそうです。
いかに視程に恵まれた夜とはいえ、約80km以上離れた神戸市まで光が届いたことに驚きます。

追記。
初稿時に「地形図では、大麻山に灯台を表す地図記号が見られます」としましたが、いつの間にやら、地理院地図から「灯台を表す地図記号」が消えてしまいましたね……。
下記のリンク切れの件も併せて考慮すると、常夜灯としての役目を終えたのでしょうか?
追記終わり。

この常夜燈の歴史については徳島海上保安部さんの公式サイトに詳しく。

大麻山
http://www.kaiho.mlit.go.jp/05kanku/tokushima/gyoumu/uminomichitop/awasanpotop/ooasayama.html (リンク切れ)

「大麻山は標高538mで山頂からは徳島平野、紀伊水道、瀬戸内海が一望でき~」とありますが、計算上、この大麻山は「あべのハルカス」が見える山でもあり、絶妙な位置に所在する山と言えるでしょう。
それにしても、民間の常夜灯が放つ明るさとは思えませんね。

上記リンク切れ記事について追記。
詳しい経緯が伝わる素晴らしい記事だっただけに、更新時に失われてしまったのは残念に思います。
現状、インターネット上に、この件について触れた記事が見当たらないようですので、当方で公開当時の記事の内容を転載しておきます。

ここをクリック(タップ)で「大麻山の常夜燈の由来」を非表示

標高538m山頂には、昭和31-32年に常夜燈が建設された。
大麻比古神社の宮司によると、現在の常夜燈より以前には燈明や常夜燈は存在していなかったとのことである。

 常夜灯の建設は、現在の大麻比古神社の大鳥居を建替える際に浄財が予想以上に集まったことから、急遽、大鳥居のほかに神輿倉と以前から神社の奥宮がある大麻山に灯りが欲しいという要望があったことによる。

建設には、四国電力の協力を得た。電気代は、常夜燈が航路標識の役目をすることから、小松島の海上保安部に相談に行ったが、それは実現しなかった。

完成したところ、思わぬ反響があった。最初の頃は、二方向に指向性の探照灯のようなものであったが、灯りが消えた時には、沖合いで漁をする瀬戸内や小松島方面の漁業関係者から問合せが殺到した。

現在は、水銀灯に替えられているが、常夜燈の鉄塔は、建設当時からのもので、最近強度調査したが、問題がない。
鉄塔の高さについては、海上自衛隊、県空港対策室からも問合せがあったが、史料等は、昭和39年に発生した火災により、、社務所等が焼失し、当時の鉄塔の設計図や資料等も焼失して、不明であるとのこと。

徳島海上保安部の公式サイトより

(※全て原文まま)

リンク・著作権等について|海上保安庁

少し長いのでトグルスイッチ開閉式にしておきます。
現状では可能性は低そうですが、もし、公式さんが再掲載なさったり、何らかの形(たとえば出版物など)で広く周知がなされるようであれば、当方は取り下げます。

上記経緯を見るかぎり、あくまでも民間が所有する常夜燈であって、海上保安庁が所管する灯台であったり、法が定める航空灯台ではないと考えられます。
ご連絡いただいた話によると、常夜燈としては今もなお健在のようですが、どうやら地形図に表示される地図記号の対象から外された、らしい。
灯台の地図記号(⛯)の表示対象となるのは、原則として全ての灯台と、灯標および航空灯台のうち、重要なもの。
資料修正により、定期的に更新されます。

菊水山の夜景 神戸市北区

後から登っていらっしゃった地元にお住まいの方々とお話ししていたら、すっかり暗くなってしまったので、今回は夜景を撮影してから下山することにします。

菊水山から眼下に神戸市、対岸に関西国際空港の夜景を望む 2013年12月
菊水山から眼下に神戸市、対岸に関西国際空港の夜景を望む。

眼下は神戸市でも兵庫区、長田区あたりの夜景。
大阪湾の対岸には関西国際空港も写っていますが、摩耶山などから望む場合と比較すると高度不足は否めず、やや分かりにくいです。

菊水山から神戸三宮、ポートアイランド、神戸空港方面の夜景を望む 2013年12月
菊水山から神戸三宮、神戸港、ポートアイランド、神戸空港方面の夜景を望む。

大阪湾の対岸は左奥が大阪府堺市、右奥が貝塚市のあたり。
神戸港の付近にはライトアップされたポートタワーも写っています。

この日の菊水山からは、2013年1月に望むことができなかった、和歌山県最高峰を含む紀伊山地西部の山々、香川県最高峰を含む讃岐山脈(阿讃山脈)の山々、法皇山脈、徳島県最高峰、高知県最高峰を含む四国山地の山々などを広く一望できました。
地元の人間ではない私がこれほど好条件の日に訪れる機会はもうないかもしれません。
大阪湾の向こうに見た風車、播磨灘の向こうに見た小豆島や児島半島、石鎚山脈の向こうに沈む夕日、剣山と明石海峡大橋、紀伊水道の向こうに浮かぶ伊島、それに、神戸の夜景……、どれをとっても忘れることができない、一生の思い出となりました。
ありがとうございました。

関連記事 菊水山から四国山地などを眺望・遠望

すべて同日の山行記録です。併せてご覧ください。

菊水山(地理院 標準地図)

クリック(タップ)で「菊水山」周辺の地図を表示
「菊水山(キクスイヤマ)(きくすいやま)」
標高458.8m (三等三角点「下谷上」)
兵庫県神戸市北区

ABOUTこの記事をかいた人

Maro@きょうのまなざし

京都市出身、京都市在住。山で寝転がりながら本を読むか妄想に耽る日々。風景、遠望、夕日、夜景などの写真を交えつつ、大文字山など近畿周辺(関西周辺)の山からの山岳展望・山座同定の話、ハイキングや夜間登山の話、山野草や花、野鳥の話、京都の桜や桃の話、歴史や文化、地理や地図、地誌や郷土史、神社仏閣の話などを語っています。リンク自由。山行記録はごく一部だけ公開!