摩耶山から神戸港の先に友ヶ島、紀淡海峡、伊島、四国を遠望

2014年(平成26年)9月、六甲山系に属する摩耶山を登った日の話。
この日の掬星台からは遠くまで見えやすく、神戸空港や大阪湾を越えた向こう、関西国際空港まで条件よく望むことができました。

摩耶山の掬星台から「りんくうゲートタワービル」、関西国際空港連絡橋を望む 2014年9月

摩耶山 掬星台の展望 関西国際空港と神戸空港の夜景を一望

2014.11.06

前回までの記事で、神戸市灘区の摩耶山掬星台から見て、北東~東~南東~南向きの風景を撮影した写真を掲載してきました。
察しの良い方であればお分かりかもしれませんが、今回は南南西向きにあたる紀淡海峡方面に対する眺望です。
眼下の神戸港周辺の景色も併せて。

摩耶山の達人と猫の思い出

かつて、今よりも六甲山の山々を登っていた頃の話。
夕方の摩耶山でお会いする、私が心の中で「摩耶の○○さん」とお呼びしていた方がいらっしゃいました。
かれこれ何十年も六甲山系を登っていらっしゃるとのことで、至るコースはさまざまながら、夕方頃には掬星台に着き、ネコさんと戯れては夕暮れ時の山寺尾根を下る、そのような山歩きを繰り返していらっしゃるようでした。

初めてお会いした日、「私は京都市在住で、よく大文字山を登っていますが、稀に大文字山から友ヶ島や淡路島が見えることがあり、友ヶ島が見える山、つまり六甲山系に対しても親しみを抱いています」といった話をしました。
その方と次にお会いした日、「私のことを覚えていらっしゃいますか?」とお尋ねしてみたら、嬉しそうに「大文字山の」「遠くは見えた?」と微笑まれ、それ以来、すっかり「大文字山の人」扱いされるように。
それからというもの、なぜだか私のような若い人間のことを気に入ってくださったらしく、他の人には教えないということを教えてくださったり……、もちろんこれは方便の類だとは思いますが……、さまざまな興味深いお話を伺いました。

2012年に私がひどく体調を崩し、山から足が遠のいて以降、昨年、久々に摩耶山を訪れた日はお見掛けすることなく、そして、今年もお会いできずじまい。
お話を伺う機会があった当時ですら、すでに老齢の域に達した方でしたが、現在、どうなさっているのか気になります。
摩耶山の上から紀淡海峡や友ヶ島を眺めるたび、その方のことが思い出されます。

(2018年追記。ご健在とのことで何よりです!)

神戸市灘区 摩耶山「掬星台」からの展望・眺望

紀淡海峡 方面

神戸・摩耶山 掬星台から紀淡海峡の友ヶ島、紀伊水道の伊島を遠望 2014年9月
神戸・摩耶山の掬星台から紀淡海峡の友ヶ島、紀伊水道の伊島を遠望する。

この日は空気が澄んでおり、紀淡海峡に浮かぶ沖ノ島(友ヶ島)の向こうに、遠く四国最東端の島である伊島まで見通すことができました。
とは言え、しょせんは9月半ばの空、ぼんやりした見え方にすぎず、冬場のように浮島現象も起こしていません。

写真の左端、地ノ島、加太ノ瀬戸の左(東)に見切れて写っているのは、和歌山市の本州本土、とくに大川峠のあたりです。
摩耶山と同じ六甲山系に属する菊水山の山頂からは、ぎりぎりとはいえ、加太の田倉埼灯台(田倉崎)も見えますが、摩耶山の掬星台からは見えません。

視点を少し左(東)に動かしてみます。

多奈川第2発電所 方面

摩耶山から多奈川第2発電所、遠くに和歌山・日ノ御埼の周辺峰を遠望 2014年9月
摩耶山から多奈川第2発電所、孝子峠方面、遠くに和歌山・日ノ御埼の周辺峰を遠望する。

主な山距離標高山頂所在地
西山92.4km328.7m和歌山県日高郡日高町
和歌山県日高郡美浜町
日ノ山95.1km201.6m和歌山県日高郡日高町
和歌山県日高郡美浜町
重山86.2km262.6m和歌山県日高郡由良町
高野山49.2km285m大阪府泉南郡岬町
甲山51.3km212.1m大阪府泉南郡岬町

日ノ山の西は日ノ御埼、西山の南は煙樹ヶ浜、私にとっては懐かしく思い出深い地名です。
菊水山の山頂から西山は見えますが、日ノ山は見通せません。
摩耶山の掬星台からであれば、いずれも遠望できます。

神戸の菊水山から大阪の「あべのハルカス」、舞洲、天保山大橋を遠望 2013年12月

神戸の菊水山から和歌山の風力発電所、あべのハルカスを遠望

2014.01.14

いつぞやの菊水山の記事でも述べましたが、「六甲山系から西山に至るまでの間に3つの海湾を越える」という点に地理的な面白さを感じます。
地図上に線を引いていただければお分かりいただけると思いますが、神戸市と泉南郡岬町の間(大阪湾)、和歌山市と海南市の間(和歌浦湾)、有田市と日高郡由良町の間(紀伊水道)の大きな3つの海湾を跨いで(飛び越えて)います。

再び視点を紀淡海峡に戻します。

友ヶ島灯台、伊島を遠望

日没後の摩耶山から友ヶ島灯台、紀淡海峡、四国・阿南市の伊島、棚子島を遠望 2014年9月
日没後の摩耶山から友ヶ島灯台、紀淡海峡、四国・阿南市の伊島、棚子島を遠望する。

主な山、灯台距離標高
(灯高)
山頂所在地備考
三角点107.5m峰105.0km107.5m徳島県阿南市点名「伊島」
コウノ巣山53.6km119.7m和歌山県和歌山市友ヶ島最高峰
友ヶ島灯台53.8km(60m)和歌山県和歌山市沖ノ島

お約束、点滅する(ように見える)友ヶ島灯台の撮影に挑戦。
動画で撮影しておき、後で切り出せばよい、あるいは、連射で撮影しておき、後で選別すればよいと言われそうですが、それでは面白みがないため、タイミングを計って単発の静止画で撮影しています。
こういうときは、人間メトロノームとも言える技術、あるいは才能を持つ方が羨ましく [1]

光度が高い灯台ということもあり、友ヶ島灯台には昔から妙に惹かれるものがあります。
国際基準による光達距離は約38kmとのことですが、霧や靄の影響を受ける夜でなければ、約54km離れた摩耶山からでも望むことができます。

四国本土最東端の蒲生田岬を遠望

摩耶山から淡路島南東端、紀伊水道、四国本土最東端の蒲生田岬を遠望 2014年9月
摩耶山から淡路島南東端、成ヶ島、紀淡海峡、紀伊水道、四国本土最東端の蒲生田岬を遠望する。

主な山、灯台距離標高
(灯高)
山頂所在地備考
入道丸
(次郎峰山)
109.9km235.2m徳島県阿南市点名「次郎坊」
鷹の巣山111.9km349.3m徳島県阿南市点名「鷹の巣山」
三角点360.6m峰113.0km360.6m徳島県阿南市
徳島県海部郡美波町
点名「椿村」
伊座利峠の東
高埼灯台55.7km(28m)兵庫県洲本市成ヶ島南端

伊島から視点を右(西)に移し、いよいよ、淡路島、四国本土です。

右手前に見切れて写っているのは、淡路島の南東端、成ヶ島や高埼灯台のあたりです。
その遠方、はるか遠くには四国本土の最東端にあたる蒲生田岬の周辺が見えています。
ただし、厳密に申し上げるのであれば、掬星台から見て約93kmで水平線に達するため、約108km離れた蒲生田岬の低所、それに、周辺の細かな島嶼を望むことはできません [2]

掬星台と菊水山からの展望は似ている部分も多いのですが、菊水山からは蒲生田岬の周辺が見えません。

田倉埼灯台
(和歌山県和歌山市)
日ノ山
(和歌山県日高郡)
蒲生田岬の周辺
(徳島県阿南市)
摩耶山「掬星台」
(兵庫県神戸市灘区)
見えない見える見える
菊水山
(兵庫県神戸市北区)
見える見えない見えない

掬星台と菊水山における遠望の微妙な差異について、上にまとめておきます。
今回の記事とは無関係ですが、明石海峡大橋が見えるかどうかの違いもあり、菊水山からは見えますが、掬星台からは見えません [3]

私が知るかぎり、固有の山名を持つ山としては四国本土最東端の山が入道丸(次郎峰山)です [4]
四国の最東端であるにもかかわらず、知名度が高いとは言い難いようで、現状、インターネット上において、山行記録を1つも見付けることができません。
もちろん、インターネット上で見付からないからといって、実際に登られていないわけではなく、記録に残す方が少ないだけでしょう。
伊座利峠より西にあたる明神山であれば、山行記録を数多く拝見、拝読できます。

神戸港や大阪湾、紀淡海峡の夕景

日没後の摩耶山から眼下に神戸港方面の夕景、遠くに友ヶ島、四国東端まで一望する
日没後の摩耶山から眼下に三宮、元町、神戸港、ハーバーランド方面の夕景を観望する。
大阪湾を越えた先には友ヶ島、さらに紀伊水道の向こうに四国東端まで一望できました。

神戸港のあたりに、ライトアップされた神戸ポートタワー、MOSAIC大観覧車が重なるように見えており、その左にはホテルオークラ神戸、神戸メリケンパークオリエンタルホテル(中突堤旅客ターミナル)。
中突堤(中央ターミナル)に入港、接岸しようとする船舶も写っていますが、ポートタワーの陰となり、やや分かりにくいです。

整理の都合で記事を分けます。

摩耶山の掬星台から六甲アイランド、阪神間、大阪方面の夜景を望む 2014年9月

摩耶山 掬星台から四国、淡路島、大阪湾、神戸、六甲の夜景を

2014.11.13

続きは上の記事に。
長々と続けてきた摩耶山の話も次回で最終回です。

関連記事 2014年9月 摩耶山 掬星台の風景

すべて同日の山行記録です。併せてご覧ください。

摩耶山(地理院 標準地図)

クリック(タップ)で「摩耶山」周辺の地図を表示
「摩耶山(マヤサン)(まやさん)」
標高点702m 三角点698.6m(三等三角点「摩耶山」)
兵庫県神戸市灘区

脚注

  1. 友ヶ島灯台の閃光間隔(灯質)は、閃紅白互光10s、分かりやすく述べると、5秒ごとに紅白が交互に各1閃。[]
  2. 標準的な大気差(地平大気差)と仮定。浮島現象や球面上のトレースは考慮しないものとします。[]
  3. 掬星台から見えないだけであって、摩耶山でも天上寺さんの「天空の大舞台」や、学校林道を少し下った展望地からであれば明石海峡大橋も見えます。[]
  4. 蒲生田岬の裏山にあたる三角点109.5m峰(点名「蒲生田」)は固有の山名が見当たりません。現地は遊歩道も整備されていますが、付近を含めて一帯を「蒲生田岬」と称するのが一般的であり、個別の「山」ととらえる方は少ないでしょう。三角点235.2m峰(点名「次郎坊」)はハイカーの間では「入道丸」と呼ばれていますが、かつて地元では「次郎峰山」と呼ばれていたそうです。三角点の点名にその名残をとどめています。[]

ABOUTこの記事をかいた人

Maro@きょうのまなざし

京都市出身、京都市在住。山で寝転がりながら本を読むか妄想に耽る日々。風景、遠望、夕日、夜景などの写真を交えつつ、大文字山など近畿周辺(関西周辺)の山からの山岳展望・山座同定の話、ハイキングや夜間登山の話、山野草や花、野鳥の話、京都の桜や桃の話、歴史や文化、地理や地図、地誌や郷土史、神社仏閣の話などを語っています。リンク自由。山行記録はごく一部だけ公開!