2011年(平成23年)10月のはじめ、空気が澄んだ秋の日のこと。
この日は山の上からクリアに遠くまで見通すことができ、まさに「一望無垠」と呼ぶにふさわしく。
見晴らしの良い京都の大文字山から、山科盆地や大阪平野を越えた先に、紀伊山地の高峰や和泉山脈の連なり、それに大阪湾や淡路島に至るまで条件よく望むことができました。
この日、私が大文字山で撮影した写真について、当初は他所で公開していましたが、改めて当ウェブサイトにて再掲しておきます。
写真はいずれも大文字山の山頂(三角点)から撮影したものです。
念のために申し上げておきますが、山の中腹にあたる「大」の字の火床からの眺めとは大きく異なります。
大文字山は京都市左京区に所在し、いわゆる東山三十六峰の山並みを構成する一座。
まずは、南を向いて撮影。
目次
京都市 大文字山 山頂からの展望・眺望
大台ヶ原、大峰山を遠望
大文字山から台高山脈(大台ヶ原)、大峰山脈の山々を遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
薊岳 | 76.7km | 1406m | 奈良県吉野郡東吉野村 奈良県吉野郡川上村 | |
日出ヶ岳 (大台ヶ原山) | 96.5km | 1695.1m | 三重県多気郡大台町 奈良県吉野郡上北山村 | 三重県最高峰 台高山脈最高峰 |
如来月 (三津河落山) | 95.2km | 1654m | 三重県多気郡大台町 奈良県吉野郡上北山村 | |
ジョウブツ山 (両佛山) (天狗の俎石) | 77.4km | 1308.0m | 奈良県吉野郡川上村 奈良県吉野郡東吉野村 | |
キワダズコ | 92.5km | 1455.5m | 奈良県吉野郡川上村 奈良県吉野郡上北山村 | |
白屋岳 | 76km | 1177.0m | 奈良県吉野郡川上村 | |
阿弥陀ヶ森 | 87.4km | 1680m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡川上村 | |
大普賢岳 | 88.9km | 1780.1m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡川上村 奈良県吉野郡上北山村 | |
竜ヶ岳 | 87.0km | 1725m | 奈良県吉野郡天川村 | |
山上ヶ岳 | 85.9km | 1719.4m | 奈良県吉野郡天川村 | |
稲村ヶ岳 | 87.4km | 1726.1m | 奈良県吉野郡天川村 | |
弥山 | 93.6km | 1895m | 奈良県吉野郡天川村 | |
八経ヶ岳 (八剣山) (仏教ヶ岳) | 94.3km | 1915.2m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡上北山村 | 近畿地方最高峰 奈良県最高峰 大峰山脈最高峰 |
頂仙岳 | 92.4km | 1717.7m | 奈良県吉野郡天川村 | |
天和山 | 92.3km | 1284.8m | 奈良県五條市 奈良県吉野郡天川村 |
淡路島や友ヶ島までの距離には劣りますが、紀伊山地の高峰は雲の中に隠れやすく、いつでも見通せるわけでありません。
大文字山の現地で展望について講釈を垂れる際、よく話の種としていますが、天和山は大文字山から見て真南に近く。
視点を大きく右へと移します。
金剛山と生駒山の間に信貴山が見え、さらにその遠方には紀伊山地西部の高峰の姿が見えます。
白馬山脈、高野山、信貴山を遠望
山名 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
中峰 (中峯) | 108.1km | 1277.5m | 奈良県吉野郡野迫川村 奈良県吉野郡十津川村 | |
弁天岳 | 91.3km | 984.2m | 和歌山県伊都郡高野町 | |
城ヶ森山 | 112.6km | 1269.3m | 和歌山県田辺市 和歌山県日高郡日高川町 | 白馬山脈最高峰 |
臼ヶ岡山 | 114.5km | 1162m | 和歌山県日高郡日高川町 | |
若藪山 | 113.4km | 1153m | 和歌山県有田郡有田川町 和歌山県日高郡日高川町 | |
天狗岳 | 97.2km | 967.9m | 和歌山県伊都郡高野町 和歌山県伊都郡かつらぎ町 | 長峰山脈最高峰 |
信貴山 | 47.0km | 437m | 奈良県生駒郡平群町 |
よくよく見ると、城ヶ森山の山頂部にレーダ雨量計らしき建造物も写っています。
このレーダ雨量計は近畿地方の多くの山から見通せますが、大文字山から見えるあたり、さすが一等三角点峰ですね。
中峰(中峯)は護摩壇山の北西1.9kmに所在する三角点1277.5m峰。
上の写真の左手には和歌山県最高峰である龍神岳、護摩壇山が所在しますが、金剛山の山体に遮られるため、惜しくも大文字山からは見えません。
京都市内から龍神岳を望むのは難しい。
大文字山の山頂から見える山のうち、ヒノキ林に遮られず、明瞭な視界を確保できる方角に限定すると、現状、本州で最遠にあたる地は白馬山脈の山々です。
計算上では四国の南東部に所在する八郎山の山頂周辺、ならびに太竜寺山の山頂周辺が、紀淡海峡に浮かぶ友ヶ島の後方、遥か遠くの海上に浮かんで見える可能性があります。
しかしながら、剣山や矢筈山といった剣山地を代表する高峰であっても、京都西山の山々に遮られるため、大文字山からは見えません。
京都の大文字山から見える最遠の山は、大文字山から191.6km離れた徳島の八郎山ですが、京都、大阪、大阪湾、紀淡海峡、紀伊水道の湿度の壁は厚く、実際に見通すのは困難でしょう。
多くの展望愛好家さんから「数十年に一度の好機」とまで言われた2012年(平成24年)11月25日のあの日、比叡山から御嶽山や淡路島が浮かび上がるように見えていた日ですら、比叡山から四国まで見通すことはできなかったのです。
しかし、まだ諦めたわけではありません。いずれ、目にする機会もあるでしょう。
四国が見えた件について追記
…などと上に書いていましたが、その機会が訪れ、ついに大文字山から四国は八郎山の撮影に成功しました。
八郎山は大文字山から見通せる最遠の地です。
詳しくは上の記事で。
さておき、視点をさらに大きく右へと移します。
生駒山の右、あるいは八幡の鳩ヶ峰の向こうに大阪平野が広がります。
建設中の「あべのハルカス」を遠望
大文字山から建設中の「あべのハルカス」、りんくうゲートタワービルを遠望する。
撮影地点から「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)まで49.6km。
紀泉アルプス最高峰の雲山峰(和歌山県和歌山市)まで95.6km。
りんくうゲートタワービル(大阪府泉佐野市)まで82.2km。
建設中の「あべのハルカス」が写っていますが、関西国際空港の対岸、りんくうゲートタワービル(→SiSりんくうタワー)が写っていることのほうが貴重でしょうか。
より遠くに所在する和泉山脈、紀泉アルプスの稜線まで見えるような日であっても、りんくうゲートタワービルは見えない、写真に写らない、なんていうのはよくある話です。
上の写真により、京都の大文字山から大阪の「あべのハルカス」が見えることが立証され、「『あべのハルカス』がどこから(どこまで遠くから)見える」か、検証の第一歩となりました。
写真の中央に横たわる丘陵は八幡市の鳩ヶ峰(男山)で、その向こうには、淀川に架かる枚方大橋や鳥飼大橋などが見えています(厳密には鳥飼大橋ではなく、鳥飼大橋に併設される大阪モノレールの淀川橋梁が目立っています)。
視点を右へ。
友ヶ島、和泉山脈西端部、大阪港 方面
大文字山から紀淡海峡に浮かぶ友ヶ島、和泉山脈西端部、梅田スカイビル、コスモタワーなどを望む。
撮影地点から友ヶ島(沖ノ島)のコウノ巣山(和歌山県和歌山市)まで110.3km。
和泉山脈西端部の高森山(和歌山県和歌山市、大阪府泉南郡岬町)まで103.5km。
紀淡海峡に浮かぶ友ヶ島は浮島現象(浮景現象)を起こしています。
過去の記事でも申し上げましたが、高森山(北山)は和泉山脈の西端、あるいは和歌山県と大阪府の府県境(紀伊和泉国境)の西端に所在します。
また、よく見ると、上の写真には此花大橋の主塔や天保山大橋の主塔なども写っています。
梅田スカイビルは写っていますが、グランフロント大阪のビル群が写っていないため、今となっては貴重な写真かもしれません。
大阪湾が分かりやすい写真は上の記事に。
視点を右へ。
淡路島南部の諭鶴羽山を遠望
大文字山から淡路島、諭鶴羽山地の山々を遠望する。
撮影地点から淡路島最高峰の諭鶴羽山(兵庫県南あわじ市)まで126.3km。
大文字山の山頂(三角点)から京都西山を越えて遠く淡路島まで見通せます。
過去に何度か他所で述べたことですが、改めてこちらでも述べておきます。
大文字山の火床から淡路島は見えません。
大文字山の山頂から淡路島まで見通せるのは確かですが、島南部に連なる諭鶴羽山地の山々が見えるのみで、淡路島の北部や中部の島影、あるいは明石や六甲山は見えません。
また、その淡路島南部の山々にしても、大文字山からは120km以上も離れており、特定の時期、ならびに時間帯を選んで登り続けたとしても、明瞭な写真を撮影する機会は年に数回あるかどうかといったところです。
好条件の日であれば、双眼鏡などに頼るまでもなく、目が良い方であれば肉眼でも分かります。
大文字山の火床から淡路島を見通せる、それも、天気が良ければ見えるという根拠のない謬伝が広まっているため、しつこく述べておきます。
よくある勘違いとしては以下のようなものを挙げることができます。
「あべのハルカスの後方にうっすらと淡路島が見えた!」
それは雲山峰など紀泉アルプスの山々です。
「大阪の高層ビル群(ビル街)の後方にうっすらと淡路島が見えた!」
それは高森山など和泉山脈西端部の山々です。
視点を右へ。
嵐山、北摂、丹波 方面
大文字山から嵐山、北摂、丹波の山々と京都の夕景を望む。
撮影地点から飛曽山(兵庫県篠山市)まで44.5km。
「嵐山」は山としての嵐山を指しています。
大文字山から見て西向きの遠方には高い山が存在しないため、飛曽山あたりを望むのが限界ですね。
千ヶ峰や笠形山といった北播磨を代表する高峰であっても、牛松山や愛宕山の南稜線に遮られてしまうため、大文字山からは見えません。
これも話の種としていますが、「大文字山から見える兵庫県の山」は極端に少なく、そういった点でも、淡路島や飛曽山、昼ヶ岳は貴重といえるでしょう。
六甲山や氷ノ山といった、一般的によく知られる兵庫県の山も、比叡山や愛宕山からは見えますが、大文字山からは見えません。
以上、2011年10月の話。
大文字山(地理院 標準地図)
「大文字山(ダイモンジヤマ)(だいもんじやま)」
標高465.4m(→465.3m)(三等三角点「鹿ケ谷」)
京都府京都市左京区(山体は山科区に跨る)
最近のコメント