大文字山を越えて如意ヶ岳(如意ヶ嶽)の山頂の東0.5km、管理道のガードレール脇から琵琶湖の南端部を俯瞰できる場所があります。
見晴らしの良さに加え、如意ヶ岳から藤尾・三井寺方面への大きな分岐点となっていることから、ハイカーの間では古くより知られており、当ウェブサイトでもお馴染みの展望スポットです。
「(如意ヶ岳の)近江大橋展望地」や「湖南展望地」、あるいは「大文字山(如意ヶ岳)の初日の出スポット」とでも申し上げればよいでしょうか。
滋賀県大津市側であればともかく、大文字山や如意ヶ岳でも京都市左京区側で眼下に近江大橋が見える地点は珍しく、明瞭に見渡せるのは当地の周辺だけだと考えられます。
2016年(平成28年)1月に撮影した写真を以下に。
如意ヶ岳(如意ヶ嶽)の近江大橋展望地から阿星山、金勝アルプスを遠望する。京都市左京区。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
飯道山 | 26.7km | 664.0m | 滋賀県甲賀市 | |
阿星山 | 21.7km | 693.0m | 滋賀県湖南市 滋賀県栗東市 | |
竜王山 | 18.4km | 604.6m | 滋賀県栗東市 | 金勝アルプス |
金勝寺山 (金勝山) | 19.6km | 610m | 滋賀県栗東市 | 標高の値は 10mDEMによる |
鶏冠山 | 16.8km | 490.8m | 滋賀県栗東市 滋賀県大津市 |
どこから見ても目立つ阿星山が近江大橋の対岸に聳えます。
この風景を今まで何年も眺め続けてきましたが、ちょっとした事情があり、今年の冬も何度か同じような構図で写真を撮影しました。
遥か彼方の山を見通せるとか、そういった話ではなく、金勝アルプスの山が「分離」して見える日を狙っていましたが、なかなか上手くいきません。
私が望む写真を撮影するためには、絶妙な日の差しかげんに恵まれないといけないことが分かりましたが、その話は別の機会に譲ります。
上の写真の左(北)には鈴鹿山脈中南部の連なりを一望でき、とくに雨乞岳や鎌ヶ岳が目立ちますが、これは過去の記事で幾度となく写真を掲載していますので、今回は掲載を見送ります。
興味がある方は上の記事に掲載している写真をご覧ください。
対して、上の写真の右(南)の山にはあまり惹かれるものがなく、せいぜい、過去の記事で鈴鹿山脈でも最南端域にあたる小平山(烏山)の山頂域が見えるといった話をしたかしないか程度の扱いでした。
ところが、よくよく目を凝らして眺めてみると……。
京都市の如意ヶ岳から琵琶湖南端越しに津市・亀山市の五嶺山や伊賀市の霊山を遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
小平山 (烏山) | 45.0km | 717m | 三重県亀山市 三重県伊賀市 | |
五嶺山 | 50.2km | 724.8m | 三重県津市 三重県亀山市 | 錫杖ヶ岳の西3.1km |
霊山 | 45.0km | 765.5m | 三重県伊賀市 | |
四百山 | 21.8km | 568m | 滋賀県甲賀市 滋賀県大津市 | 大鳥居の南 |
眼下には琵琶湖の最南端が見えています。
すでに近江大橋を過ぎており、そろそろ瀬田川も近い流域・水域ですが、いわゆる瀬田川起点よりは北ですので、扱いとしては琵琶湖の端です。
その向こう、金勝山トンネルに入る直前の新名神高速道路(建設が予定される大津JCT付近)や、ときどき話の種にしている四百山や信楽周辺の山越しに、布引山地北端部の山が見えることに気付きました。
「見える」とは申し上げても、山頂域が僅かに覗くのみです。
元はといえば、上の記事で、京都北山の桃山見晴台から大文字山の山肩越しに伊賀市の霊山を見通せることに気付き、それなら大文字山の周辺からも霊山が見える可能性があるのでは? と思いついたのがきっかけです。
よく調べてみると、こちらは霊山だけではなく、津市と亀山市の市境に所在する五嶺山まで見えることが分かりました。
五嶺山は錫杖ヶ岳の西3.1kmに所在する三角点724.8m峰で、地形図ではこのあたり 。
五嶺山の山頂は津市芸濃町河内と亀山市加太神武に跨りますが、平成の大合併以前は安芸郡芸濃町と鈴鹿郡関町の郡境でした。
加太(かぶと)神武(じんむ)の地名の読みは神武天皇と同じ。
神武の由来は分かりかねますが、江戸時代後期に成立した『勢陽五鈴遺響』に「加太(中略)神武 上加太ノ川南ニアリ」と見えます。
軽く追記しておきます。
神武の地名は加太板屋に鎮座する川俣神社さんの祭神、大比古命や神武天皇に由来するらしい。
「四道将軍」として知られる大比古命(大彦命)の武士が山野を拓いて居住した地が加太の神武で、1940年(昭和15年)の『金鵄餘光』(金鵄余光)における「川俣神社」の由緒に「神の武士の住する謂を以て字名を神武と稱す」と見えます。
また、同誌には「元暦元年正月、源義經上洛の時、當村にて味方の武士多く加はり屬するを祝し、村名を(それまでの鹿伏兎から)加太と改められたりと」とも見えます。
この説にしたがえば、加太の由来は源義経となります。
追記終わり。
この五嶺山は、現状、大文字山や如意ヶ岳の京都市側から見える、三重県津市に所在する唯一の山だと考えられます。
「三重県の山」が望めないわけではなく、たとえば大文字山の山頂からは三重県最高峰の日出ヶ岳(大台ヶ原山)まで遠望できますし、この近江大橋展望地からは四日市市の宮越山(水沢岳)なども見えます。
ただ、大津市や草津市を跨ぎ、津市の山を大文字山や如意ヶ岳から見通せるとは思いもよらず、今まで見落としていました。
比叡山からであれば、尼ヶ岳や三峰山といった津市に跨る他の山々も遠望できますが、音羽山に遮られるため、大文字山や如意ヶ岳からは見えません。
管理道の付近からは音羽山の右に京都府側の山科盆地が見え、木々の合間に金剛山も見通せます。
霊山や錫杖ヶ岳は過去に登頂していますが、この五嶺山は未登頂峰です。
如意ヶ岳や大文字山から固有のピークとして認識できる山はおおむね登ったと自負する私としては、五嶺山もいずれ登らざるをえません。
この展望地から派生する(私にとって)面白い話が続く、かもしれません。
その話は上の記事に。
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如意ヶ岳(地理院 標準地図)
「如意ヶ岳(ニョイガタケ)(にょいがたけ)」標高472m
京都府京都市左京区(山体は滋賀県大津市に跨る)
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