今回の記事のタイトルを見て、京都駅周辺の地理や、京都駅ビルの構造に詳しい方であれば、「京都駅の南にあたる大峰山脈と、駅の北にあたる京都タワー(や比叡山)を一緒に撮影できるわけがない」と思われるかもしれません。
そのように思われた方は、むしろ正しい知識をお持ちの方でしょう。
2016年(平成28年)3月下旬の話。
夕暮れ時に出張先から京都駅まで戻ってきました。
何気なく京都駅ビルの屋上まで上って遠くを眺めてみると、浮かび上がるように大峰山脈の連なりが見えているではありませんか。
望遠レンズこそ持ち合せていなかったものの、カメラは手元にあったので、「大空広場」の厚いガラス越しに撮影を試みます。
京都駅ビル「大空広場」から八経ヶ岳など大峰山脈の山々、金剛山を遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
八経ヶ岳 (八剣山) (仏教ヶ岳) | 91.1km | 1915.2m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡上北山村 | 近畿地方最高峰 奈良県最高峰 大峰山脈最高峰 |
天和山 | 88.9km | 1284.8m | 奈良県五條市 奈良県吉野郡天川村 | |
高城山 | 83.4km | 1111.2m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県五條市 | |
唐笠山 | 88.0km | 1118.2m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県五條市 | |
金剛山 (葛木岳) | 63.3km | 1125m | 奈良県御所市 | 金剛山地最高峰 |
交野山 | 22.5km | 341m | 大阪府交野市 | 河内富士 |
甘南備山 (甘南備山 雄山) | 19.6km | 221m | 京都府京田辺市 |
ガラス越しとは言え、遠く大峰の山並みが綺麗に見えています。
常々申し上げていますが、八経ヶ岳や山上ヶ岳といった高峰だけではなく、京都側から西吉野の山々まで明瞭に見える日は貴重です。
南向きに限られますが、京都駅ビル内では広い視界を有する展望地である「大空広場(Sky Garden)」は、駅ビルでも西側、ジェイアール京都伊勢丹さん側の屋上にあたるフロアです。
過去の記事で「大空広場」から大阪の「あべのハルカス」まで見通せることを示しています。
念のために申し上げておきますが、主に北向きが開ける「空中径路」とは別で、「葉っぴいてらす」とも呼ばれる屋上の広場です。
京都駅ビル「大空広場」から生駒山、和泉葛城山、あべのハルカスを遠望する。
主な山、建築物 | 距離 | 標高 (地上高) | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
生駒山 | 34.8km | 642.0m | 奈良県生駒市 (大阪府東大阪市) | 生駒山地最高峰 |
葛城山 (和泉葛城山) | 76.7km | 858m | 和歌山県紀の川市 大阪府岸和田市 大阪府貝塚市 | |
あべのハルカス | 43.7km | (300m) | 大阪府大阪市阿倍野区 | |
鳩ヶ峰 | 12.9km | 142.4m | 京都府八幡市 | |
天王山 | 11.9km | 270m | 京都府乙訓郡大山崎町 |
後ろを通りすがる方々がガラスに写り込まないように見計らいつつ撮影していたら、あっという間に日が暮れてしまいました。
和泉山脈の連なりも色濃く鮮やかに見えていますが、広角に近いレンズだけでは、それぞれのピークを分かりやすく撮影できません。
これは八経ヶ岳や弥山のピークも同様です。
せっかくこれほど空気が澄んでいるのですから、何か面白い構図で写真を撮影できないかと考え、あたりを見回してみると、角度によっては京都タワーがガラスに写り込むことに気付きました。
京都駅ビルの外壁面に京都タワーが反射することはよく知られていますが、駅ビル屋上のガラスでも同様のことができるとは気付いておらず、大峰山脈と合わせて撮影できないか試みます。
京都駅ビルから奈良の大峰山と逆さ京都タワー、逆さ比叡山を同じ構図に収めて撮影する。
やや苦しいですが、なんとか京都タワーと大峰の連なりを合わせて撮影できました。
京都タワーは京都駅の北に、八経ヶ岳は京都駅の南に所在するため、全天球撮影や、このような特殊な例を除き、京都駅から両者を1枚の写真に収めることはできません。
「大空広場」の厚いガラスは写真撮影に適さないと考えていましたが、このような使い方ができますね。
よく見ると、京都タワーの横には比叡山も写っています。
双耳峰である大比叡と四明岳が逆に写っており、いわば「逆さ比叡山」と言えるでしょう。
通常、京都盆地側から見て、大比叡が左に、四明岳が右に見えることはありません。
京都駅ビル「大空広場」から最上部だけ明るい京都タワーと比叡山を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
四明岳 | 11.0km | 838m | 京都府京都市左京区 | 都富士 |
大比叡 | 11.4km | 848.1m | 滋賀県大津市 京都府京都市左京区 |
後ろを振り向くと、間近に聳える京都タワーと、その向こうに比叡山が見えました。
この日は京都タワーのLED照明器具が調整された日で、空が明るいため分かりにくいですが、タワーの最上部のみライトアップされています。
よくよく写真を見ると、先端(上)の白い部分だけ光っていることが分かる、かもしれません。
塔体そのものは消灯しているが、最上部のみ点灯している状態は珍しいため、一度、帰宅後、機材を抱えてどこぞの山を登りました。
山の上から京都タワーを眺めてみると、すでにツートンカラーの試験点灯に切り替わっており、あまつさえ、撮影する間もなく通常の白色に戻ってしまい徒労に終わります。
この日は京都駅ビルから京都タワーと大峰山脈を同じ構図に収めて1枚の写真で撮影できましたが、タイミングが良かったのか悪かったのか分かりかねる日でした。
機会があれば、より分かりやすく大峰山脈の高峰を京都駅ビルから撮影したいものです。
以上が2016年3月下旬の話。
ちょっとした小ネタとしては面白いので、この件は記録として残しておこうと考えていましたが、すっかり忘れていました。
先日、2016年7月1日の夜に無告知でオレンジ色にライトアップされた塔体の謎を解明しようと、その翌日、京都タワーを訪れ、係員さんからお話を伺いました。
その際、京都タワーの展望室から大峰山脈まで見えていたため、ついでに京都駅ビルにも立ち寄り、山上ヶ岳や稲村ヶ岳を望遠レンズで撮影。
京都駅ビル「大空広場」からガラス越しに大峯・山上ヶ岳、稲村ヶ岳を遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
阿弥陀ヶ森 | 84.6km | 1680m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡川上村 | |
大普賢岳 | 86.2km | 1780.1m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡川上村 奈良県吉野郡上北山村 | |
竜ヶ岳 | 84.2km | 1725m | 奈良県吉野郡天川村 | |
山上ヶ岳 | 83.1km | 1719.4m | 奈良県吉野郡天川村 | |
稲村ヶ岳 | 84.4km | 1726.1m | 奈良県吉野郡天川村 | |
バリゴヤノ頭 | 85.8km | 1580m | 奈良県吉野郡天川村 | |
熊ヶ岳 | 58.8km | 904m | 奈良県宇陀市 奈良県桜井市 | 音羽三山 |
残念ながら、上の構図の右に連なる弥山や八経ヶ岳の山頂域は雲や空との境目が分かりにくく。
それでも、3月下旬に心残りとなっていた構図で写真を撮影できたことに満足します。
ただ、やはり「大空広場」のガラス越しでは靄がかったような、ぼやけた写真となってしまいます。
駅ビルの4階まで下がれば、「グラフィカル・イルミネーション」で知られる大階段の付近から駅ホーム越しに遠くまで見通せます。
屋上にあたる「大空広場」より高度は下がりますが、ガラス越しではない点が貴重です。
京都駅ビルの大階段付近から駅ホーム越しに大峰山脈の稜線や金剛山、生駒山を望む。
「遠」の字の下方にあたる大普賢岳は明瞭に見えていますが、その右、「脈」の字の下方にあたる弥山や八経ヶ岳の山頂域は曖昧な見え方に過ぎません。
7月上旬に京都市から大峰山脈まで見晴らせる日は貴重ですので、これ以上を望むのは贅沢というものでしょう。
この日、京都タワーの展望室から撮影した写真は上の記事に。
京都駅ビル「大空広場」(OpenStreetMap日本)
「京都駅(キョウトエキ)(きょうとえき)」地上高60m
京都府京都市下京区
上の地図だと撮影地点が分かりにくいと感じる場合は、左上の「情報」→「ベースマップ」→「写真」or「標準地図」に切り替えてみてください。
そのうえで、さらに左下の「+」ボタンでズームすれば、とくに「写真」タイルは立ち位置が非常に分かりやすいと思います(大階段も写っています)。
上の座標の地点より、その西側の窓(約30m~ほど西)が、駅ビルの隅となり、あまり人も訪れず、それでいて遠くまで見通しやすいです。
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