ようやく空気が澄みそうな気配があったので、滋賀県大津市の長等公園から小関越を経て長等山、如意ヶ岳をハイキング。
小関越の頂(小関峠)や三井寺さんから古道「如意越」の整備も進んでおり、やや険しい地点もありますが、快適な山歩きを楽しむことができます。
相変わらず出発時刻が遅く、大津から京都までの山越えは時間を要し、残念ながら日没までに大文字山を登頂できなかったものの、夕暮れ時の如意ヶ岳からは今までに見たことがない美しい光景を望むことができました。
目次
高観音近松寺 三井寺別所
高観音近松寺さん。三井寺別所。上栄町~長等公園。滋賀県大津市。
今年7月に長等公園を訪れた日は小関越から大津大神宮さんを経て長等公園の桜広場まで上りましたが、今回は京阪京津線の上栄町駅(かみさかえまち)を起点として、高観音近松寺さん側から長等公園(ながらこうえん)を上ります。
上栄町駅から高観音近松寺さんに至る車道も延びていますが、近くにある赤十字病院さんの南西端側から階段道を上る、いわば正規の参詣道を利用します。
いかにも10月らしく、高観音さんの上山口にあたる金比羅宮さんの付近では樹木の剪定作業をなさっていました。
やや急ですが、参道の階段を上っていけば、すぐに高観音近松寺さんの前に飛び出ます。
高観音近松寺(たかかんのんごんしょうじ)(近松寺の読みは「こんしょうじ」「きんしょうじ」とも)は古い史料でも頻繁に名前が見える由緒あるお寺さんです。
高観音さんは「長等山(ながらさん)」を山号とする三井寺さん(園城寺)の別所寺院で、三井寺さんの寺領を広く長等山と見なしていた関係もあり、今でも高観音さんや長等公園も含めて「長等山(ながらやま)」と呼ぶ方がいらっしゃいます。
また、東海道(京街道)の西の山を広く「逢坂山(おうさかやま)」と呼んでいた関係で、高観音さんから長等公園、蝉丸神社さんあたりまでを「逢坂山」と呼ぶ方もいらっしゃいます。
ハイカーが思うところの「長等山」や「逢坂山」と、地元の方がおっしゃるところの「長等山」や「逢坂山」は一致しない場合があります。
高観音の眺望
高観音近松寺さんの展望。爽やかな秋晴れの空と琵琶湖。滋賀県大津市。
高観音さんの前の駐車スペースから眼前眼下に浜大津や琵琶湖を望めます。
雲ひとつ無い澄んだ青空の下、高観音さんからは遠く湖北や湖東の山々まで明瞭に見えており、より見晴らしの良い山を選べば良かったかとも思いましたが、長等山で確かめたいこと、気になることがあり、「見たい」と思う欲求よりも、「知りたい」と思う欲求には抗えません。
高観音さんから道標に従って山を上れば、平忠度の歌碑が建つ桜広場に到着します。
現代では高観音さんの前や、桜広場の展望台からの眺めが良いですが、江戸時代頃は「安然和尚の塔」(安然塔)がある高台からの眺めが絶景だったらしい。
安然和尚は近松寺を開いたとされる高僧。
安然塔については上の記事でも取り上げています。
長等公園 桜広場の展望 大津市
琵琶湖、伊吹山地や霊仙山を展望
長等公園の桜広場(桜ヶ丘休憩広場)から琵琶湖、伊吹山地や霊仙山を展望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
金糞岳 | 74.5km | 1317m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県長浜市 | |
霊仙山 | 56.3km | 1094m | 滋賀県犬上郡多賀町 | |
ソノド (霧ヶ峰) | 58.5km | 925.8m | 岐阜県大垣市 | |
鶴翼山 (八幡山) | 25.6km | 271.7m | 滋賀県近江八幡市 | 最高点は約280m |
繖山 (観音寺山) | 31.8km | 432.6m | 滋賀県東近江市 滋賀県近江八幡市 | 最高点は約440m |
桜広場には展望台が整備されており、現状では長等公園内で最も見晴らしが良いスポットだと考えられます。
先ほど訪れた高観音さんから少しばかり視点を高くした眺望と言えるでしょうか。
この広場について、展望台の「長等公園散策マップ」では「桜広場」としていますが、道中の案内図では「桜ヶ丘休憩広場」としており、どちらが正しいのか(正式名称か)よく分かりません。
桜ヶ丘休憩広場を略して「桜広場」なのだろうと勝手に考えています。
爲業の歌合に、故鄕花
小波や志賀の都はあれにしを昔ながらの山ざくら哉
『忠度集』
広場に建つ歌碑や案内板を見るかぎり、桜ヶ丘休憩広場の呼称は平忠度による「さざなみや~」の歌に由来するものでしょう。
東海自然歩道をはじめとして、桜広場からは多くの道に岐れており、高観音さんから安然塔を経て相場山(逢坂山)を登るコースは古くから知られていたようです。
明治時代に尾蔵寺さんや高観音さんのあたりが長等公園として整備され、多くの桜が植樹されるに至った経緯や、忠度歌碑が当地に建てられた経緯は1927年(昭和2年)の『長等の桜』に詳しく。
同誌では現在の桜広場を「高觀音櫻ケ岡」や「櫻ケ岡」「櫻ヶ岡」としています。
上の記事で訪れた日は、いかにも夏らしく、展望台から遠くまで見えず、せいぜい琵琶湖の沖島や奥島丘陵を望んだ程度でした。
昨年、つまり2015年(平成27年)12月にも訪れており、その日は遠く石川の白山まで見通せましたが、撮影した写真は未整理のまま放置しています。
上の写真の構図の左端、つまり金糞岳の左奥に白山の山頂域を遠望できますが、ぎりぎり見える程度に過ぎないので、事前に場所を把握していないかぎりは白山だと認識できないでしょう。
比叡醍醐山地に属する山々からは白山を見通しやすく、ある程度、知識があれば望むことじたいは難しくありませんが、分かりやすい写真を撮影するには霞み具合などの条件が揃う必要があります。
視点を少しずつ左に動かしていけば、まず琵琶湖大橋が見え、さらに左には比良山地や西大津の街並みを見渡せますが、比叡山でも四明岳はやや見えにくいです。
くさつ夢風車や伊吹山を遠望
長等公園の桜広場展望台から伊吹山、沖島、くさつ夢風車を遠望する。滋賀県大津市。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
ブンゲン (射能山) | 74.1km | 1259.7m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県米原市 | |
虎子山 | 71.7km | 1183.2m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 (滋賀県米原市) | |
国見岳 | 72.0km | 1126m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県米原市 | |
大禿山 | 71.6km | 1083m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県米原市 | |
伊吹山 | 67.7km | 1377.3m | 滋賀県米原市 | 滋賀県最高峰 |
尾山 (宝来ヶ嶽) | 29.4km | 220.2m | 滋賀県近江八幡市 | 点名「沖之島村」 |
津田山 (奥島山) | 26.5km | 424.5m | 滋賀県近江八幡市 | 現地道標では「姨綺耶山」 |
冬場の好条件の日の見え方には及びませんが、伊吹山や伊吹山地(近江美濃国境)の山々を遠望できました。
よく見ると、皇子山古墳からも見えていた、津田山(奥島山)の反射板らしき影が写っています。
小さくて分かりにくいですが、白い矢印で示しておきました。
2018年(平成30年)12月、追記。
報道によると、2019年(平成31年)1月15日より「くさつ夢風車」の撤去工事が始まるとのこと。
桜広場の展望台から風車越しに伊吹山を眺望できるのも、あと僅かの話です。
追記終わり。
桜広場から長等公園の入り口とも言うべき大津大神宮さんへ下り、公園北の小関町側から小関越の車道に入り、若林強斎の墓がある五本桜墓地を右手に見送り、百々川を遡って小関越の頂(小関峠)を目指すのが、いわば正規のルートですが、桜広場から長等不動尊さんへ下り、西の階段を上り返せば特別養護老人ホームさん(長等の里)の付近に出ますので、そちらを通していただくと小関峠まで大幅にショートカットできます。
これは逆もしかりで、小関峠側から桜広場を目指す場合、浜大津方面へ下る車道から岐れ、「長等の里」さん方面の車道を上っていけば早いでしょう。
(本記事の執筆時点では、長等の里さんの中を通していただけますが、あくまでも私有地ですので、今後、どうなるか分かりません)
小関越に咲くツリフネソウ
ツリフネソウ(釣船草)のお花。長等公園から小関峠を経て如意越の道へ。
話が長くなってきたので記事を分けます。
続きは上の記事に。
関連記事 2016年10月 如意越・長等山ハイキング
すべて同日の山行記録です。併せてご覧ください。
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長等公園 桜広場(桜ヶ丘休憩広場)(地理院 標準地図)
「長等公園(ナガラコウエン)(ながらこうえん)」標高約167m~
滋賀県大津市
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