昨日、2012年(平成24年)12月29日の話。
Aさんと連れ立って北播磨の千ヶ峰(せんがみね)を登りました。
千ヶ峰は兵庫県多可郡多可町と神崎郡神河町の郡境に所在する三角点1005.2m峰。
中国山地に属する標高1000mを超える山としては、もっとも東に所在する山として知られています。
千ヶ峰を登頂するには多くのコースを選べますが、昨日は神河町の作畑新田を起点とし、水谷東コースから山頂を目指しました。
大晦日にいつもの山に登るでしょうが、地元の山以外ではこれが年内の登り納めとなりそうです。
目次
千ヶ峰を登山 兵庫県多可町・神河町
出発前、京都市では朝のうち雲が広がっていました。
往路の大阪湾周辺では青空が広がっていましたが、播磨灘を離れ、内陸へと進むにつれ、曇りがちの空となり、北播磨の高い山々は雲の中。
千ヶ峰のみならず、その周辺峰の山頂域も雲に隠れて見えないものの、午後には雲も失せるだろうと予想して山へ入ります。
今年はどちらの山も雪が少ないことから、千ヶ峰も例外ではなく、無雪ではないかと考えていましたが、意外なことに、少しとはいえ雪が積もっていました。
もっとも、ごく一部、滑りやすい場所を除けば、とくに問題となるような量ではありません。
急な登り、病み上がりの私が苦戦しますが、なんとか休み休み登ります。
山頂に着く頃には期待どおり雲も失せ、それなりに遠くまで……、そうですね、具体的には淡路島の北部や家島諸島まで見えていました。
千ヶ峰は北播磨では一番高い山(兵庫県が定義する行政区分としての「北播磨地域」最高峰)。
360度、全方向を見晴らせる素晴らしい展望を誇ります。
千ヶ峰の展望・眺望
笠形山と家島諸島を望む
千ヶ峰から笠形山、遠くに播磨灘、家島諸島を望む。兵庫県多可郡多可町、神崎郡神河町。
撮影地点から家島諸島に属する西島の最高標高地点(兵庫県姫路市)まで約67km。
この写真を撮影した時点では、播磨灘に浮かぶ家島諸島は見えていたものの、西島の後方に所在するはずの小豆島は確認できません。
床尾山系を望む
千ヶ峰から床尾山の周辺峰を望む。
撮影地点から東床尾山(兵庫県豊岡市、朝来市)まで約31km。
兵庫県豊岡市、朝来市、京都府福知山市の府県境あたりの山々が写っています。
このあたりの山域を指し、床尾山系と呼ぶ方もいらっしゃるようです。
山頂に着いた当初、氷ノ山方面は雲で隠れていましたが、私たちのすぐ後から登っていらっしゃった方とお話しているうちに、そちら方面も好転。
美しく雪を被った山々、ついつい熱心に撮影してしまいます。
氷ノ山を遠望 兵庫県最高峰
千ヶ峰から兵庫県最高峰の氷ノ山を望む。
撮影地点から氷ノ山(兵庫県養父市、鳥取県八頭郡若桜町)まで約41km。
二ノ丸(氷ノ山三ノ丸)を氷ノ山の一部と見なさず、単独した峰だと見なす場合は、二ノ丸(氷ノ山三ノ丸)が県下の第2位峰となります。
二ノ丸、三ノ丸を氷ノ山の一部と見なす場合は三室山が第2位峰となります。
それにしても、二ノ丸と三ノ丸の呼称の変遷はややこしい……。
実は、この日、千ヶ峰をご一緒したAさんのお父様は、かつて、『山と高原地図』の氷ノ山山域の編集にもお関わりになられた方で、そのあたりの事情をご存じないか、Aさんを介してお尋ねしたこともありますが……。
三室山を遠望
千ヶ峰から兵庫県第2位峰の三室山を望む。
撮影地点から三室山(兵庫県宍粟市、鳥取県八頭郡若桜町)まで約40km。
分かりにくいですが、わずかに頭の先だけ覗いていました。
氷ノ山と異なり、興味を持つ方は少ないかもしれません。
後山を遠望 岡山県最高峰
千ヶ峰から岡山県最高峰、兵庫県第3位峰の後山(板場見山)を望む。
撮影地点から後山(兵庫県宍粟市、岡山県美作市)まで約43km。
兵庫県側からは板場見山とも呼ばれる後山も、その山頂域だけ見えていました。
三室山と同様、たとえ見える条件の日であっても気付かない方が多そうです。
扇ノ山を遠望
千ヶ峰から扇ノ山、鉢伏山を望む。
撮影地点から扇ノ山(鳥取県鳥取市、八頭郡八頭町、若桜町)まで約52km。
大ズッコはやや後ろに見えている山で、扇ノ山から連なっています。
手前に向けて延びている尾根は青ヶ丸の尾根ですが、重なっており、少し分かりにくいかもしれません。
国土地理院によると、扇ノ山の二等三角点「扇ノ山」の読みは「おおぎのせん」であり、「おうぎのせん」ではありません。
「扇」を「おおぎ」と読むケースは珍しいように思います(が、たとえば、苗字の場合、「おおぎ」と読むケースもあるようですね)。
小豆島を遠望 夕景
千ヶ峰から瀬戸内海に浮かぶ小豆島、家島諸島を望む。
撮影地点から小豆島最高峰の星ヶ城山(香川県小豆郡小豆島町)まで約87km。
瀬戸内海側に目を向けてみると、家島だけでなく、その向こうに小豆島まで遠望できるようになっていました。
代わりに、山頂に着いた当初はぼんやり見えていた淡路島方面や、望遠レンズ越しにうっすら見えていた明石海峡大橋の見え方が今ひとつに。
この日、山頂でお話を聞かせてくださった方、おそらく地元の方だと思いますが、山全般についてお詳しく、とくに、播磨、丹波、但馬、六甲あたりの山々の知識を豊富にお持ちでした。
とても参考になり、楽しい時間を過ごせました。ありがとうございました。
千ヶ峰の山頂 雪
千ヶ峰、2012年の山行を締めくくるにふさわしい、素晴らしい山でした。
今回だけでも十分過ぎるほどの展望を得ることができましたが、いずれ、明石海峡大橋が肉眼で明瞭に見える日や、京都方面が好条件の日にも訪れてみたいです。
余談
仙ヶ峰は千ヶ峰か?
千ヶ峰か仙ヶ峰か問題。
仙ヶ峰
播磨国多可郡ノ北方ニアリ。杉原谷村ヨリ一里ニシテ其山頂ニ達ス。全山石英粗面岩ヨリ成ル。標高三千百六十八尺。千ヶ峰
播磨国多可郡ノ北方ニアリ。松井庄村ヨリ二十三町ニシテ其山頂ニ達ス。全山秩父古生層ヨリ成ルモノヽ如シ。標高凡三千尺。『日本山嶽志』
仙ヶ峰(仙ヶ峯)を千ヶ峰の別称や旧称とする説もありますが、1906年(明治39年)の『日本山嶽志』(日本山岳志)では両座を明確に区別しています。
多可郡杉原谷村は千ヶ峰の北東麓~東麓、松井庄村は南東麓~南麓。
標高三千百六十八尺は約960m、標高凡三千尺はおおよそ909mですが、後者は雑な値ですので参考程度。
大井戸峰や飯盛山も標高凡三千尺としています。
千ヶ峰は北播磨? 中播磨? 東播磨?
千ヶ峰の西麓にあたる大畑や作畑、福田新田は、現在は神崎郡に属しますが、古くは多可郡に属しており(福畑村→明治の町村制施行で多可郡越知谷村)、1896年(明治29年)に神崎郡に所属が変更されました。
したがって、かつて、千ヶ峰は全域が多可郡に属する山だったと考えられます。
現在、兵庫県では多可町を北播磨地域、神河町を中播磨地域と区分しており、それじたいは適切だと考えられますが、本記事の冒頭で、千ヶ峰を「北播磨の山」としているのは、こういった経緯によるものです。
播磨国を東西に二分した「東播磨の最高峰」の意だろうとは推測しますが、誤解を招くため、千ヶ峰を「東播磨地域の最高峰」と紹介する記事には(現状では)賛同しかねます。
また、神河町には西播磨地域にあたる宍粟市との市境に千町ヶ峰(標高1141.3m)や暁晴山(標高1077.1m)が所在しており、兵庫県が定義する中播磨地域(神河町、姫路市)の最高峰は千町ヶ峰です。
千ヶ峰(地理院 標準地図)
「千ヶ峰(センガミネ)(せんがみね)」標高1005.2m(二等三角点「千ケ峰」)
兵庫県多可郡多可町、神崎郡神河町
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