滋賀県では唯一となる「美しの森」選定地です。
今年は近畿地方の標高が高い山の紅葉の色づきも早いですね。
春のお花の開花や秋のお花の開花も早く、紅葉や落葉の進みも早い……、今年は全体的に山の季節が前倒しとなっている印象を受けます。
さておき、今を遡ること3ヶ月前、2015年(平成27年)7月20日「海の日」の話。
午後から少し時間が空いたものの、京都から綺麗な海へ向かうには遠く、どこか手近な水辺で夕涼みでもと金勝アルプスへ。
今回の記事は栗東市と大津市に跨る金勝(こんぜ)山地でも、取り上げる方が少ないであろう小ネタを中心に。
目次
滋賀県 金勝アルプス ハイキング
この日は大津市の上桐生(大津市上田上桐生町)から金勝アルプスにアプローチしましたが、休日ということもあり、キャンプ場の周辺は大混雑。
山中の滝で涼むために訪れたものの、日差しが強い夏の午後、山を登る第一歩が踏み出せません。
暑い盛り、熱く焼けているであろう岩山登りは早々に諦め、草津川の上流、オランダ堰堤の付近で水遊びするに留めようと考えましたが、おなじみデ・レーケさんの胸像付近も家族連れでにぎわっており、川辺に近付くことすらままならず。
やはり私の居場所は山の中しかないと再確認し、当初の予定どおり落ヶ滝まで登ることにします。
奥池から落ヶ滝線に取り付いたのは15時過ぎ、気が向けば天狗岩まで登り、夕日を眺めることにしましょう。
大津市 落ヶ滝へ
夏の金勝アルプスをハイキング。シダ茂る落ヶ滝線の沢を登ります。
谷間は蒸し暑く、早くも心が折れそうになりますが、せめて滝まではと。
落ヶ滝。草津川の上流、金勝アルプスでも西の大津市側にあたります。
年によっては落ヶ滝の周辺でスズメバチを見掛けますが、今年は見当たらず。
台風第11号が四国や本州を縦断して、すでに数日が経っていることもあり、滝の勢いも衰えているかと思いましたが、まだまだ豊富な水量。
落ヶ滝は季節によっては水枯れを起こします。
この記事を書いている秋……、まさにこの時期もあやういかもしれません。
短いですが、動画でも。35秒。流れ落ちる水の音量やや大きめ。
台風後の落ヶ滝の水量。
もともと立派な花崗岩の滝ですが、雨の後はとくに迫力が増します。
滝の近くまで寄れば少しは涼しいですが、やはり暑く。
鶏冠山、天狗岩の縦走線まで出れば風も吹いているのではないかと期待しながら山を登ります。
落ヶ滝の上からの景色
金勝アルプス落ヶ滝の上から西向きの眺望、景色。右に愛宕山、左に音羽山。
如意ヶ岳や逢坂山、琵琶湖も見えています。
普段、如意ヶ岳や音羽山から金勝アルプスを眺めていますが、その逆の構図となります。
如意ヶ岳から金勝アルプスを撮影した写真は上の記事に。
音羽山から金勝アルプスを撮影した写真は上の記事に。
この時点では京都方面も晴れており、青空が優勢だと感じましたが、天気予報では夕立が降る、かも、との予想。
湖南アルプスや金勝アルプスのあたりは夕立が多く、局地的な豪雨に見舞われやすいです。
天狗岩方面へ
固定ロープが備わる大きな一枚岩を上り、鶏冠山と天狗岩の分岐へ。
鶏冠山~天狗岩~耳岩~白石峰と連なる南北の尾根は金勝アルプスの背骨とも言える主稜線です。
鶏冠山や天狗岩より西が大津市、東が栗東市で、尾根の一部は両市を分けます。
分岐から南へ向かうと天狗岩(標高点509m)が見えてきました。北から眺める天狗岩。
天狗岩は栗東市の竜王山(三角点604.6m)と並び、金勝アルプスの実質的な主峰です。
金勝アルプスの最高峰は金勝寺さんの北側、俗に金勝寺山や金勝山と呼ばれる約610m小ピークですが、標高点すら持たないため、ハイカーの間ですら知名度はきわめて低く。
この金勝寺山は、金勝寺さんの南側に所在する、点名「金勝山」の三等三角点566.7m峰(小屋ヶ谷山)とは別のピークですが、なかなか紛らわしいようです。
「道の駅こんぜの里りっとう」を挟んで金勝アルプスと対峙する阿星山(693.0m)が栗東市、湖南市の最高峰。
湖南、信楽高原、それに京都山城地域の山々は広域的に大きな山地を成しており、信楽高原まで含めると甲賀市の笹ヶ岳(738.5m)が最高峰です。
※
金勝アルプスの最高峰を竜王山とする報道等は正確性を欠いています。
琵琶湖を眺める
天狗岩へ向かう道中、岩場からの眺め。比叡山、琵琶湖、近江大橋、矢橋帰帆島など。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
牛松山 | 38.2km | 636m | 京都府亀岡市 | 丹波富士 |
愛宕山 | 35.8km | 924m | 京都府京都市右京区 | |
地蔵山 | 37.2km | 947.3m | 京都府京都市右京区 | |
四明岳 | 19.6km | 838m | 京都府京都市左京区 | 都富士 |
大比叡 | 19.3km | 848.1m | 滋賀県大津市 京都府京都市左京区 | 都富士 |
期待どおり稜線上は風通しもよく、7月の暑い時期としては比叡山も愛宕山も色濃く見えていますが、しょせんは夏の空。
それに、先ほどまでと比べても西の空は明らかに雲が増えています。
もう少し空気が澄んでいれば、奇岩を伝いながら天狗岩の上まで登り、風に吹かれながら夕涼みでもと考えていましたが、このあたりで諦めて十九道ダムへ下りることに。
とくに目立った道標や、地形図には破線路すら見当たりませんが、地形図ではこのあたり から、東の走井林道へ直下できるコースがあります。
このコースはマイナなバリエーションルートですが、十九道ダム付近を起点として鶏冠山と天狗岩の中間地点に出る、林道から比高40m未満で金勝アルプスの主稜線まで登ることができるため、知っていれば便利なコースです。
金勝寺林道を経て馬頭観音堂の駐車場から竜王山を登るコースと同様、あまりにも楽すぎるため、ハイキングとしてはどうかと思いますが……。
十九道ダム方面へ
十九道ダム(走井林道)への下山路から鈴鹿山脈の連なりを望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
高室山 | 41.6km | 818m | 滋賀県犬上郡多賀町 | |
鈴ヶ岳 | 42.8km | 1130m | 滋賀県東近江市 滋賀県犬上郡多賀町 | |
御池岳 | 43.3km | 1247m | 滋賀県東近江市 | 鈴鹿山脈最高峰 |
天狗岩 | 45.0km | 1171m | 滋賀県東近江市 三重県いなべ市 | |
日本コバ | 33.4km | 934.2m | 滋賀県東近江市 | |
静ヶ岳 | 42.4km | 1088.5m | 滋賀県東近江市 (三重県いなべ市) | |
竜ヶ岳 | 42.7km | 1099.3m | 三重県いなべ市 (滋賀県東近江市) | |
十二坊 (岩根山) | 9.9km | 405.0m | 滋賀県湖南市 |
木々の合間に鈴鹿山脈でも北部寄りの山々が見えていました。
湖南金勝の天狗岩付近から鈴鹿藤原の天狗岩を眺めています。
日本コバの北尾根に遮られるため、藤原岳の本峰はぎりぎり見えません。
このあたりの山域は、先日、東近江市が選定した「鈴鹿10座」北部の山々でもありますが、雨乞岳に遮られるため、西側から御在所岳が見える山は少なく、「鈴鹿10座」すべてを一望できる場所は限られています。
鈴鹿10座の選定|東近江市ホームページ
https://www.city.higashiomi.shiga.jp/machizukuri_kankyou/moritomizuseisaku/1003959/1003961.html
すっかり曇ってしまった西の空と比べると、自身がいる金勝山の上空や東の空は晴れ間が見えています。
どうやら夕立の心配は杞憂に終わりそうです。
竜王山と竜王山張出峰 竜王山はどこ?
写真では中央付近の目立つピーク、俗に竜王山張出峰や北峰などと呼ばれている標高約580m小ピークは、地形図ではこのあたり 。
この張出峰に遮られるため、金勝アルプスの主稜線や北西側の主だった地点からは竜王山の山頂が見えにくい、あるいは見えません。
厳密に申し上げると、近すぎるため、撮影地点からは張出峰の山頂も見えません。山頂付近が見えています。
余談と追記。
古くは張出峰(北峰)こそが竜王山(龍王山)と呼ばれていましたが、後に現在の山頂に呼称が移りました。
1954年(昭和29年)測図、1956年(昭和31年)発行の二万五千分一地形図「三雲」では張出峰(北峰)に「龍王山」と山名が示されていますが、1968年(昭和43年)改測、1971年(昭和46年)発行の二万五千分一地形図「三雲」では現在の山頂に「竜王山」と示されるようになり、1963年(昭和38年)には新たに三角点(四等三角点「竜王山」)も設置されています。
地形図を見比べるかぎり、どうやら張出峰(北峰)周辺が崩落したのか、地形が変化したようです。
もちろん、私が生まれる前の話ですので、詳細は分かりかねます(ので、戦前生まれで1960年頃の記憶をお持ちの方からお話を聞きたい)。
1959年(昭和34年)に発生した伊勢湾台風の目が湖南の上を通過しましたが、その影響は?(台風の目の通過現象で大津や湖南の雨量は少なかった)
追記終わり。
眼下に走井林道が見えてきました。あと少し。
いかにも金勝の山らしく、どこもかしこもゴツゴツした岩場ばかりです。
林道を少し北へ下り、密かな夕涼みスポットである十九道ダムに立ち寄りましたが、大学生らしき方々でにぎわっていました。
ダムは諦め、ダムの奥の白糸の滝へ。
栗東市 白糸の滝へ
十九道ダムの上、白糸の滝へのハイキングコース。
階段は急ながら、よく整備された歩きやすい道ですが、昨年、この時期に訪れた時はスズメバチに追い回されました。
落ヶ滝と同様、今年は見掛けず。
白糸の滝。細川の上流、金勝アルプスでも東の栗東市側(金勝山側)にあたります。
すでに薄暗く、山中はヒグラシの鳴き声が響いていました。
短いですが、動画でも。35秒。
台風後の白糸の滝の水量。
流れ穿つ水の音と、山中にこだまするヒグラシの鳴き声。
名前が示すように、普段は控えめで細々とした滝ですが、台風の後ということもあり、この日は勢いがありました。
十九道ダムまで引き返し、林道から栗東のトレセン方面へ下山します。
走井林道を歩いて下山
十九道ダムのハイキングコースを示す案内標識。栗東市。
分かりにくいですが、右奥にちらっと見えているゲートのあたりが十九道ダムの入り口。
標識をよく見ると、元は「栗東町」だった字を「栗東市」に上書きした痕跡がありますね。
市制へ移行した2001年(平成13年)以前に設置された、やや古い時代の標識だと分かります。
十九道ダムからの下山時は正面(北)に「近江富士」三上山が見えていました。
とくに目立つ山容ですので、この秀麗な郷土富士(ふるさと富士)の姿を見落とすことはないでしょう。
馬頭観音堂駐車場の展望台や竜王山から、栗東のトレセンや風景と併せて三上山を綺麗に見渡せます。
19時前、無事に金勝アルプスから下山。「オムロン びわ湖水源の森」の案内看板。
この看板は山中でも見ることができますね。
さらに直線距離で2.3kmほど北へ下れば、金勝公民館(コミュニティセンター金勝)のバス停。
草津駅、あるいは栗東駅行きの帝産バスが遅い時間帯まで運行しており、トワイライトハイカーにも便利です。
以上、2015年7月の話。
金勝アルプスからの展望・眺望
この日は天狗岩まで登らなかったこともあり、金勝アルプスが誇る広々とした展望の写真を撮影していません。
ダイナミックな景色と奇岩も金勝アルプスの醍醐味。
過去、同じ季節に他の方と縦走した日に撮影した写真から1枚だけ。
撮影時期は2012年(平成24年)7月。。
花崗岩の巨岩・奇岩の「アルプス」の景観
金勝アルプス耳岩の下、天狗岩線・水晶谷線からの眺望。醍醐山地、新名神高速を望む。2012年7月。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
如意ヶ岳 | 18.2km | 472m | 京都府京都市左京区 | |
音羽山 | 14.8km | 593.1m | 京都府京都市山科区 (滋賀県大津市) | |
千頭岳 | 13.7km | 600m | 京都府京都市伏見区 滋賀県大津市 | |
本宮ノ峰 (奥醍醐山) | 15.6km | 476.0m | 京都府京都市伏見区 | |
喜撰山 | 16.9km | 415.9m | 京都府宇治市 | |
堂山 | 6.3km | 384.0m | 滋賀県大津市 | 湖南アルプス |
(耳岩~)天狗岩線・水晶谷線の美しい花崗岩帯。
地形図に破線路で表示されるコースとしては、耳岩から天狗岩線の下りは金勝アルプスの中でも険しいコースで、とくに雨上がりは滑りやすく危険です。
分かりにくいですが、千頭岳の左後方には京都西山のポンポン山の影がうっすらと写っており、おおむね雲に隠れて見えませんが、如意ヶ岳の後方には愛宕山がそびえています。
愛宕山と如意ヶ岳(大文字山)の合い間には京都盆地が所在していますが、金勝アルプスから盆地の地表は確認できません。
如意ヶ岳の手前には琵琶湖に架かる近江大橋が、眼下には金勝山トンネルに入る直前の新名神高速道路が写っています(追記しておきますと、当該区間も後に6車線化されました)。
あえて場所は示していませんが、すぐに見つかるでしょう(から、探してみてください)。
追記
「日本美しの森 お薦め国有林」に選定
2017年(平成29年)、林野庁により、「日本美しの森 お薦め国有林」が全国で93箇所選定されました。
滋賀県からは、「近江湖南アルプス自然休養林」が選定されています。
「近江湖南アルプス自然休養林」は金勝アルプスの広い範囲が含まれており、現状、滋賀県では唯一の「美しの森」選定地です。
「花崗岩の巨岩・奇岩の『アルプス』の景観と琵琶湖の眺望」が特徴として挙げられており、これからも、本記事でも紹介しているような風景・光景が親しまれ続けることを願います。
湖南アルプス側の山行記録は上の記事などに。
こんぜめぐりちゃんバス
栗東市「こんぜめぐりちゃんバス」と帝産バスの「金勝山相互乗車券」を利用すると、「手原駅~コミュニティセンター金勝~金勝寺 ~竜王山~天狗岩~落ヶ滝 ~上桐生~草津駅」といったハイキングコースを安価、かつ容易に周ることができます。
「こんぜめぐりちゃんバス」は季節運行便で、今年の秋季便は「2015年(平成27年)10月3日~11月29日の土日祝のみ」の運行です。
時刻表
往路 手原駅南口 8:30, 10:00, 13:00 発
復路 金勝寺 12:00, 14:00, 16:00 発
2024年
2024年(令和6年)の「こんぜめぐりちゃんバス」運行予定。
2024年4月13日~6月30日の土日祝
2024年9月14日~12月1日の土日祝
2023年
2023年(令和5年)の「こんぜめぐりちゃんバス」運行予定。
2023年4月8日~6月25日の土日祝
2023年9月2日~11月26日の土日祝
2022年~2016年
金勝アルプス 白糸の滝(地理院 標準地図)
「白糸の滝」標高約340m~
滋賀県栗東市
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