そろそろ5ヶ月前の話となりそうですが、今年、2015年(平成27年)2月の話。
滋賀県と京都府を分ける比叡醍醐山地でも、とくに醍醐山地の北端にあたる音羽山を登山しました。
大津市の鶴の里、池の内公園を起点として音羽山に取り付き、関電巡視路から送電鉄塔の琵琶湖展望地へ。
音羽山の展望地から遥か彼方の山まで見通せるか調査した話は前回の記事に。
この日はどちらかと言えば遠くまで見えやすい日で、一緒に山を登ったAさんと、琵琶湖を越えた先、湖北や鈴鹿に対する展望、遠景を楽しみます。
Aさんからお茶をいただきながらのんびり過ごしていたら、あっという間に夕暮れ時に。
いわば音羽山の北東尾根コース、送電鉄塔の展望地から音羽山の山頂までは直線にして約1.9km、比高にして約360m、撮影機材を担いだ私の足で約40分ほど要します。
日没までには登頂できそうですが、いつも通り、出発時刻が遅かったこともあり、さほど時間的な余裕はありません。
送電鉄塔の展望地から加賀白山が肉眼でも浮かび上がるように見えていましたが、登頂を果たす頃には北の低い空は白く霞んでおり、私の目では遠くの雪山と霞み空の境目を見分けることが困難に。
ですが、湖北方面にレンズを向けて撮影した写真をその場で確認すると、白山も明瞭に写っていました。
目次
大津市・京都市 音羽山の展望・眺望
山頂から湖北観望
音羽山の山頂から琵琶湖、琵琶湖大橋、湖北や西美濃の山々を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
上谷山 | 85.1km | 1196.7m | 滋賀県長浜市 (福井県南条郡南越前町) |
三周ヶ岳 | 88.3km | 1292.0m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 |
比叡山から逢坂山、音羽山にかけては白山を見通しやすく、湖北の山々の向こうに白山が見える日があります。
場所を選びますが、私にとって馴染みがある如意ヶ岳(大文字山)の展望地からも望むことができます。
見晴らしが良いことで知られる音羽山の山頂は、先ほどまで滞在していた送電鉄塔の展望地のような東向きの展望、つまり、鈴鹿山脈や湖南に対する展望は期待できませんが、眼下に京都盆地や山科盆地を眺望できます。
また、山頂からは琵琶湖でも西寄りにあたる地域が見えやすく、標高が高い分、白山に対する見通しは送電鉄塔の展望地よりも優れています。
金糞岳に夕日が当たり、心持ち白山が見えやすく感じた際に撮影した写真を。
白山遠望 比較用・音羽山の山頂から
音羽山の山頂(京都市山科区)から琵琶湖の向こうに加賀白山を遠望する。
山頂(三角点)は東海自然歩道のコースや京滋の府県境から微妙に外れており、僅かながら全域が京都府側(京都市側)に所在します。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
四塚山 | 155.8km | 2530m | 石川県白山市 | |
七倉山 | 155.9km | 2557m | 石川県白山市 | |
大汝峰 | 155.4km | 2684m | 石川県白山市 岐阜県大野郡白川村 | |
御前峰 (白山) | 155.0km | 2702.1m | 石川県白山市 岐阜県大野郡白川村 | 石川県最高峰 両白山地最高峰 |
別山 | 150.1km | 2399.3m | 岐阜県高山市 岐阜県大野郡白川村 石川県白山市 | |
白倉岳 (白倉ノ頭) | 76.8km | 1270.7m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県長浜市 | |
金糞岳 | 77.4km | 1317m | 岐阜県揖斐郡揖斐川町 滋賀県長浜市 |
音羽山の山頂からは別山が見えます。
ただし、比叡山四明岳の展望地と異なり、福井県最高峰の打波ノ頭(越前三ノ峰)は見えません。
先に送電鉄塔の展望地から撮影した写真と比較してみましょう。
上の記事で紹介している撮影スポットです。
白山遠望 比較用・鶴の里コースの中腹から
加賀白山と「くさつ夢風車」を音羽山「鶴の里・池の里コース」(滋賀県大津市)から遠望する。
この撮影地点からだと白山御前峰まで153.2km。
こちらは滋賀県側(大津市側)にあたりますが、標高が低い分、別山がほぼ見えません。
また、金糞岳を基準として、ほぼ同じ構図で撮影していますが、稼働を停止している烏丸半島の風力発電や、近江八幡市の沖島が写り込むか、見切れるかの違いもあります。
別山は見えなくなりますが、伊吹山や霊仙山まで構図に含むことができるため、個人的にはこちらからの眺めも捨てがたいです。
視点を左に。
比良山地の山並みが目立ちます。
追記 くさつ夢風車が撤去されることに
2018年(平成30年)12月、追記。
報道によると、2019年(平成31年)1月15日より「くさつ夢風車」(草津の風車)の撤去工事が始まるとのこと。
音羽山から風車越しに金糞岳や白山を眺望できるのも、あと僅かの話です。
追記終わり。
比良山地と西大津を望む
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
権現山 | 23.9km | 996m | 滋賀県大津市 | |
蓬莱山 | 26.0km | 1173.9m | 滋賀県大津市 | |
打見山 | 26.5km | 1108m | 滋賀県大津市 | |
堂満岳 (暮雪山) | 29.7km | 1057m | 滋賀県大津市 | |
カラ岳 | 32.0km | 1030m | 滋賀県大津市 滋賀県高島市 | 標高の値は 10mDEMによる |
釈迦岳 | 31.9km | 1060.1m | 滋賀県大津市 (滋賀県高島市) |
いわゆる大津(浜大津)は見えず、西大津以北や志賀が見えています。
大津京、皇子が丘の周辺、イオン西大津店(→2017年4月にイオンスタイル大津京と改称→2024年1月に一時閉店)やファーストタワー大津MARY(超高層マンション)の姿も。
音羽山からは大津港で行われる花火大会(びわ湖大花火大会)の一部が見えますが、山頂ではなく、山頂の北、東海自然歩道上の琵琶湖展望地から眺めるほうが少しは近く感じるでしょう。
南比良の主峰である蓬莱山は見えますが、比良山地全体の最高峰である奥比良の武奈ヶ岳は見えません。
上の写真ではやや分かりにくいですが、「びわ湖バレイ」は打見山のロープウェイ駅だけではなく、蓬莱山のリフト駅も明るく光っています。
カラ岳の比良無線中継所は見えているような見えていないような。
さらに視点を左に。
比叡山と皆子山を望む
音羽山の山頂から夕暮れ時の「都富士」比叡山や京都府最高峰の皆子山を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
雲取山 (二ノ谷山) | 23.8km | 911.0m | 京都府京都市右京区 | |
地蔵杉山 | 23.8km | 899m | 京都府京都市右京区 | |
皆子山 | 25.1km | 971.3m | 京都府京都市左京区 滋賀県大津市 | 京都府最高峰 |
四明岳 | 10.0km | 838m | 京都府京都市左京区 | 都富士 |
大比叡 | 10.0km | 848.1m | 滋賀県大津市 京都府京都市左京区 |
四明岳の左手前には比叡平が、大比叡の右手前には宇佐山が見えています。
音羽山から比叡山を眺めると、大比叡と四明岳から成る双耳峰であることが分かりやすく、また、大比叡、四明岳、それぞれの正確なピークポイントを近くから確認できる点にも素晴らしさがあります。
かつての回転展望閣よりやや東に四明岳の標高点838mが所在しますが、写真でもそのあたりが高いと分かりますね。
比叡山の中腹にはドライブウェイが見えており、夢見が丘の周辺やロテル・ド・比叡さんが写っています。
ロテルは今月(2015年7月)から星野リゾートさんの一員としてリニューアルされました。
少し前から京阪グループの手を離れ、星野リゾートに業務委託されていたことは存じていましたが、7月から名称も「星野リゾート ロテルド比叡」と改められ、ホテルの名前から「中黒」が失われたようです(→2020年3月で星野リゾートとの契約が満了し、4月からホテル京阪の運営に)。
かなりの余談
ケーブル比叡駅の比叡山ホテル&お化け屋敷
ケーブル比叡駅の付近(南東側の斜面上)には、かつて、ロテル・ド・比叡(の前身の比叡山国際観光ホテル)とは別の、いわゆる比叡山ホテル(叡山ホテル)がありましたが、このホテルは戦時徴発で解体され、建物の木造部分は運び出されて移築されました。
京都府久世郡寺田村(現在の城陽市)に新設された軍需工場(島津製作所 寺田工場)の寄宿舎として移築されたとも、一部が三重県鈴鹿市の海軍関連施設(鈴鹿海軍工廠 第一会議所)として移築され、戦後、志摩観光ホテルのロビー棟などに転用されたともいわれますが、戦時中のことで混同が見られます。
呼称については、比叡山ホテルを設計した村野藤吾と親交があり、村野の紹介で1939年(昭和14年)8月に宿泊した板垣鷹穂の随筆集『造形文化と現代』所収「新京阪記」や、あるいは当時の『建築年鑑』 [1]では「比叡山ホテル」としていますが、「叡山ホテル」とする例もあります。
近年、比叡山上にあった桜花の発射基地の話は広まっても、山中に所在したホテルの話は忘れ去られるいっぽうです。
戦後、ホテルの跡地を利用して作られたのが夏季キャンプ場やお化け屋敷ですが、怖い(怖すぎる)と評判だったお化け屋敷のことをご存じの方も少なくなりました。
跡地には藪や茨を漕いで何度も訪れていますが、当然ながら、私も営業時の姿は知りません(1960年代まで当地で営業していたらしい)。
かつては比叡山頂パラダイス(あるいは叡山パラダイス)とも呼ばれていたようです。
その後、お化け屋敷は四明岳の山頂(比叡山頂遊園地)に移り、さらに時は流れ、その2代目お化け屋敷も失われ、今はガーデンミュージアム比叡となっています。
’00年代以降に他の方々と何度か跡地を訪れて調査していますが、下の写真を撮影した2012年(平成24年)11月の時点では、廃墟の中に遊具などの残骸が残っていました。
山中でひっそり眠る比叡山(四明岳)の比叡山ホテル跡地周辺(叡山ホテル跡)。2012年11月。
夏季の納涼施設として、比叡山頂パラダイス(叡山パラダイス)とも。
他の方による2005年(平成17年)の山行記録 に見える「昔は、このあたり(ケーブル比叡駅のあたり)に『お化け屋敷』があったはずだが~」の場所ですね(そのすぐ横手の山上)。
また別の方によるブログ記事が、お化け屋敷の営業時の光景についてとてもお詳しく、当時の駅周辺のお写真も掲載なさっていましたが、いつの間にやらネット上から消えてしまいました。
上の写真に写っているのは基礎のコンクリートですが、土台の上に立てば木々の合間から愛宕山などが見え、藪が失せればテラス状の展望台になりそうです。
これを利用した小規模なローラースケートリンクがあったらしい、といったお話を他の方から伺いましたが、これは誤りか記憶違いがあるかもしれません。
なぜだか、比叡山のお化け屋敷は滋賀県に所在したという誤った話が広まっているようですが、所在地は京都市左京区です。
整理の都合で記事を分けます。
続きは上の記事に
関連記事 大津市・京都市 音羽山から展望ハイク
すべて同日の山行記録です。併せてご覧ください。
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- 音羽山から北アルプスの乗鞍岳まで見える? 京都市・大津市
- 音羽山から白山を琵琶湖越しに遠望 / 比叡山ホテルの話
- 音羽山の夜景と夕景 台高山脈や大峰山脈を遠望 京都・大津
音羽山(地理院 標準地図)
「音羽山(オトワヤマ)(おとわやま)」標高593.1m(593.2mから改定)(三等三角点「小山」)
京都府京都市山科区、滋賀県大津市
脚注
- 建築學會(建築学会)が発行した1938年(昭和13年)の『昭和十三年版 建築年鑑』に、
昭和12年度建築意匠界のき收よ穫としては、まづ次の如きが擧げらるべきであらう。宇部市民舘(宇部市、村野藤吾建築事務所)、
(中略)
比叡山ホテル(京都、村野藤吾建築事務所)、
(後略)
『昭和十三年版 建築年鑑』
(※原文まま。「き收よ穫」は「よき收穫」(収穫)の誤植と考えられる)とあり、掲載される写真にも「比叡山ホテル」とある。『建築年鑑』誌は昭和十二年版~昭和十七年版まで出版された。建築學會は日本建築学会の前身。私自身は未見ですが、板垣鷹穂によると、『國際建築』(国際建築)誌でも比叡山ホテルの写真を掲載していたらしい。[↩]
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