熊尾寺山ハイク 雨の森展望台から淡路島を遠望 海南市 藤白山脈

2013年(平成25年)5月、ゴールデンウィークさなかの話。
この日は午後から和歌山県海南市の熊尾寺山をトワイライトハイキング。
天狗岳を東端に発し、大峰山から生石高原を経て、長峰峠、白髪峠、巽山、鏡石山、釜中越、白倉山、そしてやがては有田川の河口付近へと落ちる長峰山脈の主稜線に対し、鏡石山から分かれ、鯛ノ峰、熊尾寺山、藤白山へと連なる支稜は藤白山脈とも呼ばれています。

熊尾寺山と雨の大明神(雨の森大明神)

熊尾寺山の山頂の北、標高点423m峰の周辺は開けた展望地となっており、北東向きから西向きにかけての見晴らしがよく。
雨の大明神さん(雨ノ大明神、雨の森大明神とも)が祀られるその地は「森林公園 雨の森」として整備されており、林道を利用して上がることもできるため、ツーリングで訪れる方も少なくありません。
過去に何度か「雨の森」の展望台を訪れたときは、うっすらと淡路島の南部が見えるが、より遠くまで見えるほどではなく、そう悪くもないが、良くもないといった日が多かったのですが、この日の展望台からは、この時期としては遠くまで条件よく見えていました。

雲山峰から剣山地に沈む夕日、剣山、三嶺を望む 和歌山市 2012年12月

雲山峰 夕日と夜景 四国の剣山や三嶺を和歌山から遠望

2013.02.16

当地でお祀りされる雨の大明神さんについては、かつて、(下の写真にも写る)雲山峰でお祀りされていた雨ヶ明神さん(八大龍王社)と同様、雨乞い山としての性質を示しているか、あるいは修験の山だった可能性を示すと考えています。

「森林公園 雨の森」展望台の眺望

金剛葛城の山々を眺望

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から龍門山、遠くに金剛山を望む 海南市 2013年5月
熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台(和歌山県海南市)から龍門山、遠くに金剛山を望む。
撮影地点から金剛山地最高峰の金剛山(奈良県御所市)まで51.0km。
和泉山脈最高峰の南葛城山(嵯峨谷ノ峰)(大阪府河内長野市、和歌山県橋本市)まで37.0km。

現状、これより右(東)は見えません。
視点を左(北)へ。

和泉山脈を望む

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から和泉山脈の山々を望む 海南市 2013年5月
熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から和泉山脈の山々を望む。
撮影地点から和泉葛城山(和歌山県紀の川市、大阪府岸和田市、貝塚市)まで29.6km。

よくよく見ると、雲山峰の肩の向こうになにやら山の影が……、六甲山ですね。
(高峰を対象とする場合を除けば、)北向きの遠望は不利となる例が多く、ましてや間に海を挟んでいることもあり、六甲山も頻繁に見えるわけではないと思います。

雲山峰の向こうに六甲山や摩耶山を遠望

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から雲山峰の向こうに六甲山を望む 2013年5月
熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から雲山峰の向こうに六甲山を望む。
撮影地点から紀泉アルプス最高峰の雲山峰(和歌山県和歌山市)まで18.1km。
六甲最高峰(六甲山最高峰)(神戸市北区、東灘区)まで71.0km。

和歌山市の最高峰でもある雲山峰の右肩に六甲山、左肩に摩耶山という絶妙な位置関係です。
さらに視点を左に動かすと、紀泉の鞍部、つまり孝子峠の向こうに、大阪湾の海面、淡路島北部の山々も見えていました。

和歌山市の夕景を望む

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から大阪湾、淡路島、和歌山市の夕景を望む 2013年5月
熊尾寺山「雨の森展望台」から大阪湾、淡路島、和歌山市の夕景を望む。
撮影地点から汐鳴山(兵庫県淡路市)まで55.0km、平山(大阪府泉南郡岬町)まで21.7km。

名草山の向こうに見えている街並みは、改めて申し上げるまでもなく和歌山市の中心部で、平山との間には和歌山城の周辺が見えています。
大阪湾の海面ははっきり写っていますが、淡路風力発電所(城ノ瀬山の右手)の風車を望むのは難しいでしょうね。
汐鳴山の右手が淡路島の北端にあたりますが、「森林公園 雨の森」の展望台から明石海峡を望むことはできません。

「和歌山県 朝日夕陽百選」の夕陽

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から夕日を望む 和歌山県海南市 2013年5月
熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から海南市の夕景、沈みゆく夕日を望む。
この展望台からは、夏に和歌山マリーナシティで開催される「スターライトイリュージョン」の花火も観賞できるでしょう。

「和歌山県 朝日夕陽百選」に選ばれているだけのことはある、美しい景色。
海南火力発電所の2基の煙突の間を夕日が照らしています。

海南市の夕景 淡路島と夕日を望む

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から夕日を望む 山名、島名の地名表示有 2013年5月
山名、島名の地名表示を加えた展望図。
撮影地点から淡路島最高峰の諭鶴羽山(兵庫県南あわじ市)まで40.2km。

四国、沼島、紀伊水道、淡路島、紀淡海峡、友ヶ島、いずれも浮かび上がるように見えています。
淡路島の上の雲が気になりますが、なかなかの好条件ではないでしょうか。

整理の都合で記事を分けます。

熊尾寺山「森林公園 雨の森」展望台から四国、紀伊水道、淡路島と夕日を望む 海南市

雨の森展望台の夕日 紀伊水道の夕景 海南から四国遠望 夕陽百選

2013.05.06

続きは上の記事に。

余談

熊尾寺山の読み くまおじやま? くまのおでらやま?

熊尾寺山の読みについて、ハイカーの間では「くまおじやま」と読まれているようですが、個人的に、その読みには疑問が残ります。
二等三角点「引尾(ひきお)」の「点の記」に目を通してみると、1901年(明治34年)に三角点を設置した当時の所在地名は「和歌山県海草郡仁義村大字引尾字熊ノ尾寺」(→海草郡下津町大字引尾字熊ノ尾寺→海南市下津町引尾)であり、点名は大字の「引尾」に由来することが分かります。
山名は小字の「熊ノ尾寺」に由来するようですが、京都など各地の地名に見える「松尾(まつのお)」、それに、海南市と和歌山市を分ける「船尾山(ふのおやま)」のように、こちらも「くまのお」が適切な読みではないかと考えています。
その場合、「くまのおでら」であるか「くまのおじ」であるかは分かりませんが、一般的な地名の訓読み(大和言葉)としては前者でしょうか。
海南・紀伊路と言えば、いわゆる熊野王子(くまのおうじ)との関係も気になるところで、機会があれば地元の方からお話を伺いたいものです。
熊野九十九王子でも、藤代王子はとくに五体王子として知られていました。

本件で追記しておきます。
1938年(昭和13年)の『日本地名大辭典 第5巻』(日本地名大辞典)の「仁義村」に「東北隅に熊ノ尾寺山(五四三米)あり。」と見えます。
仁義村の東北隅に所在する標高543mの熊ノ尾寺山は現在の熊尾寺山ですので、本来は「ノ」が入る表記や読みではないかとする私の見解を補強するものです。
また、国土地理院が提供する「電子国土基本図(地名情報)」では、熊尾寺山について、「名称のよみ」を「くまおでらやま」、「名称のローマ字」を”Kumaodera Yama” としています。
他の記事でも指摘しているように、地名情報の読みは誤りと考えられるケースが混在しており、あまりあてになりませんが、いずれにせよ、「くまおじやま」と読むのは苦しいように思います。
追記終わり。

関連記事 「森林公園 雨の森」展望台からの夕景、夜景

熊尾寺山(地理院 標準地図)

クリック(タップ)で「熊尾寺山」周辺の地図を表示
「熊尾寺山」
標高542.9m(二等三角点「引尾」)
和歌山県海南市

ABOUTこの記事をかいた人

Maro@きょうのまなざし

京都市出身、京都市在住。山で寝転がりながら本を読むか妄想に耽る日々。風景、遠望、夕日、夜景などの写真を交えつつ、大文字山など近畿周辺(関西周辺)の山からの山岳展望・山座同定の話、ハイキングや夜間登山の話、山野草や花、野鳥の話、京都の桜や桃の話、歴史や文化、地理や地図、地誌や郷土史、神社仏閣の話などを語っています。リンク自由。山行記録はごく一部だけ公開!