2016年(平成28年)5月の初め、少しだけ時間が空いたので大文字山や如意ヶ岳を登山。
森林の伐採作業に伴い林道が延伸されたため、大文字山はコースによっては別物のような姿となりました。
もっとも、スギやヒノキが払われたことにより、遠くから林床を見通しやすくなり、やや明るい雰囲気になったとも言えます。
見回りがてら、あてもなく山中を歩き、今年もモチツツジとヤマツツジの自然交雑種を探しますが、昔から大文字山のモチツツジは妙に花期が遅く、すでに開花が進んでいる鷹峯や氷室あたりの山とは展開に差を感じます。
大文字山に咲くウラシマソウ(浦島草)。
ウラシマソウの名前の由来となった「浦島太郎の釣り糸(釣り竿の糸)」が長く伸びています。
話は変わりますが、今年の1月、お参りがてらに深禅院跡比定地を訪れてみたら、伐採作業のため、立入禁止となっていました。
大文字山の山中深くに眠る如意寺の子院、縁あって年始などに見回っています。
2013年(平成25年)1月の様子は上の記事に。
2014年(平成26年)1月の様子は上の記事に。
2015年(平成27年)1月の様子は上の記事に。
より厳密に申し上げるのであれば、深禅院は如意寺の子院である西方院の内として扱われていたようです。
『三井續燈記』(三井続灯記)では、如意寺内西方院の寺領として、西方院本堂、赤龍社(雨社の前身と考えられています)、閼伽井屋、浴堂などと並んで深禅院如法堂の名が見えます。
『三井續燈記』の描写をそのまま受け取るのであれば、深禅院如法堂は独立した子院ではなかったと考えられます。
深禅院跡の五輪塔。大文字山(如意ヶ岳)の山中にて。2009年(平成21年)2月撮影。
手元に残る五輪塔の写真では上の写真が一番古いかもしれません。
これは2008年(平成20年)頃に私が掘り起こし、そのあたりに立てておいたものですので、2007年(平成19年)以前に、この立ち位置、この状態で撮影した写真は存在しないでしょう。
以降、毎年1月頃に記録として写真を撮影しています。
如意寺子院・深禅院跡の五輪塔。伐採前の状況。2015年12月撮影。
お参りがてら、昨年12月末に訪れた時は問題なく通行できました。
この五輪塔は初期の如意寺の遺構ではなく、後世(15~16世紀以降)に再興された際の遺物だと考えられます。
以前から何度か申し上げていますが、戦乱で如意寺が失われた後、江戸時代にも如意越の道は利用されており、そのコース上に位置する雨社などが再興されたのでしょう。
大文字山で森林伐採作業の注意・案内。深禅院跡方面は通行止に。2016年1月撮影。
2016年1月に如意越の山道を歩いていたら、伐採作業中につき通行禁止となっていました。
この先にある深禅院跡の様子が心配です。
深禅院跡の間伐。遺跡地図が掲示。京都市。2016年1月撮影。
上の写真でモザイク処理しているのは業者さんの電話番号を消したためで他意はありません。
よく見てみると、遺跡地図のコピーが合わせて掲示されており、ここが深禅院跡比定地であることを把握していらっしゃるようでした。
当然と言えば当然ですが、これなら安心できます。
伐採作業や、その搬出作業により、北山でベニバナヤマシャクヤクなどの希少種が群生地ごと消滅する事例を何度も見てきました。
これは周知不足によるところが大きいですが、今回の深禅院跡比定地のように、伐採業者さんが正しい知識をお持ちであることに感激します。
そして……。
如意寺子院・深禅院跡の五輪塔。間伐後の現況。京都市。2016年5月撮影。
2016年5月現在の状況です。
五輪塔は埋め戻されるかと思いましたが、そのままの位置に残りました。
風化を避けるため、本来は地中で眠るほうがよいのかもしれませんが、なんだかしのびなく。
念のために申し上げておきますが、ウラシマソウの写真は深禅院跡で撮影したものではありません。
深禅院跡の付近にはチャノキ(茶の木)があり、過去に人為的に植えられたことが窺えます。
2016年5月
こちらにも、いちおう追記。
今まで、如意寺子院の大慈院・西方院跡推定地とされてきた地点(大文字山の山頂から見て南0.3kmほどの地点に所在する平坦地や谷間周辺)が、どうも、いにしえ幻の寺院扱いを受けてきた「檜尾古寺(ひのお)」の跡ではないかという話になっているようです。
随分昔の話ですが、当地にIさんを案内したことが懐かしく思い出されます。
その頃は草木をかき分けて訪れましたが、近年は伐採や食害の影響で藪が薄れており、周辺の調査が進んだとか……。
素晴らしい話ですね。現地で調査にあたられた方々に敬意を表します。
大文字山(地理院 標準地図)
「大文字山(ダイモンジヤマ)(だいもんじやま)」標高465.3m(三等三角点「鹿ケ谷」)
京都府京都市左京区(山体は山科区に跨る)
「如意ヶ岳(ニョイガタケ)(にょいがたけ)」
標高472m
京都府京都市左京区(山体は滋賀県大津市に跨る)
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