ただでさえも多くのハイカーさんらで山がにぎわうゴールデンウィーク。
白いお花やピンクのお花で知られる山は避け、ここなら人が来ないだろうという山へ向かうことに。
京都北山でも少しばかり険しい奥山で、あまり訪れる方のいない山域です(念のために申し上げておきますが、芦生ではありませんよ)。
明確に定まった登山道やハイキングコースもなく、適当に山を登り、名もなき尾根を伝い、最後は急斜面を滑り落ちるように大きな谷へと下りました。
私の期待どおり、山の上では誰とも出会うことはなかったものの、それと引き換えに、目立つお花と出会うこともないだろう……、と予想していましたが、意外なことに、私好みの可憐なお花との邂逅が待ち受けていました。
結果的に山野草観察を兼ねたトレッキングとなり、ちょっとした逃避、息抜きとしては十分すぎる山行に。
京都北山のルイヨウボタン。自生環境。開花直後。
荒れた林床に多くのルイヨウボタン(類葉牡丹)がお花を付けていました。
ルイヨウボタンは林床に点在するものだと考えていましたが、比較的近い距離に密集するように咲いている光景は壮観です。
やや分かりにくいですが、上の写真の右奥や左奥、左側にも群生しており、あたり一面、ルイヨウボタンだらけでした。
疲れていたことに加え、ここは足場がよくないこともあり、思うように写真を撮影できなかったのが残念です。
京都府ではルイヨウボタンは準絶滅危惧種の指定を受けています。
さほど珍しい植物ではありませんが、伐採や斜面の崩落などで大きく環境が変化すると、あっさり植物群落ごと消滅するようです。
ブナ林の林床に多いとの記録も見ましたが、撮影地点は広葉樹林ではなく、伐採が進む植林地の下部です。
「類葉牡丹」の名前はボタン(牡丹)に葉が似るところに由来しますが、確かにヤマシャクヤクなどの葉とも似ているように感じます。
ただ、ボタンやヤマシャクヤクとは茎が明らかに異なります。
この山の荒れ地ではヤマシャクヤクらしき葉も数株だけ見られましたが、やや背が高かったことに加え、今の時期にお花を付けていなかったので、もう少し後の時期に咲くベニバナヤマシャクヤクかもしれません。
また、昔、この山をゴールデンウィーク明けの時期に登った際にちらほらと咲いていたギンリョウソウは、今回は全く見掛けず(→改めて調べてみたら、過去に見たのは6月の頭でした)。
ギンリョウソウは、つい先日、北摂の山を登った際に数多く咲いていました。
私好みの風情あるお花です。地味とも言えますが……。
上の写真では蕾が目立ちますが、いっせいに花開く植物ではないため、花期の最盛期に合わせて山を登るのは難しいかもしれません。
また山中の別の地点ですが、フデリンドウ(筆竜胆)も足の踏み場がないくらい咲いていました。
色は鮮やかですが、あまりにも小さなお花ですので、気付かず踏み潰してしまいそうに。
花期が全く異なりますが、ツルリンドウのように茎が這っていました。
この付近はフデリンドウが多く見られましたが、北山の他の高峰と同様、エゾユズリハらしき樹木に浸食されているのが気掛かりです(エゾユズリハではなくユズリハかもしれません)。
通常、フデリンドウは「1つの茎に複数の花を付ける」とされますが、日照条件が悪化している影響か、1つのお花しか付けない株が目立ちます。
フデリンドウと花期が重なる小型のリンドウにハルリンドウがあります。
日当たりが良い地を好む点は共通していますが、林縁を好むフデリンドウと、畦畔の縁や湿った環境を好むハルリンドウとは根本的に生育環境が異なるように見えます。
ただ、これは植物についても何ら知識を持ち合わせていない私の個人的な見解ですので、まったく参考にならないでしょう。
ハルリンドウの写真は上の記事などに。
京都北山のフデリンドウ(筆竜胆)。紫色のお花。
フデリンドウには対生葉が付き、茎を抱くような根生葉が付くハルリンドウと区別できます。
フデリンドウは2015年版の京都府レッドデータブックで絶滅危惧種の指定を受けました。
ぽつぽつ咲いているのは見掛けても、まとまって咲く場所は減少しているようです。
他にも、標高が低い地点では真っ赤なヤマツツジ、白いウワミズザクラなど樹木のお花も咲いていました。
沢沿いのタニギキョウのお花はまだこれからで、ミヤマカタバミは完全に終わっており、ちょうど、どちらも咲いていない時期。
このあたりは惜しく思いましたが、また、別の山を歩いていればタニギキョウのお花を見ることになるでしょう。
追記。
最新の研究によると、フデリンドウは部分的菌従属栄養植物の可能性が高いらしい。
光合成を行う種子植物でありながら、共生する菌類からも栄養を得られるという。
さながらラン科の植物のようで非常に興味深い。
追記終わり。
2016年5月
京都府
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