本日、2016年(平成28年)3月25日付で、京都府中央部の山地を中心とした「京都丹波高原国定公園」が、新たに国定公園として指定されました。
由良川の上中流域、淀川水系桂川の上中流域の山地や河川がもたらす豊かな自然や生態系、それに里山や里地の文化的景観が相まった美しい風景が高く評価されたものです。
いわゆる「かやぶきの里」として知られる南丹市美山町北の伝統的建造物群保存地区。
京都丹波高原国定公園に指定されました。
国定公園の範囲は広大で、南丹市美山町のほぼ全域、京都市左京区久多・広河原・花脊のおおむね全域、右京区京北の広い範囲、南丹市日吉町・八木町の一部、左京区大原の一部、それに綾部市や船井郡京丹波町の一部にも跨ります。
いわゆる「丹波高地」のうち、登山者らの間で「京都北山」と呼ばれて長らく親しまれてきた山域も公園区域に広く含まれており、今もなお原生的な森林を残す「芦生」(京都大学芦生研究林)は全域が公園区域です。
南丹市側の芦生は由良川の源流にあたりますが、京都市側の山域は桂川や安曇川の源流にあたります。
京都府民・ハイカーである私にとっても馴染みがある地域・山域が含まれていることに加え、国定公園に指定されることが世間に広く周知されているとは感じなかったこともあり、2015年(平成27年)10月23日に「京都丹波高原国定公園(仮称)」の計画案が環境省より公表されたのを受け、同28日以降、当ウェブサイトでも紹介してきました。
上のリンク先の記事に「京都丹波高原国定公園」の大雑把な解説や、過去に私が「京都丹波高原国定公園」にあたる範囲内で撮影した写真などを何枚か掲載していますので、興味がある方はそちらもどうぞ。
その後、2016年2月23日に開催された中央環境審議会の答申により、国定公園の正式な指定を待つのみとなっていましたが、本日付の官報で告示されました。
明日、3月26日には南丹市美山文化ホールで国定公園指定記念式典が開催される予定です。
「祝・京都丹波高原国定公園誕生」のぼり。2016年5月撮影、追加。
シャクナゲ咲く大悲山峰定寺さんの付近にて。京都市左京区花脊原地町。
環境省告示第二十八号
自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第五条第二項の規定に基づき、京都丹波高原国定公園を指定したので、同条第三項の規定に基づき、次の通り公示する。
この国定公園の区域を表示した図面は、環境省及び京都府庁に備え付けて供覧する。
平成二十八年三月二十五日
(以下、略)
官報 平成28年3月25日付 号外 第68号
公示の全文はインターネット版「官報」 で確認できます。
京都丹波高原国定公園 位置図・地図
国定公園の指定を祝して、私にも何かできることはないかと考えましたが、私ならではということで、今回は公園区域の位置図・地図を公開しておきます。
先の記事で公開している位置図・地図のやや詳細なバージョンとなっています。
京都丹波高原国定公園 公園区域 位置図・地図 (画像をクリックすれば拡大表示されます)
番号 | 名称 | 所在地 | 標高 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | 君尾山 | 京都府綾部市 | 543m | 光明寺 |
2 | 頭巾山 | 京都府綾部市 京都府南丹市 福井県大飯郡おおい町 | 871.0m | 綾部市最高峰 山頂は府県境 |
3 | 地蔵杉 | 京都府南丹市 京都府船井郡京丹波町 | 898.8m | 山頂は市町境 |
4 | 八ヶ峰 | 京都府南丹市 福井県大飯郡おおい町 | 800.2m | 山頂は府県境 |
5 | 三国峠 (三国岳) | 京都府南丹市 福井県大飯郡おおい町 滋賀県高島市 | 776.1m | 山頂は府県境付近 |
6 | ブナノ木峠 | 京都府南丹市 | 939.2m | 芦生研究林 三角点点名「芦生」 |
7 | 三国岳 (久多三国) | 京都府南丹市 京都府京都市左京区 滋賀県高島市 | 959.1m | 南丹市最高峰 山頂は府県境付近 |
8 | 長老ヶ岳 | 京都府船井郡京丹波町 京都府南丹市 | 916.8m | 京丹波町最高峰 山頂は市町境 |
9 | 美山支所 | 京都府南丹市 | 約180m | 美山町島・静原の境付近 |
10 | 美山町北かやぶきの里 | 京都府南丹市 | 約255m~ | 美山町北 |
11 | 佐々里峠 | 京都府京都市左京区 京都府南丹市 | 約740m | 広河原・美山の境 |
12 | 大野ダム | 京都府南丹市 | 約160m | 由良川 |
13 | 原峠 | 京都府南丹市 | 約430m | 美山・日吉・京北の境付近 |
14 | 深見トンネル (深見峠) | 京都府京都市右京区 京都府南丹市 | 約415m (京北側) | 京北・美山の境 |
15 | 廃村八丁 | 京都府京都市右京区 | 約590m | |
16 | ダンノ峠 | 京都府京都市左京区 京都府京都市右京区 | 約765m | 広河原・京北の境 |
17 | 湯槽山 (片波山) | 京都府京都市右京区 京都府京都市左京区 | 763.1m | 伏条台杉群 京北・花脊の境 |
18 | 八丁平湿原 (峰床山) | 京都府京都市左京区 | 約810m~ 山頂は969.9m | 高層湿原 |
19 | 京北周山 | 京都府京都市右京区 | 約240m | |
20 | 飯盛山 | 京都府京都市右京区 京都府京都市北区 | 791m | 山頂は区境付近 京北・大森の境 |
21 | 雲取山 | 京都府京都市右京区 | 911.0m | |
22 | 皆子山 | 京都府京都市左京区 滋賀県大津市 | 971.3m | 京都府最高峰 京都市最高峰 山頂は府県境 大原・葛川の境 |
23 | 日吉ダム | 京都府南丹市 | 約195m | 桂川 天若湖 |
24 | 世木ダム | 京都府南丹市 | 約195m | 桂川 日吉・京北の境付近 |
25 | 花脊峠 | 京都府京都市左京区 | 769m | 花脊・鞍馬の境 |
26 | 地蔵山 | 京都府京都市右京区 | 947.3m | 右京区最高峰 京北・嵯峨の境 |
27 | 愛宕山三角点峰 | 京都府京都市右京区 | 889.8m | 愛宕神社が建つ最高点は区域外 三角点は区域内 |
「南丹市役所 美山支所」が図中9、「美山かやぶきの里」が図中10にあたります。
私は過去に図中19にあたる京北周山から周山街道を北進し、図中14にあたる深見トンネル(深見峠)を抜け、美山町安掛、美山町北の「かやぶきの里」、美山町知見から知井坂、図中4の八ヶ峰を越え、福井県遠敷郡名田庄村(当時)を経て小浜市のJR小浜駅まで「徒歩で」旅したことがあります。
いわゆる「鯖街道」のバリエーションですが、名田庄村が合併で消滅すると知り、その前に街道の今を目に焼き付けようと思い立っての旅路でした。
京都丹波高原国定公園の区域位置図を見ると、京北や美山の美しい風景を眺めながら歩いたことが思い出され、感慨もひとしおです。
図中2の頭巾山から図中27の愛宕山三角点峰の直線距離が約36km。
図中8の長老ヶ岳から図中22の皆子山の直線距離が約35km。
きわめて広大とも言える範囲が国定公園として指定されたからといって、その公園区域の全域において、ただちになにかしらの大きな変化が起きるわけではありません。
今後は「公園計画」に基づいて「園地」や「道路」の整備や「特別地域」の保全が進められ、京都府が進める「森の京都」構想と合わせ、観光などに活用されます。
第1種特別地域
環境省告示第二十九号
自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第七条第二項の規定に基づき、京都丹波高原国定公園に関する公園計画を決定したので、同条第三項の規定に基づき、その概要を次の通り公示する。
この公園計画の概要を表示した図面は、環境省及び京都府庁に備え付けて供覧する。
平成二十八年三月二十五日一 特別地域
(一)第一種特別地域
京都府京都市左京区久多下の町の一部
京都府綾部市故屋岡町の一部
京都府南丹市美山町芦生、美山町田歌及び美山町三埜の各一部
京都府船井郡京丹波町仏主の一部
(以下、略)
官報 平成28年3月25日付 号外 第68号
「京都丹波公園国定公園に関する公園計画」の告示で、国定公園の「特別地域」が公示されています。
そのうち、「第1種特別地域」は、国定公園において「風致を維持する必要性が最も高い地域」で「現在の景観を極力保護することが必要な地域」と定められています。
原則として開発や伐採等が出来なくなり、「法的に」景観や自然環境、生態系が保護されます(人為的な影響は別問題です)。
「第1種特別地域」に指定された「左京区久多下の町の一部」は上の図中で18と示した八丁平湿原。
「綾部市故屋岡町の一部」は図中で2と示した頭巾山の一部山域。
「南丹市美山町芦生、美山町田歌の各一部」は図中で「芦生」と示した芦生研究林(芦生の森)の一部山域。
「船井郡京丹波町仏主、南丹市美山町三埜の各一部」は図中で8と示した長老ヶ岳の一部山域。
自然度が高い芦生の天然林。ブナ-カエデ帯の新緑とカンスゲの下草。
もともと、この国定公園は南丹市美山町を中心とした計画であり、美山が国定公園の1/2にあたる面積を占めていることは確かですが、国定公園の全域が美山というわけではありません。
たとえば、「公園計画」のうち、単独施設「園地」として整備される予定地点の数は、京都市左京区が5、京都市右京区が2、綾部市が4、南丹市美山町が9、南丹市日吉町が2、船井郡京丹波町が2となっています。
どうやら報道では「第1種特別地域」を広く含む芦生研究林(芦生の森)と、「第2種特別地域」を広く含む美山町北(かやぶきの里)が国定公園に指定されることばかりが大きく取り上げられているようです。
とくに重点的に保護される「第1種特別地域」以外は価値がないというものではなく、約6.9万haにも及ぶ広大な公園区域の全体から見ると、それはあくまでも一部に過ぎません。
過疎に悩む地域を活性化させることを目的のひとつとする、いわば観光主体の公園指定ではあるにせよ、あまりに偏った視点や考え方では、やがては自分たちの首を絞める結果に繋がりかねません。
私のような一介の利用者に言われるまでもないことでしょうが、国定公園の区域に含まれる各地域……、美山のみならず、奥上林、和知、日吉、京北、久多、広河原、花脊といった各地域が共同で国定公園のあり方について考えてくださることを期待します。
愛宕山から芦生を遠望
愛宕山からブナノ木峠、傘峠、三国峠など芦生研究林の山々を遠望する。
京都丹波高原国定公園の南端付近から北東端付近の山域を眺望しています。
上の位置図で言えば27から5や6方面を向いて撮影(南端から北東端を向いて撮影)。
芦生の山並みのすぐ手前に見える鮮やかな稜線は城丹国境尾根です。
愛宕山三角点峰や隣接する竜ヶ岳が公園区域に含まれることは、ハイカーの間ですら全くといってよいほど知られていない、広まっていないように感じます。
京都一周トレイル京北コースの大部分が公園区域に含まれますが、このことも周知されているとは言い難いでしょう。
同様に、若丹国境尾根にあたる京都福井府県境や、高島トレイルの京都滋賀府県境が公園区域と重なる、あるいは接するにもかかわらず、それら隣接する他県の方々や、各山域の登山道を整備なさる方々にも話が通っていないようで、国定公園に指定されることを事前に全く知らされていなかった、なんの連絡もなかったと驚いていらっしゃいました。
こういった周知不足や連係不足がもたらす影響を懸念しています。
「京都丹波高原国定公園」が新たに国定公園として指定された記念日に、何を水を差すようなことを……、とは自分でも思いますが、こういったことを客観的な視点で申し上げることができるのは、今回、国定公園として指定された地域を「自分の目で見た」「自分の足で歩いた」私ではないか……、とも。
もちろん、個人的には今回の指定には期待しており、また街道を歩いてみよう、あるいは里地を訪れてみよう、そして野山を登ってみようと考えています。
多くの方々から親しまれる国定公園となり、京都府の未来に繋がる国定公園事業となることを願って。
附
単独施設 園地 一覧
- (佐々里峠) 京都府京都市左京区
- (八丁平) 京都府京都市左京区
- (花脊) 京都府京都市左京区
- (大見) 京都府京都市左京区
- (百井) 京都府京都市左京区
- (黒田) 京都府京都市右京区
- (京北周山) 京都府京都市右京区
- (君尾山) 京都府綾部市
- (睦寄町) 京都府綾部市
- (故屋岡町) 京都府綾部市
- (古屋) 京都府綾部市
- (鶴ヶ岡) 京都府南丹市
- (芦生) 京都府南丹市
- (唐戸渓谷) 京都府南丹市
- (中) 京都府南丹市
- (北) 京都府南丹市
- (内久保) 京都府南丹市
- (安掛) 京都府南丹市
- (島) 京都府南丹市
- (樫原) 京都府南丹市
- (日吉) 京都府南丹市
- (天若) 京都府南丹市
- (仏主) 京都府京丹波町
- (長老ヶ岳) 京都府京丹波町
芦生研究林基金
2016年12月、「芦生の森」を守り、未来に遺していくため、新たに「京大芦生研究林基金」と称した基金が設立され、一般からの寄付を募る運びとなりました。
芦生研究林基金 | ~大学の森を守ろう~
https://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/asiufund/
「京都大学 芦生研究林」が抱える、いわゆる「2020年問題」等の諸問題について、京都大学さん側から説明がなされています。
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