京都の西北に聳える愛宕山の眺望や遠景について。
前回の記事だけで終えてもよかったのですが、ついでにちょっとした小ネタを。
前回の記事では愛宕山三角点峰から主に京都盆地方面に対する展望について取り上げました。
愛宕山三角点の南0.2km~、地蔵辻のすぐ南、あるいは山頂(最高峰)の東側を巻くコース上、北東や東向きに開けた場所があります。
愛宕神社さんから三角点峰へ向かって歩いていると、道中、比良の山々が視界に入る崖上のジープ道と申し上げれば、あそこかと思い浮かぶ方も多いでしょう。
とくに展望所と定められているわけではありませんが、好条件の日であれば比良山地や伊吹山、鈴鹿山脈を一望できる、それどころか、遥か遠くの山まで見通せる地点です。
前回の記事で掲載した、「愛宕山から高見山地を望む」写真を撮影した冬の日の話。
その展望地から鈴鹿山脈の連なりを広く見渡しました。
愛宕山(京都市右京区)から比叡山、鈴鹿山脈を一望し、遠くに恵那山の山影を望む。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
恵那山 | 183.6km | 2191m | 長野県下伊那郡阿智村 岐阜県中津川市 | 撮影地点から 山頂は見えない |
ソノド (霧ヶ峰) | 74.5km | 925.8m | 岐阜県大垣市 | |
鍋尻山 | 69.1km | 838.2m | 滋賀県犬上郡多賀町 | |
高室山 | 67.8km | 818m | 滋賀県犬上郡多賀町 | |
烏帽子岳 | 75.2km | 864.8m | 岐阜県大垣市 (三重県いなべ市) | |
三国岳 | 73.2km | 894m | 滋賀県犬上郡多賀町 三重県いなべ市 (岐阜県大垣市) | |
鈴ヶ岳 | 71.2km | 1130m | 滋賀県東近江市 滋賀県犬上郡多賀町 | |
鈴北岳 | 71.9km | 1182m | 滋賀県東近江市 滋賀県犬上郡多賀町 三重県いなべ市 | |
御池岳 | 72.3km | 1247m | 滋賀県東近江市 | 鈴鹿山脈最高峰 |
天狗岩 | 74.8km | 1171m | 滋賀県東近江市 三重県いなべ市 | |
藤原岳 | 75.4km | 1140m | 滋賀県東近江市 三重県いなべ市 | 標高の値は 10mDEMによる |
銚子岳 | 73.6km | 1019m | 滋賀県東近江市 | |
静ヶ岳 | 73.3km | 1088.5m | 滋賀県東近江市 (三重県いなべ市) | |
竜ヶ岳 | 74.2km | 1099.3m | 三重県いなべ市 (滋賀県東近江市) | |
日本コバ | 64.7km | 934.2m | 滋賀県東近江市 | |
釈迦ヶ岳 | 73.6km | 1091.9m | 三重県三重郡菰野町 滋賀県東近江市 | |
銚子ヶ口 | 68.6km | 1076.8m | 滋賀県東近江市 | |
水舟ノ峰 | 68.1km | 1067m | 滋賀県東近江市 | |
大峠ノ頭 (深谷山) | 68.3km | 1087m | 滋賀県東近江市 | |
イブネ | 68.9km | 1160m | 滋賀県東近江市 | |
国見岳 | 72.0km | 1170m | 滋賀県東近江市 三重県三重郡菰野町 | 標高の値は 10mDEMによる |
雨乞岳 | 68.5km | 1237.7m | 滋賀県東近江市 滋賀県甲賀市 | |
綿向山 | 64.7km | 1110m | 滋賀県甲賀市 滋賀県蒲生郡日野町 | |
鎌ヶ岳 | 72.1km | 1161m | 三重県三重郡菰野町 滋賀県甲賀市 | |
宮越山 (水沢岳) | 71.8km | 1029.3m | 三重県四日市市 滋賀県甲賀市 | |
三上山 | 36.8km | 432m | 滋賀県野洲市 | 近江富士 |
水井山 (阿弥陀ヶ峯) | 18.9km | 793.9m | 京都府京都市左京区 滋賀県大津市 | |
横高山 (釈迦ヶ岳) | 18.6km | 767m | 京都府京都市左京区 滋賀県大津市 | |
大比叡 | 18.2km | 848.1m | 滋賀県大津市 京都府京都市左京区 | 都富士 |
四明岳 | 17.8km | 838m | 京都府京都市左京区 | 都富士 |
上の構図の左手には霊仙山、伊吹山、それに比良山地を望むことができます。
「都富士」比叡山の手前に岩倉盆地。よく見ると宝が池(寶池)の周辺も写っています。
松ヶ崎の山々を越え、その右には京都盆地の北東端。
比叡山の向こうは近江盆地ですが、「近江富士」三上山の見え方でもお分かりいただけるように、琵琶湖の湖面(水面)は見えず、近江盆地でも琵琶湖を跨いだ対岸が見えています。
少し左を向けば、霊仙山の手前に琵琶湖でも彦根のあたりが見えますが、約55km先の湖面を肉眼で望むのはなかなか難しいでしょう。
これは大文字山の山頂(三角点)から大阪湾までの距離と同等です。
上の件について追記。
滋賀県にお住まいの方から、彦根の琵琶湖畔から愛宕山を撮影したお写真をいただきました。
そのお写真に写る山が愛宕山(の山頂域)であることは当方でも確認済です。
彦根の琵琶湖畔から愛宕山(の山頂域)をピンポイントで見通せるということは、逆もまたしかりで、愛宕山から彦根の琵琶湖畔が見えるということです。
ありがとうございました。
追記終わり。
鈴鹿山脈の核心部とも言える山域はおおむね見えていますが、雨乞岳に遮られるため、御在所岳(御在所山)は見えません。
御在所岳の周辺、北の国見岳や南の鎌ヶ岳は見えます。
よくよく目を凝らして眺めてみると、烏帽子岳と三国岳(近江、伊勢、美濃国境)の向こうになにやらぼんやりと山影が……。
この日は眠気と寒気で疲れ切っており、手抜きで撮影した写真しかありません。
リサイズを控えめにし、トリミングした写真を。
愛宕山三角点の南0.24km地点から鈴鹿山脈の向こうに恵那山の一部を遠望する。
中央アルプス(木曽山脈)の南端寄り、恵那山の一部がぼんやりと見えていますが、この撮影地点から恵那山の山頂を望むことはできません。
出典「基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュ」(国土地理院)
愛宕山三角点の南0.24km地点から恵那山方面の展望図。
「気差の設定」は「気差を含んだ地球半径の倍数 1.2倍」で計算。
気温が低い冬場の影響でしょう、標準的な「気差の設定」である「気差を含んだ地球半径の倍数 1.156倍」を用いた計算結果よりも、この日は恵那山が高く見えていたため、この値を1.2倍として計算しています(恵那山の山頂付近でマイナス18~19℃見込み)。
よほど特殊な気象条件下に置かれないかぎり、計算上、愛宕山三角点の南0.24km地点から恵那山の山頂は見えません。
愛宕山三角点の南0.24km地点から恵那山の遠望図。
「気差の設定」は「気差を含んだ地球半径の倍数 1.2倍」で計算。
恵那山の山頂(最高峰)や三角点峰は見えませんが、前宮コース(前宮登山道)と大判山(~神坂峠)の分岐点にあたる約2170m小ピークあたり が目立って見えているようです。
撮影地点からこの小ピークまで183.3km。
愛宕山三角点の広場(展望地)から恵那山方面の展望図。
「気差の設定」は「気差を含んだ地球半径の倍数 1.156倍」で計算。
三角点が設置されている地点ではなく、わずかに標高を下げた鉄塔横の広場から見た展望図です。
標準的な気象条件下であっても、計算上、愛宕山三角点の展望地から恵那山の山頂が見えます。
「三角点の南0.24km地点」と「三角点の展望地」、両地点の標高差は約15mに過ぎず、距離も南北に0.24kmしか離れていませんが、このわずかな南北の緯度の差が明暗を分けています。
同様に、あくまでも計算上では地蔵山や竜ヶ岳から恵那山の山頂が見えますが、現地の状況から判断するかぎり、その両座から御池岳方面を見通すのは(現状では)難しいでしょう。
近隣の山で、いわゆる愛宕三山より標高が下がる山、たとえば、近年、東向きの見晴らしが良くなった朝日峯などからは、そもそも恵那山が見えません。
本記事を見て展望に興味が湧いた方は、ご自身でも考えたり、調べたり、検証のため現地を訪れてみてください。
恵那山が見えるということは、この左(北)には某山が見えるのでは……、などなど。
見える・見えないで申し上げれば、もちろん見えますが、長くなってきたため、その話はまた別の機会に譲ります。
頻繁に愛宕山を登っていらっしゃる方でもお気付きない、見落とされていることは少なからずあるものです。
関連記事 2012年1月 冬の愛宕山から遠望
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愛宕山 三角点峰(地理院 標準地図)
「愛宕山(アタゴヤマ、アタゴサン)(あたごやま、あたごさん)」最高峰 標高924m 三角点峰 標高889.8m(890.1mから改定)(三等三角点「愛宕」)
京都府京都市右京区(山域は京都府亀岡市に跨る)
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