秋晴れの比叡山 琵琶湖を一望 鈴鹿山脈の南端はどこ?

2013年(平成25年)9月の話。
さわやかな秋晴れの日、この日は大津市側から比叡山をハイキング。
亡き酒井雄哉さんのみならず、過去に比叡山を歩かれた方々のことをしのびながら、無動寺谷を経て坂本ケーブル延暦寺駅へと向かいます。
上空には綺麗な青空が広がっており……。

ケーブル延暦寺駅付近から琵琶湖・湖北を一望

比叡山から琵琶湖の向こうに伊吹山地、湖北の山々を望む 2013年9月
比叡山から琵琶湖の向こうに伊吹山地、湖北、西美濃、奥美濃、江越美周辺の山々を望む。
撮影地点から上谷山(滋賀県長浜市、福井県南条郡南越前町)まで76.5km。
滋賀県最高峰の伊吹山(滋賀県米原市)まで64.3km。

沖島、竹生島、琵琶湖大橋、それに、解体が進む大観覧車「イーゴス108」も写っていますね。
多景島はリサイズしてしまうと場所が分かりにくいため、島名を表示していません。

この前日は近畿地方の広い範囲で強い北風が吹き荒れており、大文字山からは南向き、遠く遠くの山々まで眺望できましたが、北向きについてはこの日のほうが好条件。
もっとも、さすがに白山や御嶽山まで遠望できるほどではありません。
遠望において北向きは不利ということもあり、無雪期の白山を比叡山から日中に撮影するのは困難です(が、ごく稀に見通せる日もあります)。

上の写真では能郷白山のピークが分かりにくいでしょうから、望遠レンズで金糞岳と能郷白山を撮影した写真を。

比叡山から能郷白山を遠望

比叡山から金糞岳と白倉岳、遠くに能郷白山を望む 2013年9月
比叡山から金糞岳と白倉岳(白倉ノ頭)、遠くに能郷白山を望む。
撮影地点から能郷白山(福井県大野市、岐阜県本巣市、揖斐郡揖斐川町)まで98.3km。
金糞岳(岐阜県揖斐郡揖斐川町、滋賀県長浜市)まで69.9km。

尖峰たる蕎麦粒山は能郷白山と重なっているため、肉眼での認識は困難です。
この日は見えそうになかったものの、この構図の左手に加賀白山まで見通せます。

続いて、鈴鹿山脈方面の展望地へ。
ここは鈴鹿の山々を綺麗に一望できるだけではなく、ハイカー以外は気付きにくい初日の出の展望スポットでもあり、今年の元日、ご来光登山も敢行しています。

阿星山、油日岳の向こうから登る初日の出を比叡山から望む

ご来光ハイク 比叡山から初日の出を望む 2013年1月1日

2013.01.01

京都市側にあたる四明岳まで至ると、大比叡の山体に遮られるため、鈴鹿山脈の大部分が見えなくなってしまいます。
当地で美しい鈴鹿の山並みを楽しんでから大比叡を登頂し、四明岳へ向かうことにしましょう。

鈴鹿山脈方面展望地から鈴鹿を一望

比叡山から琵琶湖と近江盆地、鈴鹿山脈を望む 2013年9月
比叡山から琵琶湖と近江盆地、鈴鹿山脈の山々を望む。
撮影地点から霊仙山(滋賀県犬上郡多賀町)まで54.5km。
釈迦ヶ岳(三重県三重郡菰野町、滋賀県東近江市)まで54.7km。
那須ヶ原山(滋賀県甲賀市)まで46.7km。

北端の霊仙山から南端の油日岳まで、鈴鹿山脈を一望。
上の写真では油日岳の位置が分かりにくいため、那須ヶ原山の位置を示しておきます。
いわゆる「鈴鹿セブンマウンテン」のうち、御在所岳(御在所山)と入道ヶ岳は見えません。
比叡山から見て釈迦ヶ岳がほぼ真東にあたります。

くさつ夢風車・烏丸半島を比叡山から望む

比叡山から御池岳や藤原岳、湖東平野、烏丸半島を望む 2013年9月
比叡山から御池岳や藤原岳、湖東平野、烏丸半島、「くさつ夢風車」を望む。
撮影地点から鈴鹿山脈最高峰の御池岳(滋賀県東近江市)まで53.7km。

烏丸半島の風力発電(稼働停止中)と、その向こうに広がる湖東平野。
撮影しながら、昨年のゴールデンウィークの時期に赤神山から箕作山、小脇山へと縦走した日のことを思い出します。
あの日は春としては条件よく、澄んだ青空の下、西美濃、伊吹、鈴鹿の山々を見渡し、遠くには曽爾高原の倶留尊山、あるいは京都西山のポンポン山まで見通すことができました。

2018年(平成30年)12月、追記。
報道によると、2019年(平成31年)1月15日より「くさつ夢風車」の撤去工事が始まるとのこと。
比叡山から風車を眺望できるのも、あと僅かの話です。
追記終わり。

近江富士を比叡山から望む

比叡山から雨乞岳や綿向山、近江富士、鏡山丘陵を望む 2013年9月
比叡山から雨乞岳や綿向山、近江富士、鏡山丘陵を望む。
撮影地点から鈴鹿山脈第2位峰の雨乞岳(滋賀県東近江市、甲賀市)まで49.7km。
「近江富士」三上山(滋賀県野洲市)まで17.9km。

鈴鹿山脈の山々でもとくに高い山、最高峰の御池岳や2番目に高い雨乞岳の山頂は(三重県や、両県の県境上ではなく、)滋賀県に所在します。
3番目に高い御在所岳についても、わずかとはいえ、最高標高地点(望湖台がある標高点1212m峰)は滋賀県側にあたります。
雨乞岳に遮られるため、比叡山から御在所岳は見通せませんが、よく眺めると、鎌ヶ岳の山頂付近だけ覗いてますね。

鈴鹿山脈の最南端はどこ?

鈴鹿山脈の最南端域と阿星山を比叡山から望む 2013年9月
鈴鹿山脈の最南端域(油日岳、小平山、旗山)と、湖南の阿星山を比叡山から望む。
撮影地点から小平山(烏山)(三重県亀山市、伊賀市)まで46.7km。
阿星山(滋賀県湖南市、栗東市)まで22.8km。

油日岳の山頂は見えてはいるものの、山頂より高い南東尾根(那須ヶ原山へ連なる縦走路)と重なって見えるため、上の写真ではどこが油日岳の山頂であるか分かりにくいです。
伊賀と甲賀の国境付近に所在する忍者岳は見えますが、伊勢国と伊賀国、近江国を分ける三国岳(加太三国岳)は見えません。

鈴鹿山脈における最南端の「山」をどこと見なすかは難しいところです。
一般的に、国土地理院の地形図に山名が表記される油日岳を鈴鹿山脈の南端と扱う例が多いものの、油日岳より南に所在する山として、地形図に山名は表示されないが、標高点ならびに固有の山名を持つ山として小平山(烏山)(717m)の名を、同じく地形図に山名が表示されず、かつ、(現在は)三角点も標高点も持たないが、固有の山名を持つ山として旗山(649.2m)の名を挙げることができます(→本記事の初稿公開時点では地理院地図から消えていましたが、「処置保留」扱いながら、旗山の三等三角点「柘植」が再び地理院地図に表示されるようになりました)。
鈴鹿山脈の南東端と見なせる関町の関富士、観音山、城山(新所城)といった山々より、旗山のほうが緯度では南に所在します。

2021年(令和3年)、追記。
本記事を公開してから約8年もの歳月が流れました。
記事の趣旨として、俗に鈴鹿山脈の最南端は油日岳などと言われていますが、油日岳より南にも「山」はありますよと指摘し、その例として小平山(烏山)や旗山の名を挙げただけに過ぎず、旗山が鈴鹿山脈の最南端であると断定的に書いたつもりはありませんが、本記事の影響か、旗山を最南端とする記事がインターネット上で散見されるようになりました。
これは少し危ういと感じているので、補足がてらに追記しておきます。
本件については、長年、誤解を招くような内容のまま放置していた当方にも責任のようなものがあると考えています。

三重県|景観:景観法・三重県景観づくり条例・三重県景観計画
https://www.pref.mie.lg.jp/KEIMACHI/HP/34247007086.htm

上記リンク先「三重県景観景観計画のダウンロード」→「第2章 景観特性 1県土の景観特性(pdfファイル)」→「図1 三重県の地勢・地形」に掲載される地図と、国土地理院の地形図を重ねてみると、三重県ではおおむね加太越以北を鈴鹿山脈、以南を布引山地と見なしていることが分かります。
現状、当サイトでもこの区分に従っていますが、霊山や錫杖ヶ岳は布引山地の北端域に属するとされますので、この分け方が適切なのでしょう。
柘植川や加太川より北を鈴鹿山脈、南を布引山地と区分する場合、たとえば、JR加太駅の北西に所在する行者山(347.1m)、牛谷山(263m)が旗山より南に所在しており、緯度的な観点では牛谷山が最南端と見なせるかもしれません。
同様に、JR柘植駅の南東に所在する廻り戸(351.9m)が南西端といえるでしょうか。
追記終わり。

ついでに、無関係な話ではありますが、こちらに追記しておきます。
他所で述べた話の再掲です。
鈴鹿山脈の「鈴鹿」は、鈴鹿郡、鈴鹿関などに名前が見えますが、山としての「鈴鹿山」がどこを指すかはあまり知られていないようです。
たとえば、伊勢国側の地誌である『勢陽五鈴遺響』では、鈴鹿山について、「旧名片山或三箇山方俗ミツコ山ト称ス」とあり、あくまでも『勢陽五鈴遺響』によれば、現代における三子山を鈴鹿山としています。
その一方で、元禄国絵図の「近江国図」では、高畑山について、「此高畑山水流峯通国境伊勢国ニテハ鈴鹿山ト申候」と見え、近江国側で高畑山と呼ぶ山について、伊勢国側では鈴鹿山と呼ぶ、としています。
三子山と高畑山の鞍部が東海道の鈴鹿峠で、古歌に詠まれる、歌枕としての「鈴鹿山」は鈴鹿峠の周辺を指すケースが多く、これは歌においては逢坂山と逢坂(峠)、逢坂関が同義であるのと同様です。
より後世、1880年(明治13年)の『滋賀縣管内甲賀郡誌』(滋賀県管内甲賀郡誌)では、三ツ子山や高畑山とは別に、鈴鹿山を「本郡(甲賀郡)東部ノ山伊勢国境ニ在ルモノ総称」と紹介しており、鈴鹿山は近江国甲賀郡と伊勢国の国境を成す山々の総称で、昔、関門(鈴鹿関)を設けたとしています。
追記終わり。

上記の補足。

「歌枕としての『鈴鹿山』は鈴鹿峠の周辺を指すケースが多く」としましたが、1939年(昭和14年)の『三重縣郷土史』(三重県郷土史)には以下の記述があります。

「鈴鹿山道鈴鹿關」
(略)
彼の萬葉集に、鈴鹿山を詠んだ歌が出て居りますが、其の指すところの鈴鹿山は、平安期以後、喧しく人の口に唱へられて居る鈴鹿山とは、其の地點が全然異なって居るのであります。卽ち奈良期及び其の以前の所謂鈴鹿山は、今日の柘植から加太を越えて關に出る、あの山路であり、平安期頃の鈴鹿山は、近江の甲賀郡土山町から伊勢の鈴鹿郡坂下村に通ずる、たゞ今の鈴鹿峠越であります。此の土山から鈴鹿峠を下つて、坂下に出る山道は、光孝天皇の仁和三年に開鑿されましたもので、當時此の道を、阿須波道と申しました。
 伊勢には有名なる鈴鹿の關と申すものがありますが、これは、阿須波道が開通する以前からあつたのでございます。
(後略)
『三重縣郷土史』

『三重縣郷土史』によると、奈良時代以前の「鈴鹿山」は柘植から加太を越えて関(かつての鈴鹿郡関町)に出る山道としています。
いわゆる倉歴越から加太越の旧東海道を指すと考えられますが、鈴鹿山脈がどのように扱われていたかの観点においても興味深いものがあります。
かつては旧東海道が鈴鹿山と扱われていたとする描写は見落とせません。
補足終わり。

大比叡を越えて四明岳へ

この時間帯までは、布引山地は青山高原の風車群、それより南、「伊賀富士」尼ヶ岳や大洞山、それに三峰山、また別の地点からは大峰山脈の稜線も見えていましたが、後で訪れることになる四明岳から撮影すればよいだろうと考え、この時点では撮影を見送ってしまいました。
しかし、これが失敗。
前日とは異なり風も弱く、午後になり気温が上昇したこともあり、16時を過ぎたあたりからひどく霞んだ空となってしまいました。

先日の大雨の影響でしょうか、西尊院堂さんからドライブウェイを跨ぎ、大比叡へと取り付く山道付近が崩落していましたが、すでに補修済でした。
智證大師御廟にお参りし、大比叡の山頂を乗り越え、四明岳へと向かいます。
大比叡の西、比叡山頂バス停・四明ヶ嶽駐車場方面へ下る道からは遠くにうっすらと長老ヶ岳や三峠山まで見えていましたが、すでに空と稜線の境目が分かりにくい見え方で、どうにも撮影意欲が湧きません。

四明岳から皆子山、蓬莱山を眺望

比叡山から皆子山、比良山地、湖西を望む 2013年9月
比叡山から京都北山、比良山地の山々、琵琶湖の湖西を望む。
撮影地点から三十三間山(滋賀県高島市、福井県三方上中郡若狭町)まで48.1km。
京都府最高峰の皆子山(滋賀県大津市、京都市左京区)まで15.1km。

上空は青く、近くの比良山地は条件よく見えていますが、先ほどまでの写真と比較しても、遠くの低い空が白んで霞みがかっています。
いわゆる遠霞の空、こうなってしまうと遠くまで見晴らすのは困難、慌てて尼ヶ岳や三峰山などを確認してみますが、その山影は薄れゆくのみでした。

続いて、「あべのハルカス」や和泉山脈、大阪湾方面を確認するたに、京都盆地・大阪方面の展望地へと移動しますが、そちらも同様。
肉眼で「あべのハルカス」が見えてはいますが、前日、大文字山から眺めた景色とは比較になりません。
期待はできないと思いつつ、少し粘ってみましたが、やはり、その後も好転することはなく。
先日、岩湧山でも似たような出来事が起きましたが、これなら、遠くまで見えやすかった時間帯に大峰の山々を撮影しておけばよかったと後悔。
六甲山や有馬の山々は見えていたため、気持ちを切り替え、肌寒さを感じる山の上から夕日を撮影し、この日の撮影を終えることにします。

比叡山から霞む夕日を撮影

比叡山から霞む夕日と愛宕山、六甲山を望む 2013年9月
比叡山から霞む夕日と愛宕山、北摂の山々、六甲山を望む。
撮影地点から六甲山最高峰(六甲最高峰)(神戸市北区、東灘区)まで60.1km。
愛宕山(京都市右京区)まで17.2km。

ケーブル比叡駅の付近から夕日を撮影。
私にとっては馴染みがある四明岳や大文字山、あるいは京都一周トレイル東山コース寄りの山々。
それら東山から西向きの山を望むのは容易ですが、東向きにあたる鈴鹿の山々を端から端まで眺める機会はなかなかありません。
そういった点で、この日は鈴鹿山脈を一望できただけでも満足でした。

比叡山 斧堂跡から京都北山、皆子山、大原の里を望む 2013年11月

高祖谷駅跡(比叡山空中ケーブル)、斧堂跡の紅葉 西山559m

2013.11.27

この2ヶ月後、いよいよ見納めとなった「イーゴス108」の跡を比叡山から撮影した日の話は上の記事に。

大比叡(地理院 標準地図)

クリック(タップ)で「大比叡」周辺の地図を表示
「大比叡(ダイヒエイ、オオビエ、オオヒエ)(だいひえい、おおびえ、おおひえ)」
標高848.1m(一等三角点「比叡山」)
滋賀県大津市、京都府京都市左京区
「四明岳(シメイガタケ)(しめいがたけ)」
標高838m
京都府京都市左京区

ABOUTこの記事をかいた人

Maro@きょうのまなざし

京都市出身、京都市在住。山で寝転がりながら本を読むか妄想に耽る日々。風景、遠望、夕日、夜景などの写真を交えつつ、大文字山など近畿周辺(関西周辺)の山からの山岳展望・山座同定の話、ハイキングや夜間登山の話、山野草や花、野鳥の話、京都の桜や桃の話、歴史や文化、地理や地図、地誌や郷土史、神社仏閣の話などを語っています。リンク自由。山行記録はごく一部だけ公開!