2014年(平成26年)6月の話。
京都府の特定の地域・山域におけるベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)の大雑把な株数を調査、記録するため、とある山へ。
(事情により中略)
の黄色いお花が占める道を少し引き返し、隣の谷を選びました。
なかなか険しく荒れた谷でしたが、少し詰めたところで……。
谷の下部で白いお花が目に留まりました。
気品あふれるその姿、遠くからでもよく目立ちます。
上の写真では開花株は1つのみですが、蕾がいくつか。
これは、と思い、あたりを見上げてみると……。
ヤマシャクヤクと酷似したお花が数多く咲いていました。
しかしながら、ここは足場がよくなく、お花のつくりを撮影するのが難しく。
下山時、ハイキングコースの脇に咲いていたお花を撮影した写真ですが、一部、花片が落ちて(散って)おり、お花のつくりが分かりやすく。
一般的なヤマシャクヤクと異なり、雌しべの柱頭の先がうず状に巻いて(ねじれて)おり、お花の色こそ白いものの、ベニバナヤマシャクヤクの特徴が出ています。
花期からも明らかですが、これはヤマシャクヤクではなく、白花型(白色型)のベニバナヤマシャクヤクです。
私は昔から勝手に「シロバナベニバナヤマシャクヤク」などと呼んでいましたが、「シロイロベニバナヤマシャクヤク」と呼ぶ方もいらっしゃるようです。
現在のところ、統一された呼称が見当たらないため、こちらでは「ベニバナヤマシャクヤク(白花型、白色型)」の表記を用いています。
京都府では白花型(白色型)の自生地は珍しいものではなく、多くの山で見ることができますが、紅色のお花を咲かせる、いわゆるベニバナヤマシャクヤク以外は注目されないようです。
現状、花期であっても、この山を訪れる人は少ないようで、この日も、長時間、山の中を歩きまわっていましたが、誰とも出会うことはなく。
つぼみも目立ったものの、見頃のお花が多かっただけに惜しい話です。
話を先ほどの谷に戻して……。
京都府で見るベニバナヤマシャクヤクは背が高く伸びている例が多く、一般的なヤマシャクヤクの姿とは随分と異なる印象を受けます。
逆に、お花そのものはヤマシャクヤクと比較すると小ぶりなものが多いですが、雌しべの数が5のお花は大きく感じるため、雌しべの数と関係があるのかもしれません。
雌しべの数が3のお花はとくに小ぶりだと感じます。
ただし、背の高さとは別問題で、あくまでもお花そのものの大きさです。
絡みつくツルアジサイ(蔓紫陽花)(ゴトウヅル)のお花が遠くに見えています。
足元には私が好きなミズタビラコ(水田平子)のお花が数多く咲いていました。
ベニバナヤマシャクヤク(白花型、白色型)とガガンボカゲロウ。
昨年、他の山でも撮影した組み合わせ、構図ですが、かのお花にはガガンボカゲロウを引き寄せるなにかがあるのでしょうか。
この谷は険しく、上に見える尾根まであとわずかというところまでは達したものの、傾斜が厳しいうえ、足元は崩れやすく、巨大な倒木に遮られたこともあり、また、生育環境を荒らす気にもならず、この谷は諦め、隣の尾根を頼ることにしました。
移った尾根にもヤマシャクヤクの株が広がっていました。
上の写真に写る左のつぼみは赤さを伴っており、もしかすると、開花時には紅色を帯びるかもしれません。
白花型の群生地にも、紅花型が現れたり、花片の一部に紅色が差すことは確認済です。
ただし、私が見たところ、紅色が出るのはきわめて稀な例です。
上の写真のみ、他の山で撮影した写真ですが、一般的な、いわゆるベニバナヤマシャクヤク(紅花山芍薬)は、このような紅色のお花を咲かせます。
参考用に。
上に見えていた尾根道までよじ登ることができ、ほっとひと安心。
ひとまず登頂を果たし、この日はロングコースは諦め、ベニバナヤマシャクヤクの分布と、道中で見掛けた他の植物の分布を調べることにします。
その過程で、ある疑念が生じましたが、それは次回以降の記事に譲ります。
エゴノキそのものはありふれており、たとえば、大文字山でも見ることができますが、暑い時期、苦手な時期ということもあり、花期に合わせて山を登る機会が多いとはいえません。
遠目には仲間のハクウンボクとの区別も付きづらいですが、落ちたお花が絨毯を織り成す光景は美しく。
日本における「エゴノキ」の漢字表記は存在せず、エゴノキの中国名である「野茉莉」を当て字とする例や、古名として比定される「知佐(チサ)」「知佐乃木(チサノキ)」などを代用する例があります。
「齐墩果」(齊墩果)(斉墩果)を当てる例も見受けられますが、これは中国語でオリーブ(モクセイ科)を指しており、エゴノキの当て字としては誤用です。
この誤用は江戸時代に広まり、かの牧野富太郎博士が否定するまで当たり前のように用いられていました。
『牧野日本植物圖鑑』(牧野日本植物図鑑)に「ゑごのき(中略)漢名齊墩果ハ誤用ニシテ、是レハ元來おりーぶノ漢名ナリ。」と見えます。
『萬葉集』(万葉集)七の巻に収載される歌に詠まれる「山治左(ヤマヂサ)」や、あるいは十一の巻に収載される歌に詠まれる「山萵苣(ヤマヂサ)」が何を指すかは古くから議論されていますので、興味が湧いた方は調べてみてください。
整理の都合で記事を分けます。
続きは上の記事で。
京都府
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