今回は成就山の話の続きです。
京都タワーさんの照明の話やら、御苑の桃が開花した話やらで間が空いてしまいました。
今から1ヶ月前、2016年(平成28年)2月の話。
この日は仁和寺さんの裏山と言える御室の成就山をハイキングがてらに登拝。
いわゆる「御室八十八ヶ所霊場」「八十八ヶ所 御山めぐり」の山として知られます。
前回の記事でも申し上げましたが、近年、この成就山を登る機会が増えました。
これには幾つかの理由がありますが、そのうちの1つが今回の記事の内容とも関わりがあります。
前回の記事では山頂(頂上)付近にあたる「第四十八番 西林寺」から京都西山、愛宕山方面の風景や、「第四十七番 八坂寺」から蓬莱山を撮影した写真を掲載しました。
この山頂付近からの眺望もなかなかのものですが、そこから少しばかり山を下ると、「第五十番 繁多寺」と「第五十一番 石手寺」の間が開けており、眼下に京都盆地や街並みを広く俯瞰できます。
この見晴らしの良い好展望地にはベンチも備わっており、御室成就山における最高の休憩適地といえるでしょう。
「御室八十八ヶ所」成就山の展望 仁和寺
成就
「御室八十八ヶ所」成就山の展望。京都の街並みを一望。南東向きの風景。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
千頭岳 (東千頭岳) | 16.5km | 600m | 京都府京都市伏見区 滋賀県大津市 |
清水山 | 8.6km | 242.2m | 京都府京都市東山区 |
京都東山や醍醐山地の山並みと合わせ、京都でも中心部から東部、南東部にかけてが見えています。
京都西山の山並みと合わせた京都の北西部から南西部にかけての景色は前回の記事に写真を掲載しています。
上の写真では京都タワーの位置は分かりにくいでしょうか。
清水山の手前は東山界隈、京都タワーの後方には伏見の稲荷山や大岩山。
清水寺さんには有名な成就院庭園があり、成就山から成就院方面を見渡していることになります。
成就院を号する寺院が多いことからも分かるように、「成就」はもちろん仏教用語でもありますが、一般的な用例としては前漢代の董仲舒の作とされる『春秋繁露』循天之道篇に実例があります。
ただし、『春秋繁露』の成立時期は古くから異論が多く、漢籍における「成就」の初出と見るかは判断が難しい。
大文字山を望む
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 |
---|---|---|---|
大文字山 | 9.4km | 465.3m | 京都府京都市左京区 |
音羽山 | 14.6km | 593.1m | 京都府京都市山科区 (滋賀県大津市) |
大文字山の「大」の字跡も左端に写っていますが、私の低山散歩としては珍しく、お昼前の時間帯に撮影しているため、東向き~南東向きは逆光で分かりにくいですね。
京都御苑より北の街並みは撮影地点から見えません。
撮影地点である御室成就山の展望地は、地形図ではこのあたり 。
京都タワーを望む
主な山、建築物 | 距離 | 標高 (地上高) | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
空鉢峰 (鷲峰山) | 29.2km | 682m | 京都府相楽郡和束町 | |
釈迦岳 (鷲峰山三角点峰) | 29.2km | 681.0m | 京都府綴喜郡宇治田原町 京都府相楽郡和束町 | 点名「鷲峰山」 |
大岩山 | 12.1km | 182m | 京都府京都市山科区 (京都府京都市伏見区) | |
稲荷山 | 10.3km | 233m | 京都府京都市伏見区 | |
京都タワー | 7.1km | (131m) | 京都府京都市下京区 |
撮影時は全く気付かなかったですが、写真の左上にヘリコプターらしき影が写っています。
この日は遠く京都南部や奈良、大阪寄りの平地は靄が覆っていたものの、遠方の山々は条件よく見えていました。
京都タワーより右の彼方には高見山地や台高山脈の高峰の姿が、さらに右には大峰山脈の高峰の姿まで。
台高山脈は広角的な視野では分かりにくいため、おおむね南向きと言える大峰山や金剛山を。
成就山から望んだ大峰や台高の高峰は次回以降の記事で。
奈良の大峰山を遠望
京都の御室成就山から奈良の大峰山と金剛山、生駒山を遠望する。眼下に雙ヶ岡。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
山上ヶ岳 | 89.6km | 1719.4m | 奈良県吉野郡天川村 | |
八経ヶ岳 (八剣山) (仏教ヶ岳) | 97.5km | 1915.2m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県吉野郡上北山村 | 近畿地方最高峰 奈良県最高峰 大峰山脈最高峰 |
天和山 | 95.0km | 1284.8m | 奈良県五條市 奈良県吉野郡天川村 | |
唐笠山 | 93.9km | 1118.2m | 奈良県吉野郡天川村 奈良県五條市 | |
雙ヶ岡 | 1.4km | 115.8m | 京都府京都市右京区 |
眼下に雙ヶ岡(双ヶ丘)が見えています。
東や西から眺めるのとは受ける印象が随分と異なりますね。
過去の記事でも何度か申し上げていますが、京都から遠望する場合、大峰山脈の高峰が見えることよりも、その右(西)に西吉野の山々が明瞭に見えることのほうが貴重です。
山上ヶ岳や八経ヶ岳といった高峰が天空に浮かぶように見える日でも、西吉野の山々は霞んで見えない、なんていうことは珍しくありません。
そして、上の写真の構図で西吉野の山々が明確に写るような好条件の日であれば、生駒山の右遠方、あるいは岩湧山の左遠方に、私にとっては京都市内から撮影する機会が少ない、ある山まで見通せる可能性があります。
この日はどうでしょうか。
和歌山の龍神岳を遠望
和歌山県最高峰の龍神岳、護摩壇山を京都の御室成就山から遠望する。
主な山 | 距離 | 標高 | 山頂所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
護摩壇山 | 109.5km | 1372m | 和歌山県田辺市 奈良県吉野郡十津川村 | |
龍神岳 (丸山) | 109.3km | 1382m | 奈良県吉野郡十津川村 和歌山県田辺市 | 和歌山県最高峰 紀伊山地西部最高峰 |
耳取山 | 109.3km | 1363m | 奈良県吉野郡十津川村 和歌山県田辺市 | |
南葛城山 (嵯峨谷ノ峰) | 77.1km | 922m | 大阪府河内長野市 和歌山県橋本市 | 和泉山脈最高峰 標高の値は10mDEMによる |
岩湧山 | 75.0km | 897.1m | 大阪府河内長野市 | |
金剛山 (葛木岳) | 68.6km | 1125m | 奈良県御所市 | 金剛山地最高峰 |
生駒山 | 39.9km | 642.0m | 奈良県生駒市 (大阪府東大阪市) | 生駒山地最高峰 |
清滝山 (眼鏡山) | 34.1km | 361.2m | 大阪府四條畷市 | 点名「目賀根」 |
鳩ヶ峰 | 17.4km | 142.4m | 京都府八幡市 | |
天王山 | 15.3km | 270m | 京都府乙訓郡大山崎町 |
写真の左手前には桂川と、桂川に架かる西大橋などが写っています。
西大橋の手前には梅津や太秦の工場が。
先ほど述べた「ある山」とは、ずばり、和歌山県最高峰の龍神岳と、その近くの護摩壇山です。
京都市内から龍神岳を見通せるのは、京都盆地の西部~北西部寄りの山か、あるいは北山の高峰に限られています。
金剛山に遮られるため、私にとって馴染みがある東山寄りの山々、たとえば比叡山や大文字山からは見えません(四明岳の山頂や「比叡ビュースポット」からであれば、龍神岳は見えないものの、護摩壇山の山頂のみ見えます)。
京都市内に限定しなければ、過去に京都府南部の山から撮影したことがあります。
京都北山の高峰から龍神岳まで遠望できることは昔から気付いており、2011年頃から何度も何度も愛宕山や天狗杉(花背山)などを登り、龍神岳を撮影しようと狙い続けていましたが、残念ながら空振りに終わっていました。
「北山から龍神岳チャレンジ、今年も失敗」などと毎年のように申し上げていましたので、このことは私と直接的に付き合いのある方々であればご存じでしょう。
昨年(2015年)11月、ようやく花脊の山から撮影に成功しましたが、ぼんやりした写り方に過ぎません。
京都から大峰山脈の美しい連なりが明瞭に見えるような日であっても、龍神岳を含む紀伊山地西部の高峰は霞んで見えにくく、遠望の難度を決めるのは距離ではないと改めて思い知らされました。
たとえば、大文字山から白馬山脈の高峰が明瞭に見えている日や、瓜生山から西吉野の山々が明瞭に見えている日であれば、おそらく、北山の高峰から龍神岳まで見えているだろうと惜しい気持ちになることも。
そういった好条件の日に限って遠出できないことばかり。
ところが、近年になり、東山寄りではなく、京都盆地でも北西部寄りの低山を登る機会が増え、成就山から龍神岳が見えることに気付きました。
仁和寺さんはアクセスも容易で、このことを知った今となっては大した労もなく京都市内から龍神岳まで見晴らせるようになりました。
この記事を読んで興味が湧いた方は、「京都市内から和歌山の龍神岳が見える山」成就山を登ってみてください。
よく目立つ生駒山を目安として、その右遠方を探すと見付けやすいですが、龍神岳の手前に位置する高野山周辺峰や、さらに手前に重なるダイトレ紀見峠周辺の連なりと混同しないように注意が必要です。
龍神岳はダイヤモンドトレールの連なりよりさらに遠くに所在しており、私の経験則に基づけば、金剛山や和泉山脈が見える頻度と比較すると、龍神岳まで明瞭に見える頻度は桁違いに低いです。
よほど目が良い方でないかぎり、肉眼での確認(手前に重なるダイトレの連なりとの区別)は難しいと考えられますが、護摩壇山と龍神岳、耳取山のピークが目立ちますので、双眼鏡などの機材があれば見間違えることもないでしょう。
高野龍神スカイラインの「ごまさんスカイタワー」が成就山から見えるかは未確定です。
地上高30mの高さがあるとはいえ、中峰(中峯)など、伯母子山地でも西端部の連なりに遮られやすいため、北から「ごまさんスカイタワー」を望むのは困難です。
現地の状況から判断するかぎり、成就山からは見えないと考えられます。
補足しておきますと、龍神岳が遠くから見えにくいというわけではありません。
六甲山系から望むのはそう難しい話ではなく、過去に何度か龍神岳を撮影しています。
一例として、上の記事では浮かび上がる龍神岳を神戸市北区の菊水山から明瞭に捉えた写真を掲載しています。
京都や大阪、奈良の湿気の影響や、遠望では不利な南向きという条件もあいまって、京都市の山からだと霞んで見えにくく感じる、という話です。
また、先ほども述べましたが、上の記事の日のように、大文字山から白馬山脈の城ヶ森山まで見通せるほど好条件の日であれば、同じ日の同じ時間帯に成就山から龍神岳まで見えていた可能性が高いでしょう。
前回の記事で、御室成就山の山頂(四十八番札所)から京都西山や金剛山、南葛城山を撮影した写真を掲載していますが、同じ日に撮影した写真にもかかわらず、そちらには龍神岳は写っていません。
同じ日であっても、微妙な日の差し方ひとつで見えやすいと感じたり、あるいは見えにくいと感じたりするのも相変わらずです。
京都市内から龍神岳が見える展望地を有する主な山として、天ヶ岳、天狗杉(花背山)、桟敷ヶ岳、愛宕山、桃山(天峯)、ポンポン山(ただし大阪府高槻市との府境)など。
天ヶ岳は少し前の記事で紹介した93番鉄塔分岐下の生駒山方面展望地から見えるはずです。
…などと書いていましたが、本記事の公開直後、京都北山から条件よく龍神岳を撮影する機会に恵まれました。
その日の写真は上の記事に。
京都市内の高峰から龍神岳を撮影した写真としては、これが決定打と言えるでしょう。
整理の都合で記事を分けます。
成就山の話の続きはいずれ。
「続きはいずれ」のまま、長らく放置していましたが、9ヶ月ぶりに本記事の続きを書きました。
間が空きすぎてしまいましたが、成就山の展望地から大峰山や大台ヶ原山を撮影した話を上の記事に。
関連記事 2016年2月 御室八十八ヶ所 成就山の展望
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御室成就山(地理院 標準地図)
「成就山(ジョウジュサン)(じょうじゅさん)」標高約230m
京都府京都市右京区
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