「『あべのハルカス』は兵庫から見える?」
兵庫県から超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)を望むにあたり、どこまで遠く離れた場所から見える(どこから見える、遠望できる、撮影できる)のでしょうか。
「カシミール3D」 を用いて、国土地理院が提供するベクトルデータ「基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュ」(DEM10B)を基に「可視マップ」を作製、「兵庫県のどこから『あべのハルカス』が見える」か、その範囲を計算、調べてみました。
遠くから見える(可能性がある)候補地は多々あれど、展望に適していない地点が目立ちますが、こちらでは、「『あべのハルカス』はどこから見える?」 と異なり、現地の状況を考慮せず、計算上、「あべのハルカス」が見える範囲(見える場所)を列挙しています。
あくまでも計算上は見えるだけであって、実際に見えるかどうかは分かりません。
また、送電鉄塔など、構築物の高さも考慮しないものとします。
図の紫色の地点が計算上の「見える範囲」(可視エリア)となります。
目次
家島諸島
大ツフラ島、松島
兵庫県姫路市
「あべのハルカス」までの距離 約96km(大ツフラ島)、約95km(松島)
→ 別窓で大きな地図を表示
播磨灘(瀬戸内海)に浮かぶ家島諸島に属する大ツフラ島は、計算上、「兵庫県から『あべのハルカス』が見える最遠望地点」 です。
「大ツフラ島」の読みは「おおつふら島」、「小ツフラ島」の読みは「こつふら島」。
「ツフラ」は「つぶら」と同義か?
男鹿島
兵庫県姫路市
「あべのハルカス」までの距離 約86km
→ 別窓で大きな地図を表示
同じ家島諸島に属する西島と同様、島の広い範囲が採石場となっており、見晴らしは良いものの、採石に伴い地形が変わり、展望の状況もどうなるか分かりません。
男鹿島の二等三角点も亡失してしまったそうです。
丹波但馬国境(丹但国境)
雲頂山(雲須山)
兵庫県丹波市、朝来市
「あべのハルカス」までの距離 約86km(範囲にあたる尾根まで)
→ 別窓で大きな地図を表示
雲頂山の東0.4kmに所在する国境尾根が「見える範囲」に含まれており、「島嶼部を除き、兵庫県から『あべのハルカス』が見える最遠望地点」となります。
計算の精度や「あべのハルカス」の座標設定しだいで範囲が微妙に変化しますが、おおむね山頂の東0.35kmの小ピーク周辺が「見える範囲」に含まれます。
地に足を付けた状態で実際に見えるかは……。
この山について、「雲頂山」ではなく「雲須山」とする記事等もあるようですが、1903年(明治36年)の『朝來志』(朝来志)によると、西麓にあたる黒川村の大明寺(大明禅寺)の山号が「雲頂山」であり、また、歴代の『兵庫縣朝來郡統計書』(兵庫県朝来郡統計書)でも、朝来郡の山として、「與布土山・靑倉山・雲頂山・三國嶽等」(与布土山・青倉山・雲頂山・三国嶽など)を挙げていることから、やはり、雲頂山の呼称が適切だと考えられます。
本題と関係ありませんが、雲頂山の北北西、與布土(現在の山東町与布土)の集落は、「ヨウド」の読みと「ヨフド」の読みが公的にも混在する土地なのだとか。
現在では、書き言葉は「よふど」、話し言葉は「ようど」で統一するらしい。
與等(ヨド)の音が「ヨウド」に転訛し、與布土はその当て字とする説あり。
播磨丹波但馬国境(播丹但国境)
三国岳
兵庫県多可郡多可町、丹波市、朝来市
「あべのハルカス」までの距離 約83km
→ 別窓で大きな地図を表示
なかなか空気が澄んだ日に訪れることができないため、実際に見えるかどうかは未確定ですが、山頂から東~南東向きが開けており、個人的には見える可能性が高いと考えています。
ただし、ビルの上部をわずかに遠望できるだけにすぎず、事前に正確な方角、場所を把握したうえで、双眼鏡などの準備が必須となるでしょう。
淡路島南西部(西淡山地)
福良港周辺
兵庫県南あわじ市
「あべのハルカス」までの距離 約86km
→ 別窓で大きな地図を表示
計算上、「淡路島から『あべのハルカス』が見える最遠望地点」です。
現地の状況は不明ですが、おそらく展望は期待できないでしょう。
南辺寺山周辺
兵庫県南あわじ市
「あべのハルカス」までの距離 約83km(南辺寺山)
→ 別窓で大きな地図を表示
福良港の北、南辺寺山の周辺に「見える範囲」が点在しています。
南辺寺山は好展望地であり、三原平野の向こうに「あべのハルカス」まで遠望できるでしょう。
淡路島南部(諭鶴羽山地)
計算上、淡路島最高峰である諭鶴羽山から「あべのハルカス」は見えないものの、わずかながら、その周辺山域から見える可能性が残されています。
参考程度に。
なお、諭鶴羽山から「あべのハルカス」は計算上でも見通せず、実際に見えないことも現地で確認済です。
当方が「見えない」とする見解を述べた後であるにもかかわらず、実地検証もせず「見える」と断定的に報じた一部報道は誤りだと考えられます。
諭鶴羽山の北2.2kmに所在する約480m小ピーク
兵庫県南あわじ市
「あべのハルカス」までの距離 約77km
→ 別窓で大きな地図を表示
諭鶴羽山の北東2.5kmに所在する三角点585.7m峰(点名「中向背」)
兵庫県南あわじ市
「あべのハルカス」までの距離 約76km
→ 別窓で大きな地図を表示
沼島(紀伊水道)
おのころ山、石仙山(石仏山)
兵庫県南あわじ市
「あべのハルカス」までの距離 約84km(おのころ山)
→ 別窓で大きな地図を表示
「おのころ山」から見通せるかどうかは別として、島内の「見える範囲」は広く、紀伊水道に浮かぶ沼島から「あべのハルカス」が見える可能性もありそうです。
最後に
兵庫県下から「あべのハルカス」が見える地点のうち、現実的な範囲で申し上げれば、約80km~離れた沼島、南辺寺山、三国岳あたりが遠望の限界となりそうですが、計算上の最遠望地点である家島諸島から見える可能性もあります。
今後の視認例(確認例)、撮影例が楽しみです。
本記事の内容は2013年10月、ならびに2014年1月、同3月時点での見解であり、提供されるデータの更新により、今後、計算結果が変わる可能性があります。
最近のコメント